記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

2023-01-01から1年間の記事一覧

授業における知識の形成過程 その③

2023年もあと2日です.今年も多くの方にご覧いただき感謝申し上げます.現在,寸暇を惜しんで続きを書いておりますが,少々長くなっておりもう少し時間を頂きたいと思います.手前みそですが,たぶん教育学部では,あまり学ばないような話になると思います.…

授業における知識の形成過程 その②

前回の内容は,授業のはじまりにおける児童・生徒の脳内を探ってみました. さて,授業が始まると,ほどなくして指導される先生からの何らかの働きかけがあります. 様々な教科及び単元で,それらは工夫をされて提示されますので,ここではどのような教科に…

授業における知識の形成過程 その①

前回までは,学習において記憶想起することの大切さについて,私の実践を例に説明しました. 記憶再生マップは,そのような記憶想起の集大成として単元学習が終了した時点でエピソード記憶の想起を行い,それらのつながりを俯瞰し学習の意味づけを行い,表現…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その⑥

前回の内容を読んで,「なぜ1時間(45分)の終末に学習のまとめを用意していないのか」と疑問を持たれた方も相当数いらっしゃったと思います.しかし,45分で全員が理解すると考える方が奇妙な事のように思えてきます. 記憶の研究から言えば,記憶を確かなも…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その⑤

多くの方にご覧頂き感謝いたします.本ブログで発信している内容は,実際に私が行った授業をもとに構成しています.今回は前回の続きになります. なぜ,まとめを保留にするのかということですが,ちょうど1年前に次のような内容を投稿していました. www.k…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その➃

前回は,授業の初めに以前の授業の内容を記憶想起させると,児童はReady状態になるということを書きました.これは,強制的に記憶想起させていることになりますが,児童の記憶はあまり消失していないので無理なくできますし,何よりも学術的知見に基づいた学…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その③

やっと退院しました.10日間の入院でした.入院中の食事は,ほとんど全粥だったので若干のダイエットになりました.しかし,粥が嫌いになってしまいました. さて,ここでの問題は,直前の授業で何がなされたかをきちんと記憶想起させているかどうかです.な…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その②

記憶の再生について考えるブログ-別版-(10/23) 現在,入院中ですが経過も良く,もうじき退院できそうな状況です.私の病気は,胆嚢胆石症で,入院してすぐに胆嚢を摘出しました.現在は,Cチューブなるものがまだ刺さっていますので,造影剤検査の後に引き抜…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.

多くの方にこのブログをお読みいただき感謝申し上げます. 成績が伸びないのなら指導の仕方を変更をするべきである,という佐賀新聞への投稿を紹介したところです.そこでこれからは,なぜ学際的な視点で授業を分析していかなければならないのかという話題と…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その⑤ ~ 生成AIの正しい(?)使い方 ~

(New) 記憶の再生について考えるブログ-別版- 【前回】 生成AIの教育利用は,利用規約の順守や個人情報保護への配慮など課題がある.また,機械学習機能のブロックにより,AIが進化しにくいという問題もある.文科省は,これらの課題を踏まえて,パイロット…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その④

【前回】 生成AIの批判的思考力や創造性、学習意欲への影響に関する懸念は、AIに対する過大評価によるものである。生成AIは将棋などでは人間を上回る成績を出すが、他の面では人間を完全に代替することはできない。生成AIを神の声のように思い込むと、批判的…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その③

【前回の要約】 生成AIの登場は,情報通信機器の普及と学校教育の結びつきに対して,リスクが指摘されています.偽情報や個人情報流出などの懸念が,AIの機械学習に起因しています.ただし一部利用者は,このような報道に対して懐疑的な意見を持ち,AIについ…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その②

【前回の要約】 ガイドラインの4ページでは、有識者に対するヒアリングの過程が分かる。最初には生成AIの仕組みと情報活用能力の結び付けが議論され、これは過去のパソコン導入と類似。当時の流布した「何でもできる」という考え方とCAIの広まりが関連し、私…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その①

7月18日に文部科学省から,「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が出されました. 生成AIについては,特に今年度になって認知度が高くなり,教育への利用が議論されています.本ガイドラインは,ネット社会での利用拡大の…

授業のことをもっと思い出そう.(理解と脳の関係)

今回は,意味を持つ言語のイメージが脳内でどのように配置されているかを考えてみたいと思います.これは5月4日の記事で予告した内容です.まず話の前提として,この話のルーツは,2018年6月に公開された自分の博士論文「小学校理科教育における指導方略の研…

生成AI利用に関する文科省指針案に思う

梅雨ですが,私が住む地域では降水量がいつもより少ないようです.こんな時は,これまで梅雨の末期に大雨になることも多かったので不安になりますね. これまで,2回にわたって生成AIについて書きました. ちょうど今朝(6/23)の新聞に,「文科省から生成AI…

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)②

今回も生成AIの続きで,国語の授業を想定してみました. 超有名な教材です.4年「ごんぎつね」の授業中を想定してみましょう. 学習環境は,タブレットを児童が使うことを前提として考えます. 場面は,兵十のおっかあが死んで,その葬列が歩いてくる場面で…

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)

「生成AIは,児童の学習を評価できるか」ということで,ChatGPT , Bing , Bardの3つについて同様の課題を与えてみました.これらの箇条書きは,小学4年生が理科の最終単元「すがたを変える水」の学習直後に本当に書いたものの半分です. 半分にした理由は,…

児童が書いた文章をKH Coderに入力するときに注意すること

いつもお読みいただきありがとうございます. 前回までに,小学校の実際のデータをKH Coderに読み込ませ,共起ネットワークを作成しました. このとき使用したテキストデータは,4年生理科「すがたを変える水」での学習が終了した直後に書かせた箇条書き(a)…

実際のデータを使って,共起ネットワークを作成しましょう②

いつもお読み頂きありがとうございます. 今回は,R4年2月~3月にかけて武雄市の小学校で実施した4年生理科「すがたを変える水」の授業後に記憶想起のみで書かせた箇条書き(a)の数日後に記憶再生マップを描かせ,その約1週間後に,記憶再生マップを参照しな…

実際のデータを使って,共起ネットワークを作成しましょう.

今回からの内容は,記憶再生マップのような表現物は,その評価が非常に難しいので,その二次的著作物である箇条書きをテキストマイニングすることで記憶再生マップの評価とするというものです.(長文注意) 余談ですが,実践授業では単元の学習後に記憶再生マ…

記憶再生マップをどう料理するか

いつもお読みいただきありがとうございます. このブログは,記憶再生マップを描かせることの効果を,2021年8月に以前在籍していた学会の年会で発表した内容をもとに説明するために書いています. この数回は,児童の概念形成には時間が必要であることや情動…

ちょっとひと休み(実際の授業のデータです)

前回,自由の中にこそ,本音ありというまとめを行いました. 自由に書くことができるから,嬉しかったことを書いた子や分かったことを書いてみようと挑戦した子,一生懸命に頑張ったけど自分には難しかったと先生に伝えようとした子やどうしても書けなかった…