記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その⑭

 7月に入り10日が過ぎました.梅雨も終盤になりつつあります.大雨にならないように願っています.

 さて今回は,記憶再生マップで児童がふりこの説明を描いた部分について,どのようにしてこの部分が描かれたかを考えてみましょう.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(記憶再生マップを描く場合)

 まず,教師が提示した記憶再生マップの初期提示ですが,「ふりこの動き」という単元名のノードに「部分の名前」という第1ノードの言語がリンクしています.通常ならば「ふりことは」などの言語が書かれることが多いと思われますが,敢えてふりこのそれぞれの部分等につけられた名前とふりこの図を記述させたいという意図が読み取れる初期提示となっています.

 記憶再生マップのような学習をまとめるツールでは,何を描かせるかが問われます.今回のふりこの学習では,ふりこの正しい概念形成が重要で,例えば「ふりこの長さ」とは,どこからどこまでなのかや,振れ幅や1往復の定義は実際に学習者が図に表して説明することが重要と考えます.一部の理科学習ノートなどに描かれているような,図の空欄にそれぞれの部分の名前を記入するという発想では,ふりこ全体としての正しい概念形成ができません.今回のように,指導者が実際に児童が描いた図を評価できるようにしなければ,最終的な概念形成が完成しないと考えます.

 そういう意味では,この児童は,ふりこの長さは支点からおもりの中心まで示しているので正しい概念を形成したと評価しました.また,その他の概念も正しく記憶されているようですし,「おもり」というノードにリンクした「鉄,プラスチック」というノードは,実験で使用したおもりの材質を正しく記述していますので,非常に正確に学習内容を記憶しているということになり,正しい理解ができたと結論付けられます.つまり,記憶再生マップは,指導者が意図的に学習者のまとめを設計し,非常に正確に学習者の評価を行うことができるツールであるということも言えます

 また,この児童のように,記憶再生マップの初期提示の意図を読み取る能力は,どのように作られるかということについて少し述べたいと思います.まず,中心ノードの「ふりこの動き」は,当然ながら単元名であるという決まり事を定着させておくということです.その上で,第1ノードの言語と中心ノードの言語との関連性で,学習中に仕掛けをしておかなければ上手くいきません.今回の場合は,「名前」という言葉でした.この「名前」は,授業中も頻繁に教師の発話によって,児童が聞いた言語でした.例えば単元の導入時に,上の板書の図を描いて,「ここの名前(と言いながら,図に線を引く),支点からおもりの中心までの長さをふりこの長さと言います」と発話していたのです.他の部分についても,「ここの名前」と発話しながら振れ幅にあたる部分を指を何度も往復させて,その角度に注目させていました.

 このような学習の仕掛けは,一種のライミング効果と考えても差し支えないと考えます.ですから,この場合は「名前」という言語の発話を,授業の中でどのようなイントネーションで情意面に訴えるように教師が発声するかは,教師の技量によるところが大きいと言えます.

 このことから,この児童が記憶再生マップの初期提示を見た時に,どのような思考をしたかを考えてみると,次のようなことが分かってきます.

 この児童の心の声『部分の名前か・・・・,名前?,ああ・・・,ふりこ関係の名前ね・・・・,えーっと,長さとふれはばと1往復とおもりか・・・・・分かったわ・・・』と言うような,つぶやき(自己中心的言語)が聞こえそうです.

 次回は,残りの初期提示について考えてみたいと思います.

 今回も丁寧にお読み頂きありがとうございました.

授業における知識の形成過程 その⑬

 このところ毎日のように雨が降り,本格的な梅雨という感じですが,適度に降って水不足が解消されればいいですね.

 

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 このブログは主に,この博士論文で説明している「記憶再生マップ」を用いた学習効果をもとに,記事を構成・執筆しています.そして,今回の投稿で102回目となりました.このように長く続けられたのも,偏に丁寧にお読みいただいている皆様のお陰です.

 さて,今回も児童が描いた記憶再生マップを見て,その時の児童の脳内でどのようなことが起こっていたかを考えてみたいと思います.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(記憶再生マップを描く場合)

 今回考える記憶再生マップの箇所は,ふりこの1往復の時間を計算するという学習目標に対応した部分です.この目標は,算数科の「平均」の学習との関連でもあります.

