記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その⑦

 今回は,【授業の終末】について考えてみたいと思います.

 前回お話した授業のストーリーですが,先生お一人お一人で異なる文脈であるはずです.めあては同じでも,展開は学級ごとに異なるのが普通ですからね.

 

授業の終末の脳内

 学習が大詰めを迎えると,授業もそろそろ終わりになります.このような時に,児童・生徒の脳では,どのようなことが行われているのでしょうか.

 まず,ここに至るまでに児童・生徒が何度もめあての意味を思い返し(リハーサルと言います)いることが重要です.具体的には,尋ねたときに即答できることです.例えば,算数科では,答えを出すのか,解き方を導き出すのか,または,解き方を考案して答えも出すのかなどの微妙な違いも理解できているかどうかです.理科では,何を目的として実験や観察をしているのかを,正確に答えられるかどうかなどです.

 そのような児童・生徒にするためには,めあての提示後から,事ある毎に「今日のめあては何だったかな」とか教師が自問自答するふりをしながら呟いたりするのも効果的です.また,ある児童・生徒を支援するふりをしながら,他の児童・生徒にも聞こえるように「〇〇さん,今日は・・・・が授業のポイントだったよね」などと発話して,めあての意味を常に意識させて学習行動を取らせるのもいいですね.

 

 そのようにして,学習のめあての意味を記憶として保持している児童・生徒は,その意味を手がかりとして,自身が記憶している学習行動のエピソードを想起し,何が学習の解であるかを考えることができる可能性があります.例えば「解き方を考える」であれば,記憶想起している学習行動のエピソードを,「どのようにすれば解けるか」という視点で見返すことができるようになります.

 ここはあくまでも可能性でありますが,実際は,このレベルにすら達しない児童・生徒もいることも事実です.ですから,少なくともめあての意味を学習の終末まで保持できるような指導や支援をしなければならないと考えます.その上で学習指導の工夫をして頂けたら,これまで以上に成果は期待できます.

 次に,図の説明をします.最初に「学習のまとめなどの終末の学習行動と,めあての意味が関連付けられ,児童・生徒が考える授業の意味に,内なる納得をした児童・生徒の脳には,めあて及び学習行動のエピソードとリンクした学習内容の解の意味記憶が形成される」について説明します.

 まず「終末の学習行動」とは,「学習によって分かってきたことを全員で共有する場面」または「多くの児童・生徒が,発話や発表などの表現活動を行い,今後,理解していきたい事柄などを明らかにする場面」などです.もちろん「児童・生徒自身も,めあてに対する回答を自分なりの表現方法で示す場面」でもあります.

 次の「めあての意味が関連付けられ」とは,この授業で最も大切なことは何であるかを,板書などで表された学習のまとめの中に見出すということです.

 その次の「児童・生徒が考える授業の意味に,内なる納得をする」とは,「この授業で最も大切なことはこれである」と自身が結論付けたことに納得するということです.納得とは,他者の言動を十分に理解することですが,内なる納得は,自身の結論に対して「それでよい」と思うことです.考え続けるためには,このことはとても重要になります.

 

 「めあて及び学習行動のエピソードとリンクした学習内容の解の意味記憶が形成される」の部分は,内なる納得をすることにより,学習のめあてと学習行動の時系列のエピソードをもとにした学習の文脈学習内容の解という3つの意味記憶がリンクされるということを表しています.

 次の「この意味記憶には,自身が言語で説明できるエピソード記憶にあるイメージや概念化したエピソードの因果関係等」とは,記憶再生マップを描いた児童が,練習することなしにすぐに言語を使って説明することができることと同様に,学習のめあてから始まり,何をどの様にしたら何が分かったか等の因果関係を含む学習行動の説明であることを表しています.すなわち授業の終末における児童の脳には,このような授業の説明ができる記憶のつながりが,形成されていなくてはならないということになります.それら3つの意味記憶は,授業について自由に書かせたときに,表現されなければなりません.

 例として,算数科の三角形の面積を求める公式があるかを調べる授業を考えてみましょう.児童のスキーマには,四角形の面積を求める公式は存在します.

 学習のめあてを「三角形の面積はどのようにして求められるか調べよう」とするのか,「三角形の面積を求める公式を導こう」とするかなどは,指導者の考えで異なります.

 学習行動としては,スキーマにある四角形の面積を求める公式を利用するのか,それとも別の活動を行うのかは学習者の考え方次第です.

 考え方の交流や説明活動など,様々な学習行動を経て,公式と考えられる計算方法が吟味され,三角形の公式が板書されて授業は終わりを迎えます.

 この段階で自由記述をさせると,「三角形の面積がどのようにして求められるか(学習のめあて)を,四角形の面積の公式を利用して調べました.2つの同じ三角形を使って四角形を作ることができたので,四角形の面積の公式を使い計算しました.でも,2つ分だったので最後は2で割ることになりました.言葉もたてや横は,高さや底辺に変えました.(学習の文脈)すると底辺×高さ÷2で全部の三角形の面積を求めることができることが分かりました.(学習内容の解)」などのような,解に至る学習の文脈を感じられる説明を記述する児童も出現するかも知れません.これらは,確かに学校教育の文脈です.

