今回は,学習の【活動後期】について児童・生徒の脳内で,どのようなことが行われているかについて考えてみたいと思います.
まず,活動前期と後期では何が違うのでしょうか.
色々な教科の様々な単元で,先生方の計画もお一人お一人で異なり,児童・生徒の興味や関心事も違っているなかで,どの先生のどんな授業でも活動前期と後期で確実に違うこと,それは学習行動のエピソード量です.当然ながら活動後期は,多くのエピソードが記憶されています.
一般的な学習指導案の作成過程では,児童・生徒は提示された学習のめあての意味を理解するものと考えて作業を進めていきます.ここで言うところの学習のめあての意味を理解するとは,「先生が,この授業をしようと考えた理由は何で,どういったことを行い,何を為(な)すのか」が明確に分かっているということです.
例えば,小学校5年算数科「三角形の面積の求め方を考えよう」という学習のめあてを例に言えば,「何を為すのか」の部分が「三角形の面積を求める」に該当しますが,下線の部分は学習のめあてを読んだり,聞いたりしたときのルーティンとして,常日頃から指導しておかないと理解できません.つまり,学ぶ意味を考える癖をつけることが重要です.ここは,前回述べた学習のめあての意味の納得に,ぜひとも追加して欲しいところです.
それでは,その学ぶ意味は「教科書にあるから」という短絡的な理由でよいのでしょうか.おそらくは教科書も,そこまで考えて編纂してないと思いますので指導者自身も,指導計画を立てる時のルーティンとして,自己のスキーマを探り,児童・生徒が納得する学ぶ意味を考えることが重要です.
例えば,この三角形の面積指導の例では,面積の初めの指導で,面の広がりについて考えることの重要性を長さの概念との比較で話題にしておけばよいと思います.つまり1次元と2次元違いを実生活に転用してあげるということです.(生活の中では3次元という考え方もあるが,ここでは取り上げない)「我々は,直線の上で生活しているのではなく,面の上で生活している.面について考えると直線だけを考えていた時よりも,違う何かがありそうだ.(つまり領域や角度,方向性などの概念です)だから,長さの次は面についても考えよう」などと学習のストーリーを用意しておくということです.
するとこの授業の例では,「四角形の面積は計算で求めることができたけど,もし三角形の土地があったとしたら,どのようにして面積を求めるのだろうか」などの学ぶ意味を,児童それぞれが考えるようになってきます.このような理由付けは,児童それぞれが自由に考えればいいのです.
このように,学ぶ意味を考える癖を学習の初めのルーティンとして,早い段階から身につけさせておくと,学習のめあての意味を理解した児童・生徒は,1単位時間の授業の前期から後期にかけて自身がしたことや見たこと,聞いたことなどの過去のエピソードを,目的的に注意深く記憶想起することができます.
つまり学校教育においては,授業にストーリーがあり,その時々に学ぶ意味が存在することになります.従って,学習のめあての意味の理解とは,指導者が授業を仕組んだストーリーの文脈の理解,もしくは理解まで至らなくても文脈の推測に他ならないと言えます.
つまり,学校と受験対策用の学習塾では,学習の文脈が異なっているということになります.
今回は,ここで終わります.お読みいただきありがとうございました.
博士論文「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-」
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