 ところで,記憶再生マップの初期提示ですが,基本的には中心ノードの言語と第1ノードの言語の組み合わせで構成されます.ですから,本来ならば「ふりこの動き-1往復の時間」だけでも良かったのですが,これら2つの言語の連関では,「計算方法」が児童の脳から出力されないと考えました.例えば,「おもりの重さを変えても,1往復する時間は変わらない」など,変える条件に関する記述が多く書かれると考えたのです.そこで,通常は第1ノードまでの初期提示に「計算方法」という第2ノードを追加し,書き広げる内容を指示していたのです.このようにすることによって,この部分は,ふりこの1往復する時間を実験ではどのようにして求めたかを,記憶想起する必要があることが児童に伝わることになったのです.

 元々,記憶再生マップは,中心ノードと第1ノードの言語の組み合わせから,学習内容に関する意味を類推すると同時に,スキーマを検索し該当した概念を書き(描き)綴っていくものです.

 ですから教師としては,第1ノードの言語次第ではクイズのような感覚で児童・生徒の学習行動を構成することもできますし,今回の例のように明確な目標を与え,児童・生徒の学習行動をコントロールすることもできます.

 それでは,上の図についてもう少し詳しく説明します.

 最初に初期提示を見た児童は,そのエピソードが記憶されます(緑色のA).次に3つのノードの言語から,意味を類推するとそれらが記憶されます(黄色のA)

 この児童は,ふりこの1往復する時間を計算する方法を記憶想起しなければならないと理解したので,この単元での実験を記憶想起したことは間違いありません(緑色のエピソード記憶).なお,前回の記述を若干訂正させていただくと,この児童の記憶しているエピソードは,かなり明瞭に記憶想起していますので,緑色の濃さをもう少し濃くしなければならなかったと反省しています.そこで,上の図で「この単元の一般的な実験方法」は濃い緑色としました.なお,この場合は実験のイメージが想起されていますが,一般的にはエピソード記憶を想起しているときは,そのイメージが不確かな場合も当然ながらあります.この児童の場合,最初に「10往復の時間を…」,次に「3回の結果をたして…」,最後に「1往復の平均を…」と正確に記述しています.つまり,この部分が正確に概念化されていたことが分かります.それは黄色で示した意味記憶を想起したか,もしくは,エピソード記憶に保管されていた正しい実験のイメージを再生したからではないかと考えられます.

 ここの記述を見ると,絵図ではなく言語で正しく記述されていることが分かります.私がこれまで指導した多くの事例で経験的に分かったことは,この児童のように正しい概念が形成された児童の方が,最初から言語を利用して表現することが非常に多かったということです.

 また,この児童は,「10往復の時間を…」と書いたノードの上に付け足して,ふりこの絵を描き1往復の説明をしています.この図は,これまでも何度もお伝えしたと思いますが,教師に対して描いた図ではないということです.10往復云々と書いたことで,自身の概念を確認する意味で,自分自身に向けて描いた絵だと言えます.

 それと,この児童はおそらく記憶再生マップの最後に,第1ノードにリンクを張って,ふりこの1往復する時間が変わる条件が長さであることを書き足しています.それは,別のノードから矢印で関連付けられています.前々回のブログでご確認ください.このことも,自身に対する正しい概念の確認であろうと考えられます.

 このように記憶再生マップを読み解くと,その児童・生徒の思考過程が見えてきますし,そのことによって,児童・生徒の持つそれぞれの知識がつながりを為して更なる知識が形成されていくことを知ることができます.

 今回は,ここまでです.丁寧にお読み頂きありがとうございました.

授業における知識の形成過程 その⑫

 6月も中旬.なかなか梅雨に入りません.農家の方々は,ご心配でしょう.九州北部は,明日(6/16),明後日頃に梅雨入りとの報道もあります.一方,春の運動会・体育大会を終えられた学校は,やっと落ち着いて学習できる時期ですね.

 

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このブログの理論的背景である「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-」は,この半年間ずっと「最も閲覧されたアイテム」第1位となっています.このなかで博士論文は17,「最もダウンロードされたアイテム」では,3,6,7,84編が博士論文です.

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 このブログでは,エビデンスをはっきりさせて書いています.