 一般的な授業の流れでの児童・生徒の脳内で行われていることについて書きましたが,これまではこのような議論すらなされていませんでした.児童・生徒の脳内でどのようなことが行われているかは分からなかったからです.これからは,学習者の脳内での情報の流れを意識して,指導されると指導が分かりやすくなるのではないでしょうか.

 次回は,授業の冒頭に前の授業のまとめを行う場合のメリットについて紹介します.今回も丁寧にお読みいただきありがとうございました.

授業における知識の形成過程 その⑥

 今回は,学習の【活動後期】について児童・生徒の脳内で,どのようなことが行われているかについて考えてみたいと思います.

 まず,活動前期と後期では何が違うのでしょうか.

 色々な教科の様々な単元で,先生方の計画もお一人お一人で異なり,児童・生徒の興味や関心事も違っているなかで,どの先生のどんな授業でも活動前期と後期で確実に違うこと,それは学習行動のエピソード量です.当然ながら活動後期は,多くのエピソードが記憶されています.

活動後期の脳内の様子

 一般的な学習指導案の作成過程では,児童・生徒は提示された学習のめあての意味を理解するものと考えて作業を進めていきます.ここで言うところの学習のめあての意味を理解するとは,「先生が,この授業をしようと考えた理由は何で,どういったことを行い,何を為()すのか」が明確に分かっているということです.

 例えば,小学校5年算数科「三角形の面積の求め方を考えよう」という学習のめあてを例に言えば,「何を為すのか」の部分が「三角形の面積を求める」に該当しますが,下線の部分は学習のめあてを読んだり,聞いたりしたときのルーティンとして,常日頃から指導しておかないと理解できません.つまり,学ぶ意味を考える癖をつけることが重要です.ここは,前回述べた学習のめあての意味の納得に,ぜひとも追加して欲しいところです.

 それでは,その学ぶ意味は「教科書にあるから」という短絡的な理由でよいのでしょうか.おそらくは教科書も,そこまで考えて編纂してないと思いますので指導者自身も,指導計画を立てる時のルーティンとして,自己のスキーマを探り,児童・生徒が納得する学ぶ意味を考えることが重要です.

 例えば,この三角形の面積指導の例では,面積の初めの指導で,面の広がりについて考えることの重要性を長さの概念との比較で話題にしておけばよいと思います.つまり1次元と2次元違いを実生活に転用してあげるということです.(生活の中では3次元という考え方もあるが,ここでは取り上げない)「我々は,直線の上で生活しているのではなく,面の上で生活している.面について考えると直線だけを考えていた時よりも,違う何かがありそうだ.(つまり領域や角度,方向性などの概念です)だから,長さの次は面についても考えよう」などと学習のストーリーを用意しておくということです.

 するとこの授業の例では,「四角形の面積は計算で求めることができたけど,もし三角形の土地があったとしたら,どのようにして面積を求めるのだろうか」などの学ぶ意味を,児童それぞれが考えるようになってきます.このような理由付けは,児童それぞれが自由に考えればいいのです.

 このように,学ぶ意味を考える癖を学習の初めのルーティンとして,早い段階から身につけさせておくと,学習のめあての意味を理解した児童・生徒は,1単位時間の授業の前期から後期にかけて自身がしたことや見たこと,聞いたことなどの過去のエピソードを,目的的に注意深く記憶想起することができます.

 つまり学校教育においては,授業にストーリーがあり,その時々に学ぶ意味が存在することになります.従って,学習のめあての意味の理解とは,指導者が授業を仕組んだストーリーの文脈の理解,もしくは理解まで至らなくても文脈の推測に他ならないと言えます.

 つまり,学校と受験対策用の学習塾では,学習の文脈が異なっているということになります.

 今回は,ここで終わります.お読みいただきありがとうございました.

 

 博士論文「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-

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授業における知識の形成過程 その⑤

 今回は,「一般的な授業における知識の形成過程」の話題に話を戻します.

 授業における知識の形成過程についての話ですが,これまで次の3つを紹介していました.学校は,学習内容に直結した意味のあるエピソード記憶を形成させるところですから,教師の発話や児童・生徒の学習行動には,とくに注目すべきです.

 これまでの説明で利用した図です.もう一度確認したいと思います.

【授業のはじまり】

 授業の始まりには,前時までの学習で作られた様々なスキーマがあります.学習は基本的には連続した文脈で構成されていますから,これらのスキーマ群の内,前回の授業で形成されたスキーマトップダウン的に起動するように授業の構成を考えれば,児童・生徒は学習のつながりを意識できると考えられます.授業の最初に,前回の復習を設定するのもよいアイディアだと思います.

【めあての提示と記憶の形成】 

 めあてが提示されると,めあての意味が形成されますが,再度「授業における知識の形成過程 その②」をご確認ください.特に,ここは提示するめあてに学習する意味や理由を持たせることが重要です.

スキーマの検索】

 この図では,学習者が意図的にスキーマの検索を行っていますが,概念化した前の学習の解は,無意図的(自動的)に記憶想起されます.しかし,教師のめあての提示如何によっては,無意図的に記憶想起はなされません.それは,教師の発話内容に,記憶想起にかかる手がかりがないからです.ですから,教師の発話はとても重要になります.

 

 今回は,学習の【活動初期】について考えてみたいと思います.

学習活動の初期の脳内の様子

 この図は,事柄の成り立ちを時系列で描いています.学習行動が進行すると,児童・生徒の脳にはそのエピソードが蓄積されてきます().今行われている学習行動は,すぐに過去になり,児童らは新たな学習行動を経験します.

 めあての意味記憶が形成されている児童らは,それが無意図的に記憶想起されますので,学習行動のエピソードと学習のめあてとの関連性について考えることができます()

 「授業における知識の形成過程 その④」での国語の例は,「〇〇する〇の気持ちを読み取ろう」でした.従って,学習行動が一人調べなどのようなものであったならば,既にスキーマを検索した段階でどうすればよいかは決定していますので,赤ペンや青ペンを使って本文を読み進めて,赤線や青線を引いていくはずです.

 今回は,前回の三角形の面積の学習を例に考えてみましょう.

 この場合,四角形の面積の学習は終わっていますから,その学習のスキーマは形成されているはずです.つまり,「1㎠の正方形の個数を数える⇒計算で求める⇒正方形,長方形以外の平行四辺形や菱形は,正方形や長方形に変形して考える⇒正方形や長方形の求め方を適用する」などの意味記憶が形成されていることが前提です.

 本時のめあての意味としては,「三角形の面積を求めること」と納得しますから,めあて提示後のスキーマの検索で,平行四辺形や菱形の面積を求めるときに経験した「正方形や長方形に変形」というエピソードが記憶想起されたり,概念化が進んだ児童では,もっと素早く変形に関する意味記憶が無意図的に記憶想起される場合も考えられます.すると活動の初期であっても,提示された三角形を見た段階で,三角形を変形して既習の四角形を作成する児童が出現することが考えられます.

 一方で,この段階において既に,何をどうすればよいか分からない児童も見受けられます.前の授業で学習内容のスキーマを形成できなかった児童や欠席の児童がこれにあたります.前者についてはスキーマ形成に関する文脈を短時間で説明できますが,後者については少し時間をかけて説明する必要があります.

 

 今回はこれで終わります.次回は,活動後期について考えてみたいと思います.

 

 余談ですが,先週上京し,放送大学の岩永雅也学長と2人で鯨料理を肴に教育について話し合った際,前回までのスキーマの説明資料等をお渡ししました.

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スキーマと学習の関係

 これまで,ルメールハートとノーマンの解説をもとに,スキーマの説明を行ってきました.このことを踏まえて児童・生徒が持つスキーマと学習の関係をどのように捉えたらよいのでしょうか.

 

 これは一言でいえば,「スキーマは,学習の知識構造」ということになります.すなわち,ピクニックスキーマの図のように,学習の中身を構成する知識が意味をもってリンクされるのです.

 このように考えると指導者は学習指導を通して,児童の脳に学習内容のスキーマを形成させることが求められ,ここに至って初めて,指導者である教師は,児童・生徒の脳内に目が向くことになるのです.

 これまでの学習指導では,文科省が提示した学習指導要領に書かれている目標に準拠した児童・生徒の学習行動として,「〇〇を理解する」や「〇〇ができるようになる」などのめあてを掲げ授業を行ってきました.そして学習の終末には,算数・数学なら問題の解法の説明,理科なら観察・実験から得られた現象の説明などを経て,感想を書いたり,練習問題を解いたりすることで学習が終了していました.ICTの利活用でも,その学習において表現の幅が広まったり,学習者が獲得する情報のバリエーションが増えたり,情報の共有が容易になったりと,これまでにない学習行動が盛んに行われています.そのように取り組むことが,児童・生徒の理解につながると信じているからです.

 しかしながら,それらは児童・生徒の脳に形成される学習内容のスキーマを意識したものではありません.確かに児童・生徒の脳には,ある知識構造が構築されますが,それがどのような姿かは,ほとんど議論されていないのが現状です.

 

 簡単な例で考えてみましょう.算数の三角形の面積を求める学習で児童は,最後には公式を知ることになります.この公式は,言わばスキーマと同じで底辺の長さと高さという2つのスロットを持っています.ですから,この公式を知識構造として記憶した児童は,あらゆる三角形の面積を知る(求める)ことができるようになりました.するとこのスキーマの構造は,次のようであると考えられます.

三角形の面積のスキーマ(例)

 これは,ルメールハートとノーマンの論文に出てくる図をもとにした三角形の面積を求めるためののスキーマ図です.

 必ずしも同じである必要はありませんが,児童の脳の知識構成は,これと類似したものでなければなりません.そうでないと誤概念ということになります.