 私の周りの一部教育行政では,エビデンスのはっきりしないものも散見されますが,現場の先生方は,どの研究論文を根拠に指導されているかを確認する時間的余裕がありません.指導される方々は,どのような理論的な背景のもとで指導しているかをはっきりさせるべきと思いますが,いかがですか.エビデンスは,地位や評判では担保できません.昔はこれが結構多かったです.一例ですが,県の校長会で県の教育長がメラビアンの法則について論説し,校長は教育長の指導であることから,学校で職員に伝達したというのは有名な話です.この法則は誤りとメラビアン自身が語っていますが,当然ながら教育長や校長のせいではなく,情報を受け取りメディアに掲載した側の理解と伝え方に問題がありました.(メディアと情報の真偽に関しては,いつか話題にしたいです)

 

 さて前置きはこれくらいにして,今回は記憶再生マップを描く時の児童の脳内について紹介します.抽象的な説明よりも,具体的な事例で紹介させて頂いた方が,先生方に伝わると思いますので,前回使用した記憶再生マップを使ってみます.

 まず前回紹介した記憶再生マップですが,とても上手くまとめていましたね.この児童は,完璧に学習内容を理解していました.また,説明も上手でした.ただ,「この児童が頭が良いので描けた」という程度の評価では不十分です.

 これから数回は,この一見複雑に見える記憶再生マップを部分ごとに分析するために,児童が記述した内容を取り上げながら,なぜこのような記述ができたのかを見ていきましょう.ただ,全てを取り上げるにはスペースがありませんので,今回は下図に掲載している記憶再生マップの一部を取り上げ,残りは次回以降に分析したいと思います.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(記憶再生マップを描く場合)

 前回のブログでは,記憶再生マップの初期提示を見た児童が,脳内でどのような記憶想起を行ったかを,第1ノード「変えることのできる条件」と中心ノード「ふりこの動き」のリンクから,脳内には,第1ノード言語確認のエピソード記憶が形成され,その後,スキーマを検索する様子をイラストにしていました.この検索の成否と,記憶再生マップ作成の可否がリンクしています.当然ながら,検索に成功するということは,ほぼ記憶は残っていますので,記憶再生マップが描けます.

 初期提示のノードに書かれた言語を理解すると,意味記憶が形成されます(Aが描かれた意味記憶).これは,教師の初期提示の意味を獲得したことになる訳です.

 つまり,上の図では,「A」が記してある意味記憶(黄色)から,3つの実験の意味記憶の検索を緑の矢印で表現しています.それは,初期提示のA「ふりこの動き-変えることのできる条件」という言語のつながりから,「ふりこの動きの学習を思い出し,その中で変えることのできる条件とは何であったか」という少し深い思考を行ったことを区別するためです.つまり最初の検索は,俯瞰的に検索していると考えられます.ですから,プリントを配布してしばらくは,ほとんどの児童が何も描けないのです.一定程度時間が経過すると,一気に描き始めていきます.

 また,この初期提示には3本のリンクが描かれていました(前回の説明)ので,条件は3つであるという思考が成立していたと考えられます.このように3つのそれぞれの第2ノードに,答えの言語(ふりこの長さ,おもりの重さ,振れ幅)を的確に記入したということは,確実に3つの意味記憶が形成されている証拠になります.もしかすると,3つの実験の意味記憶が一つにまとめられているかも知れませんが,それは判別できません.

 次に,第3ノードや4ノードを見ると,絵図が描かれています.これは意味記憶というよりも,それぞれの実験のエピソード記憶を検索した結果と考えられます.これは赤矢印で示していますので,ご確認下さい.それでは,この絵図は誰の為に描いたのでしょうか.先生に見せるために描いたとお考えになるのなら,それは間違いです.このときの児童の思考では,内言,その中でも自己中心的言語が使われていたと考えるのが自然です.つまり,この絵図は自分が理解している内容を客観的に確認するために,自身に向けて記述した部分なのです.ふりこの長さと記した次のノードに,長さの違う2本の紐と,その間に左右矢印が描かれています.つまり,ふりこの長さが短い場合と長い場合の実験をしたことを確認しているのです.同様に,おもりの重さの実験では,鉛筆で塗った鉄の玉と赤ペンで塗ったプラスチックの玉を使いました.もちろん,実験で使用したプラスチックの玉の色は赤色でした.さらに,振れ幅の実験では,実験装置に張り付けられている紙の分度器を使った実験の様子を丁寧に描いています.さらに,この部分は第4ノードまで使って10°と20°の実験を行ったかのように書いていますが,この時はまだ完全に記憶想起が進んでいなかったようです.なぜなら,このクラスの実験は20°と45°で行ったからです.その訂正は,別のところで行われています.(前回を参照)

 このように記憶再生マップを丁寧に読んでいくと,児童がどのような記憶を使い,マップを記述したかを読み取ることができます.