 様々な値が入るスロットは「底辺の長さ」と「高さ」です.一方,「底辺の長さ」と「高さ」をつなぐスロットは,掛け算という決まり事でつながっていますから,固定値としての「×」が入ります.さらに「高さ」を固定値の「2」で割る必要があったことを記憶想起し,その間のスロットには「÷」を入力します.

 初期値の「4㎝」と「5㎝」は,先生がまとめに使った数値ですし,「7㎝」や高さの「4㎝」は,発展的な問題で用いた数値などでしょう.

 また,正方形や長方形の面積を求めるためのスキーマは,三角形の面積を求めるために利用することになりますから,リンクされており,必要に応じてそのスキーマが活性化するのです.

 

 つまりこの学習では,これらのスキーマを形成させることが目的となります.しかし,児童にルメールハートとノーマンが考えたこのような抽象的な図を学ばせる必要は全くありません.この図は,むしろ先生方が作成する指導案に載せるべきだと考えています.

 では児童の学習行動としては,どのようなことが考えられるかですが,私なら記憶再生マップを描かせ,そのサンプルをいくつか児童に提示させて話合わせます.

 次の記憶再生マップは,三角形の面積の例です.黒ペンで描いた部分が,教師の提示する初期提示です.

三角形の面積 記憶再生マップ

 スキーマは,学習にとって非常に重要な概念です.

 しかし,授業時間が45分と限られており,また40分へと授業時間の減少が計画されています.例えば,この授業でしたら,公式を導く過程を重視するのか,あるいは,ある程度は公式の導きに対するヒント的な情報をオープンにして,学習があまり得意でない児童も,何となく同じ形の三角形を合体させれば,求め方が分かるように仕組むのかで,後半の時間が決まります.

 どちらが今後の児童の知識構成に有効かを考えなければなりません.

 授業の最後をスルッと簡潔に終わるか,前半が簡潔だったので最後は悩ませるか.

 

 今回の文章を書いている段階で,佐賀大学の角和博名誉教授と議論していた時,教授が「そのスキーマに見られる知識構造は,エピソードも含めた学習のまとめとしての知識ですか,それともエピソードを含めない学習のまとめの知識ですか」と質問されました.私は,すかさず「この知識構造には,エピソードも含めたまとめの知識で構成されるべきです」と答えました.なぜなら,まとめの知識が概念化するときには,必ず学習のエピソードを記憶想起しなければならないからです.そのような思考を経た児童は,なぜそのようなまとめの知識が形成されたかを説明できるようになります.それができない児童は,暗記はしますが説明が苦手です.

 

 今回はここまでとします.いつもお読みいただきありがとうございます.

 次回からは,また「授業における知識の形成過程」に戻ります.

 

kiokusaisei.blogspot.com

スキーマとは⑤後編

これまでのスキーマの解説を時系列で配列し直しました

 

 今回は,スキーマの特徴⑤後半です.ルメールハートとノーマンの解説の後半のセンテンスについて説明します.

 このブログをご覧の皆様は,どのように解釈なさいましたか.

 

ボトムアップトップダウンのプロセスは繰り返され,新しい入力の最終的な解釈は,どのスキーマが入力された情報に最も適合するかによって決まる

 

 これは,この後に述べられているピクニック・スキーマの例を読まれると,ご理解いただけるかと思います.このセンテンスで理解が難しいのが,「ボトムアップトップダウンのプロセスは繰り返され」というくだりで,ボトムアップのプロセスと,トップダウンのプロセスとは何かを理解することが肝要です.

 ボトムアップのプロセスとは,感覚器官からの情報の入力に相当します.例えば,目からの映像の入力であったり,耳からの音声の入力であったりします.この入力に対して,トップダウンのプロセスとは,ボトムアップされた情報を解釈し回答を提示することです.そのときに,どのスキーマが使われたのかが重要となり,物事の理解につながるのです.

 感覚器官からの情報は脳に伝えられますが,どの感覚器からの情報でも性質(電気的な信号)に変わりはありません.それでも脳は,どの感覚器からの情報かを正しく判断します.つまり音であったり,映像であったりしても情報の信号としての性質は同じなのです.しかし脳は,その情報が如何なる経路を経てやってきたかにより,どのような情報かを判断し,その情報に合った回答を提示するのです.これがトップダウンのプロセスという事になります.

 

 ルメールハートとノーマンの解説は,この後,ピクニック・スキーマの例になります.

 

 「例えば,芝生の上に座っている人たちを見たら,まずピクニック・スキーマを起動させるかもしれない.しかし,ボトムアップの情報によって食べ物の代わりに横断幕が見つかったら,ピクニックの代わりに「デモ」のスキーマに移行するかも知れない.この場合,デモ・スキーマが最適であることが判明し,優位で,最も活性化されたスキーマとなる.」

 このような映像の情報が脳に入力されたら,ボトムアップのプロセスでその情報が脳に伝わり,既に意味記憶として保管している「ピクニック・スキーマ」が覚醒します.すると,「何を食べているのだろう」や「どんな遊びをしているのだろうか」などの疑問が浮かび,さらに注視することになります.

 

 ところが,近づいてみると・・・・

 多くの人々が旗を掲げて,集会をしていることを覚知します.すると,ピクニックであるという判断が否定され,「デモ・スキーマ」が覚醒し,これはデモであったという結論を導き出すことになります.

 

 このようなトップダウンのプロセスは,学習でも頻繁に起こっており,情報の判断の本質はこのようなトップダウンのプロセスの繰り返しと,最終的なスキーマの覚醒です

 

 そうすると,ここまでのスキーマの理解で重要なことは,教師は学習において何をしなければならないかという事です

 

 このことについては,次回に説明します.

 今回は,これで終了します.

 毎回,丁寧にお読みいただき,ありがとうございます.

 

 私の博士論文が,放送大学リポジトリの直近1年間(2023.2.25-2024.2.25)の統計で,「最も閲覧されたアイテム」項目で14週連続1になっています.

 さらに,「最もダウンロードされたアイテム」で5です.アメリカからのダウンロードは相変わらず急増しています.

 

 

 

スキーマとは⑤前編

 いつもお読みいただき,ありがとうございます.

 今回は,スキーマの特徴⑤の前編です.大変に分かりにくい内容ですので,前編と後編に分けて説明します.この特徴⑤は,スキーマの働きに関するものです.脳に入力された情報に対して,スキーマがどのように解釈を与えるかを説明しています.

 

 今回も,ルメールハートとノーマンの解説を用いて説明します.

 

 スキーマの特徴⑤

 「異なるレベルにある色々なスキーマが,新しい入力を認識し解釈することに,積極的に関わっている可能性がある.ボトムアップトップダウンのプロセスは繰り返され,新しい入力の最終的な解釈は,どのスキーマが入力された情報に最も適合するかによって決まる.例えば,芝生の上に座っている人たちを見たら,まずピクニック・スキーマを起動させるかもしれない.しかし,ボトムアップの情報によって食べ物の代わりに横断幕が見つかったら,ピクニックの代わりに「デモ」のスキーマに移行するかも知れない.この場合,デモ・スキーマが最適であることが判明し,優位で,最も活性化されたスキーマとなる.」

 

 いかがですか.赤文字で書かれたところが,スキーマ⑤の説明です.これを読まれて状況がイメージされたならば,スキーマに関する理解が相当進んでいる証拠だと思います.つまり,理解とは,学習内容やその過程を正しく記憶に残すことですので,ピクニック・スキーマを例に,何らかのイメージが脳内に出現されたものと思われます.

 

 今回も1つずつ考えてみましょう.最初のセンテンスです.

 「異なるレベルにある色々なスキーマが,新しい入力を認識し解釈することに,積極的に関わっている可能性がある

 この一文がスキーマの働きを説明しています.「異なるレベルにある色々なスキーマ」という部分で分かりにくい言語は,「異なるレベル」という言語です.原文は,「Various schemas at different levels」です.つまり,スキーマ自体にはレベルがあるという事です.では,どんなレベルでしょうか.

 これは,記憶想起のし易さとでも言ってよいかと思いますが,自身の周りの環境を感じたり見たりしているときに,記憶想起としてすぐに出現するスキーマと,そうでなく記憶の奥底にしまってあるスキーマなどをレベルという言語で説明しています.例えば,国語の授業の時には,児童の脳には,これまでの国語の学習で蓄えられた情報の数々を仕舞いこんだスキーマが,すぐにでも出現できるように顔を出しているイメージです.その時には,他の教科のスキーマは記憶の奥に仕舞いこまれています.

 次の図は私が描いたものですが,便宜的に教科のスキーマを作って描いていますが,本来はもっと細かな学習内容のスキーマである可能性を感じていますし,その区別はユニーク(個々人で異なる)であるべきです.

 「新しい入力を認識し解釈することに,積極的に関わっている可能性」について説明します.「新しい入力」とは,感覚器からの新たな情報の流入を意味します.つまり上の図では,授業が始まったことが分かる情報,例えばチャイムが鳴ったり,児童が時計を見たり,先生が教卓の前に立たれたりしたという情報が,脳に入力されたという事です.「認識し解釈する」とは,それら感覚器から入った情報に意味をもたらすことを意味します.上の図では,授業のスキーマが,席に着く,先生に注目する,静かに聞く姿勢を整えるなどの意味をもたらすことになります.

 「積極的に関わっている可能性」とは,無意図的にと言う意味です.つまり,スキーマが人間が意識することなしに関わってくるという事の意味です.

 先生が教室に入ってこられた時に,「姿勢を正さなければならない」と考えるのは,もうすでに授業のスキーマが活性化している証拠です.

 ルメールハートとノーマンのこの解釈は,タルビング(Tulving,1983)エピソード記憶意味記憶の区分と整合します.(このことを説明すると長くなるので,他の学者の考えとも合うと理解して下さい)つまり,スキーマ群の本質は,基本的には意味記憶という事になります.

 

 今回はここまでにしますが,後半の意味についてお考えになってください

 また,「なぜ人は車の運転ができるのか」や,「なぜ高齢者は,アクセルとブレーキを踏み間違えるのか」などについても,スキーマで説明ができそうです.