 ただ,先生方は大変お忙しいですので,このような読み取りは毎回する必要はありません.それよりも,記憶再生マップが描けるかどうかだけを,気にして頂ければよいと思っています.

 

 次回は,同様な手法で別の部分を読み取っていきたいと思います.

 記憶再生マップは,時間も手間もかかりませんので利用してみて下さい.間違いなく,児童には好評だと思います.

授業における知識の形成過程 その⑪

 6月になりました.

 さて今回は,前回の続きです.前回のブログをお読みになっておられない方は,ご確認をお願いいたします.

 単元学習の終了時に,先生が記憶再生マップを描く紙を配られ,児童・生徒が記憶再生マップの初期提示を見た時から,それ以降の長くても数分間に起こる脳内の変化を考えてみます.

 まず,提示される記憶再生マップの初期提示について説明します.

 下の記憶再生マップは,小学5年生が描いたものです.鉛筆や赤ペンで描かれた部分が,小学生の記述です.黒ペンで書いた文字は,教師が書いたものです.

記憶再生マップの実際(小学5年生の例)

 皆さんがよく利用されているマッピングとは違うことが,お分かりいただけますか.例えば総合的な学習の時間などに,地域の特産品をマッピングによって書かせたりする場合がありますが,それは中心のノードに書かれた言語から,ある事柄を連想して書き広げていくいわゆる発想型のマッピングです.ところが記憶再生マップは,直近に行った学習を想起し,意味的に繋いでいく記憶想起法です.

 そして,この記憶再生マップの黒ペンで書かれた言語を囲む丸形は,ノードと呼ばれています.さらに,ノードとノードを繋いでいる線は,リンクと呼ばれています.従って,このような構造をノード・リンク構造と呼びます.この図でにおいて赤鉛筆で囲まれたノードとその内容である言語は,児童に配布する紙に印刷した部分で初期提示と呼ぶことにしています.

記憶再生マップの初期提示モデル

 この部分をモデル化するとこのような図になります.タイトルが書かれたノードを中心ノード,言語AからDなどが書かれたノードを第1ノードと呼びます.上に提示した実際のマップでは,「ふりこの動き」が書かれたものが中心ノード,「部分の名前」「変えることのできる条件」「1往復の時間」「1往復の時間を調べる3つの実験」が書かれたノードが第1ノード,「計算方法」は第2ノードに書かれています.

 では,なぜこのような初期提示になっているのかですが,理由があります.

 それは,学習者に手がかり再生を行わせようとしているからと言えます.手がかり再生とは,記憶想起をする場合に,ある言語を提示して,それをもとにスキーマにあるイメージや意味を的確に記憶想起させる手法と言えます.例えば,実際の記憶再生マップで説明すると,「ふりこの動き」と「部分の名前」という言語がリンクしています.「ふりこの動き」だけでは,単元名であることは児童は理解すると思いますが,だからと言って,何を記憶想起すればよいか分かりませんし,「部分の名前」だけでも,何の事か不明です.しかしながら,この2つの言語がリンクしていると,ふりこの動きの学習において学んだ内容で,部分と呼べるものは何であったかという記憶想起に係る見通しが立ちます.その上で,「ふりこの部分の名前であろう」という推測が行われ,この児童が描いたように,ふりこの絵を記述して,それぞれの大切な名前を記憶想起することができるのです.同じような考えで,ふりこの動きの学習(実験)において,変えることのできる条件は何であったかという視点で,記憶想起することができるようになります.

 それぞれの教科によっては,直近の過去の学習を記憶想起させる言語を第1ノードとして,初期提示を構成していきます.ここのところが,教師の考えどころとなります.

 まとめると,「タイトル」と「言語A(B,C,D)」のリンクによってどのようにも記憶想起させることが可能になります.ただし,タイトルは単元名にしておりまして,後ほど(長ければ数か月),学習者に再確認させる場合に,このタイトルが「手がかり再生によって記憶想起を起こさせるカギ」となります.