 

スキーマとは➃

 最初にお断りです.前回の最後に,今回はスキーマの特徴④と⑤を合わせて紹介するとしておりましたが,特徴④の内容が,簡単に説明することができないと判断したため,特徴⑤は次回とします.

 今回は,スキーマの特徴④を紹介します.

 

 スキーマの特徴④

 「スキーマには,個人的な経験から得た一般論と教えられた事実など,私たちが蓄積してきた全ての種類の知識を組み込んでいる.

 この特徴④については,これだけの記述しかありませんし,訳本も同じです.

 この表現は分かりにくい表現だと思うので,特徴④に関して,私が図を作成しました.ここで述べられているイメージは,次のようなものと考えられます.

 この説明によると,ルメールハートとノーマン(Rumalhart and Norman,1983)は,スキーマの源流が2つであると述べています.

 一つは「個人的な経験から得た一般論」という部分です.この一般論という言語は原著には,generalizations と書かれており,翻訳では一般化とも訳すことができます.または,概論,概括です.

 このようなことをもとに考えると,この部分は「個人的な経験を経て獲得する知識」と言うような意味合いに捉えられます.これをこれまでの議論に当てはめると,「エピソード記憶から得られた知識」となります.この知識は,ある程度抽象的で一般化されたものと考えられます.

 上の図で言えば,①節分を経験すると,そのやり方を知ることができます.②掃除機をかけると掃除の仕方が身に付きます.③買い物をすると支払い方が分かります.➃葬儀に参加すると,そのしきたりが理解できます.⑤風邪をひいて熱が出ると,体がどのようになるかを知ることができます.⑥点滴をすると,その後の体調の変化を体感することができます.⑦テレビで選挙の様子を見ると,政治に対する考えを持ちます.これらの知識が図の「A」です.

 つまり,これらは宣言的記憶であると同時に,手続き的記憶も含まれます.宣言的記憶とは,言語で説明される記憶の事です.また,手続き的記憶とは,掃除機を操作したり,買い物でお金を支払ったり,豆を鬼に向けて投げつけたりなど,自然と動作できる知識のことです.これらについては,ある程度は言語でも説明できますが,細かな説明になるとできません.つまり,経験によって体に染みついた行動の記憶という事ができます.

 もう一つの「教えられた事実」とは,「学校教育等により獲得した知識」の事です.これらはほぼ,教科書にも記述されている通りで,意味記憶になります.例えば,「円の面積の求め方」,「空気の性質」などのように,教科書にも記述されているように言語で示される知識です.これらの知識が図の「B」です.

 このように考えると,学校教育において児童・生徒が獲得する知識は,BのみならずAも含めた全てであると言えます.ただし,この図に描かれた全てのエピソード(左図と右図の両方とも)は,心情的に影響が大きかった特別なエピソードを除いて,ほとんどが消失してしまいます.例えば,掃除機を扱うときに,以前のエピソードはそんなに利用しませんよね.でも掃除機は操作できるはずです.買い物をするときに,いちいち,「お金はどのように利用すれば,品物がもらえるか」などと過去のエピソードに頼ることはしません.一方で,電子決算などの利用を始めたばかりの人は,まだ身に付いていない知識を確認するときには,「セブンでどうやったら上手くいったか」などのエピソードを想起することはあります.それらが身に付いたら,そのエピソードは消失していくものもあります.

 ところが学校教育では,そのようなエピソードを記憶させておきたいと考える場面はあります.例えば,算数・数学などで,公式を導かせた後に,どのような手続きで公式が出現したかという事はエピソード記憶を想起しなければなりません.本来ならばここのところが教育の重要な部分であると考えますが,公式などの結果のみを暗記させて,問題が解ければよいとする風潮がまかり通っています.そのような学習では,利用こそできても,理由は説明できない学習者が続出します.これでは,理論を他の現象等に応用することはできないのではないかと思います.ですから,少なくとも結果に至る文脈,あるいはストーリーだけは大切にしたいと思います.その時に利用したいのがチャンキングです.このことに関しては機会があれば,お話いたします.

 ここまでの話を総合すると,スキーマに含まれる知識は,宣言的知識だけのような印象を受けますが,行動の記憶も含まれると紹介したように,当然ながらイメージも含まれます.スポーツ能力などはその最たるものです.

 

質問に答えます(2/4)

 皆さん,こんにちは.

 前回はスキーマがスロットを持っていることについて紹介しました.今回は,ある先生から次のような質問を受けましたので,その質問に答えたいと思います.

 

 質問スキーマについては,徐々に分かりつつあるのですが,これらをどのように教育に生かしていけばよいのですか.」

 

 回答「確かにこれらの知識が,今なされている教育現場で直接利用される訳ではありません.スキーマは,児童・生徒ひとり一人が持っている知識構造の姿と考えて下さい.もちろん,それらは今後,脳科学分野等の進歩があっても直接見ることはできないでしょうが,記憶再生マップを描かせることで,ある程度推測はできます.

 

 例えば,このブログの過去の書き込みでも紹介した小学校5年生理科の「もののとけ方」という単元を例に考えてみます.次の記憶再生マップは,5年生のある児童が描いたものです.このマップを見ると,中心ノードが「もののとけ方」という単元名になっていますが,これが「ピクニック」と同列であると考えられます.つまり,この図はこの児童の「もののとけ方」という単元学習のスキーマを表している考えます.

 従って第1ノードの「とける」,「重さ」,「とりだし方」,「とける量」がスロットと同列になりますが,これは教師が指定し提示することになっていますから,スキーマのスロットを教師が決定することで教育的な指導になるのです.また児童は,スロットの内容を確認して,続けて特定のエピソード(任意値)を描いているのです.

 

 前回のピクニックもスロットは,ほとんどの人で共通の内容であると考えられることから,違和感なくルメールハートとノーマンの図に納得できます.

 

 このように考えると,ここで知ったスキーマの考え方を教育に生かすとは,教師の指導する内容を児童が学んだ時に,どのような知識構造のスキーマを構築できればよいかを考えることであると思います.」

 次回は,スキーマの特徴③と④です.

 今回もお読み頂きありがとうございました.

 

スキーマとは③

 皆さん,こんにちは.今回もスキーマの特徴について紹介します.

 その前に,前回の復習ですが,まずは,スキーマはあらゆる種類の知識を表現しているという事と,それらが様々な関係性でリンクしているという事です.

 

 今回も,ルメールハートとノーマンの解説を用いて説明します.

 

 スキーマの特徴③

 「スキーマはスロットを持ち,そのスロットは固定された強制値で埋められることもあれば,可変のオプション値で埋められることもある.例えば,ピクニックのスキーマは,場所,食べ物,人,アクティビティなどのスロットで構成される.場所のスロットは(定義上)固定値'outdoor'を取り,オプション値(森,川,ビーチなど)を追加することができる.食べ物,人などの値もオプションで,特定の機会に応じて入れることができる(図1.4参照).スロットはデフォルト値を持つこともできる.つまり,スキーマは,特定の情報が不足している場合に,スロットがどのような値を取る可能性があるかを教えてくれる.図のエピソードでは,食べ物が指定されていないので,スキーマは食べ物スロットのデフォルト値として「サンドイッチ」を提供しています.」

 

 このような説明に対して,ルメールハートとノーマン(Rumalhart and Norman,1983)は,次のような図を提示しました.(※原著は英語表現,「図1.4」は,原著の中の図の番号)

 いかがですか,なかなか分かりにくい説明ですね.少しずつ見ていきましょう.

 「スキーマはスロットを持ち,そのスロットは固定された強制値で埋められることもあれば,可変のオプション値で埋められることもある」の説明をします.

 

 まず,スロットという言語ですが,イメージ的には変数の入る箱のようなものです.または,コンピュータのスロットのように機能を導入するための受け口のようなイメージを持たれるとよいかと思います.つまりスロットに適切な言語が入力されないと,ある事柄(ここの例ではピクニック)の説明ができなくなったり,ある事柄を定義できなくなったりするようなものだという事です.

 

 つまりここで言っているのは,スキーマ(どのようなスキーマでも構いませんが)には,その概念を構成するための要素があるということを示しながら,そのスキーマには一般的な概念として固定された値を持つものがある一方で,オプション的な値も入力することができるということを示しています.

 

 たいていの人は,「ピクニック」という言語を聞いたり見たりした段階で,脳裏には高い確率で「屋外」のイメージが浮かぶはずです.それと自然豊かな山野の風景で歩いているイメージやお弁当のイメージも想起されます.ですから,図1.4では,場所(特に屋外をイメージする人が多い)や食べ物などのスロットが紐づいているような絵図になっています.さらに,そのスロットに入る値としての初期値があり,屋外の場所としては「野原」,食べ物としては「サンドイッチ」,行く人としては「家族」,「活動」としては(ボール遊びなどの)ゲームが示されています.

 

 このように考えると,スキーマのスロットは,そのスキーマの概念を構成する要素と考えられます.ちなみに,ピクニックを国語辞書で調べると「野山に出かけて遊んだり食事をすること」と定義されています.ですから,「場所」,「食べ物」,「活動」のスロットに入っている値を以て説明されています.別の言い方をすれば,ルメールハートとノーマンが挙げた例の中で「人々」のスロットは,ピクニックを説明する場合は,さして重要でないという事になります.ただ,実際にピクニックに行くとなった場合は,「人々」のスロットは重要な意味を持つようになります.更に初期値の項目は,多くの人の持つイメージであるという事です.ただし,このイメージはRumalhart Normanアメリカの人であるので,私たち日本人とちょっと違う初期値である可能性はあります.多分日本人でしたら,サンドイッチはお弁当に代わるかも知れませんし,ゲームも別のものに変わりそうです.このように,スキーマはスロットを持っていますが,その人の文化や経験と密接に絡んでいる可能性があります.