 このように記憶再生マップにおいて,その初期提示は非常に重要な内容であり,この言語如何によっては学習者がうまく描けない場合も出てきます.

 

 それでは本題に入り,記憶再生マップの初期提示がなされた直後の学習者の脳内で起こる変化について考えてみます.

 今回は,「単元学習の終了時に記憶再生マップを描く場合 例として小単元が3つ,最終小単元終了直後に描く場合」で,記憶再生マップの初期提示がなされた直後という想定です.

 ここに示した図は一つの考えですが,おおよそこのようになっていなければなりません.

 なお,前回の内容も再度提示しますので,ご確認ください.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(記憶再生マップの初期提示後)

 これは,記憶再生マップの初期提示後にピンときた児童の例で,中心ノードと第1ノード(2ノード)に書かれた言語によって,教師が示した意味を理解しようとする姿と考えられます.

 このような学習を繰り返し行うことで,言語の連関に敏感になってきます.

 ふりこの動きの実際の記憶再生マップの例で言うならば,この児童は,中心ノードと第1ノードの言語を確認することで,「変えることのできる条件」というノードから出ている3つのリンク(この学習では,ここまで教師が指示している,下図参照)が何かを考えたと推測されます.

第1ノードから3つのリンクを延ばして提示した例

 まとめると,記憶再生マップの初期提示後は,過去のエピソード記憶を想起することによって,なんとかして中心ノードの言語と第1ノードの言語のつながりに意味を見出すことを始めていることになります.そして我々は,このような言語どうしの関係性に目を向けられる児童・生徒を育てたいものだと思います.

 少し長くなりましたが,今回はここまでにしたいと思います.丁寧にお読みいただき感謝申し上げます.

 

 さて次回は,記憶再生マップを描いているときの脳内について考察したいと思います.

 

授業における知識の形成過程 その⑩

◎記憶再生マップを使ってみませんか? - 記憶の再生について考えるブログ

(校内研究や個人研究でのサポート,共同研究等,ご相談ください)

 5月も最終週になりました.いつも丁寧にお読みいただきありがとうございます.

 この「記憶の再生について考えるブログ」を書くにあたっての根拠となっている拙者の博論も,今週で6か月連続のアクセス数1位となりました.さらに,ダウンロード数も3位となり,順調に行けば1位になるかも知れません.

 記憶再生マップは,基本的には紙と鉛筆を使うので超アナログですが,それを描いた児童・生徒がどのように理解しているかが描いている途中でも確認でき,また,その様子が事細かにマッピングとなって表現されますので,指導の効果や学習者の理解の程度を直感的に把握でき便利です.

 一方で,全員が一斉に作業するので一人一人の記憶再生マップの確認が大変そうに見えますが(以前はそうでした),今はタブレットがありますので,児童・生徒が自身の記憶再生マップを撮影して教師に送信してくれれば,簡単に確認することも可能となります.

 また,ことさらにタブレットで描かせようとお考えになると,アプリやスタイラスペン等の問題も生じて面倒になる場合も考えられます.そのような時は,むしろ原点に戻り,紙と鉛筆を利用された方が,児童・生徒の表現力を余すことなく発揮できて絶対に分かりやすいと思います.情報通信社会だからと言って,無理してタブレットで不十分な表現をさせるよりも,紙に描かせる方が誰でも思う存分短時間で表現でき,また準備も不要ですから,働き方改革にも優しいのでないでしょうか.

 

 さて今回は,「単元学習の終了時に記憶再生マップを描く場合 例として小単元が3つ,最終小単元終了直後に描く場合」について考えてみましょう.

 ここに示した図は一つの考えですが,2時間連続の授業の前半に学習が終了し,後半に「記憶再生マップ」を描くという計画を意識して描きました.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(描く前の脳内の様子)

 前半の授業で,全ての児童・生徒が,小単元③の学習の意味記憶を形成したとは考えにくいですね.つまり,まだモヤモヤしている人もいるのではないでしょうか.その場合は,図の「小単元③の意味記憶」は無い訳です.

 一方で,学習してから数日が経過しているので睡眠を経験しています.ですから,概念の形成が行われたことは十分に考えられます.しかし,その概念が正しいかは児童・生徒自身も分かっていないのではないでしょうか.なぜなら,この瞬間に,その概念を客観的に見ることはできないからです.ですから,記憶再生マップで描く作業を通して可視化するのです.そうすることにより,内なる納得が得られれば,自身としては正しいと認識できますし,他の概念との関係性を確認することによって,間違いにも気づくことができます.