 

 この図の「特定のエピソード」についてですが,これはエピソード記憶が関係しています.例えば,あなたに対して誰かが「ピクニックに行きましょう」と話しかけた時,あなたがもし過去にジョンやスーと森を歩いたり,景気の綺麗な場所で昼寝をしたりしたことがあったとすれば,その記憶が想起されることを示しています.ですからこの任意値は,人によって異なってきます.

 

 次に,「スロットはデフォルト値を持つこともできる.つまり,スキーマは,特定の情報が不足している場合に,スロットがどのような値を取る可能性があるかを教えてくれる」について説明します.これは記憶想起についての話です.皆さんもピクニックをした経験があると思います.その時のことを思い出して下さい.

質問①「どこに行きましたか」

質問②「誰と行きましたか」

質問③「何をしましたか」

質問➃「昼食は何を食べましたか」

 如何ですか,①から③は,ある程度はっきりした記憶がありますが,④は不確かではなかったですか.ですから,「たぶんお弁当を食べたかも」と答えられたかも知れません.その「お弁当」が日本人にとっての初期値であるという事です.

 

 今回はスキーマの特徴③について紹介しました.

 次回は特徴④と⑤を合わせて紹介しようと考えています.

 

 このブログは,特に現場の先生方に読んで頂きたく構成していますが,教育学部の学生にとっても有益な内容になっています.

 これまでの内容の中で,特に「記憶再生マップの効果」を時系列で整理したページを作りました.

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スキーマとは②

 前回は,スキーマの概要とも言える話でした.私たちは,様々なスキーマを持ち生活していますが,これらは個々人で違います.しかし,学習で児童・生徒が獲得した知識が貯蔵されたスキーマは,同じクラスメートならば,ほぼ同じものであることが理想です.

 ですから,学習の終末に記憶再生マップを描くことによって,自身に足りなかった情報を補填したり,間違った情報は修正したりして,単元のめあてで示された正しい知識を,内なる納得を経て記憶しようとしているのです.このような記憶痕跡がその単元学習のスキーマとなり,必要に応じて記憶想起され利用することができるようになるのです.

 

 さて今回は,スキーマの特徴②です.今回もルメールハートとノーマン(Rumalhart and Norman,1983)の記述を引用します.

 

 スキーマの特徴②

幾つかのスキーマは,まとまって関連するシステムにリンクされます.

・全体的なスキーマは,サブスキーマの集合で構成される場合があります.

・ピクニックスキーマは,「食事」,「遠足」,「パーティ」を含む,より大きなスキーマのシステムの一部である可能性があります.

・1つのトピックに関する知識のパケットは,関連するトピックに関連する知識のパケットにリンクされています.

 

 これらは,スキーマのつながりに関する特徴とも言うべきものです.この特徴も書籍には図がありませんので,私が図にしました.

スキーマの特徴② (Picture drawn by the author)

 「幾つかのスキーマは,まとまって関連するシステムにリンクされますと,全体的なスキーマは,サブスキーマの集合で構成される場合がありますについては,意味ネットワークにおける上位概念と下位概念の関係と同じようなことを述べています.つまり,上の図で言えば,個々人が持っている「年中行事」という考え方に,お正月や大晦日,クリスマスなどの行事のスキーマが結びついているという意味です.つまり,「あなたにとって年中行事とは何ですか」と聞かれたときに答える,お正月やクリスマス,大晦日等の行事や,小学生を持つ親としては運動会や卒業式等スキーマが,年中行事のスキーマを構成しているという考えです.

 もっと具体的に説明しましょう.例えば,同様の考え方で,年中行事の下位概念としてのクリスマスのスキーマには,サンタのスキーマ,プレゼントのスキーマ,クリスマスツリーのスキーマ12月のカレンダー等々のサブスキーマが包含されています.人によっては,パーティのスキーマが含まれる場合もあります.もちろん,例えば,サンタのスキーマには,赤い服や白く大きな髭のスキーマ等々も含まれていると考えます.そして,これらはユニークであることは当然です.

 

 「ピクニックスキーマは,「食事」,「遠足」,「パーティ」を含む,より大きなスキーマのシステムの一部である可能性がありますとは,例えば大きなスキーマシステムとしてイベントスキーマがあったとして,「食事」(※この場合,会食的な意味?)や「遠足」,「パーティ」と同列で,「ピクニック」も含まれる可能性があるということを述べています.

(※スキーマ③では,ピクニックスキーマを取り上げて説明します.)

 

 「1つのトピックに関する知識のパケット(まとまり)は,それと関連するトピックに関連する知識のパケットにリンクされていますとは,例えば上の図で言えば,サンタ(=トピック)スキーマとリースやプレゼント(=トピック)スキーマがリンクしていることを言っています.サンタとリースやプレゼントは,共にクリスマスで見られるもので,それらは共に関連しているからです.

 

 このようにスキーマを考えてみると,記憶された知識は,それぞれの関係性によって,網の目のようにつながっているという事になります.

 

 このことからお分かり頂けると思いますが,このブログの重要なアイテムである記憶再生マップは,ある意味,授業によって獲得された知識のスキーマのリンク構造を児童・生徒自身が確認しながら表現していることと同じだと言えます