 そしてエピソード記憶ですが,数日前の記憶ですので,情意面での経験が重要です.モチベーションを以て活動できた記憶は保持されていますが,そうでない記憶は消失しています.これらは,記憶再生マップを描くときに,手がかり再生によってより詳しく想起すれば,意味記憶エビデンスになりうると考えられます.

 このように,単元のまとめを行う場合は,児童・生徒の脳内にどのような記憶が残っているかは,指導者としてある程度は把握しておくべきと言えます.

 

 今回は,ここまでとします.次回は,記憶再生マップの初期提示後の話をします.

授業における知識の形成過程 ひと休み(続)

www.kiokusaisei.com

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 このブログも最近は,多くの皆様にお読み頂くようになりました.いつもお読みいただき感謝申し上げます.

 

 拙者の博論「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-」も,放送大学リポジトリの「最も閲覧されたアイテム」において,昨年の11月末からおよそ6か月連続で第1位を維持しています.

 また,「最もダウンロードされたアイテム」では,第3位に上昇しました.特にアメリカの研究者からのアクセスとダウンロードが,日本語で書かれているにも関わらず,ずっと続いている状態です.

 この論文は,「小学校理科教育」とタイトルがつけられていますが,お読みになった方はお分かりいただけると思いますが,教科限定の指導方略ではありません.全ての教科に応用できるものです.特に,フィンランドメソッドとの親和性が指摘されており,学習者が経験した知識を使い,概念の形成を行うことを得意とする指導法であると自負しております.従って,この学習法を実践される方は,この博論がエビデンスとなります.

 しかしながら,私も長く教壇に立っておりましたが,多くの根拠無き指導法を目にしてきました.そのたびに,湧いては消える泡のようにその指導法と呼ばれるものは,これといった効果を実感できないままに,学校現場から消えていきました.

 例えば,大学生を被験者とした教育実践は,小学生や中学生の指導に利用できるかは慎重であるべきです.さらに,タブレット(PC)を使った教育は,新しい教育の可能性を開きつつありますが,人間の何らかの能力を委縮させていないかなどの議論は必要です.四六時中,児童・生徒の傍にタブレットがあることは,今のところ考えられません.また,タブレットで学習していますが,卒業すればスマホです.使えば伸びる能力があれば,衰退する能力もあります.そのことを一度,学校でも議論された方が宜しいかも知れません.国の経済的施策に翻弄されるのではなく,学校現場の教師がもっと声を上げて教育について語るべきではないかと考えています.とは言っても,情報機器を使うことを否定しているのではありません.

 

 さて,まだ記憶再生マップに関する大学の授業が終わっていませんので,前回に続いて同様の投稿をさせて頂きます.

 

 学習が終了した時点での,学習者の脳にはどの様な記憶があると考えられますか.(前回)

 教師が,記憶再生マップの初期提示をした時の,学習者の脳にはどの様な変化が現れると考えられますか.(今回)

 

 記憶再生マップについて

 次の記事をお読みいただくと,何となく「初期提示」についてお分かりいただけます.

www.kiokusaisei.com

 

 中心ノードの言語と第1ノード14の言語が,教師の提示する言語となります.

 前回と比較して,学習者の表情が変わっていると思います.脳には何らかの変化があります.

 

 今回は,ここまでにします.

 ここまでお読み頂きありがとうございました.

授業における知識の形成過程 ひと休み

〇博士にまつわる話題  ←日本は低学歴国なのか?

〇記憶再生マップを使ってみませんか? - 記憶の再生について考えるブログ (kiokusaisei.com) ←ご希望なら認知科学の話も.

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 いつもお読みいただきありがとうございます.

 今回は,講義の進み具合の関係で詳しく書けませんので,先生ご自身でお考えになって下さい.

 27日以降に,私の考えを紹介します.

 

 今回考える状況は,ある教科のある単元の話です.

 例では,この単元が3つの小単元で構成されており,最終の小単元が終了した直後に記憶再生マップを描く前の児童・生徒の脳内についてです.「最終の小単元が終了した直後に,記憶再生マップを描く時間など無い」などとお考えにならずに,気軽に考察してみて頂ければと思います.

 考える素材としては,エピソード記憶(緑色)意味記憶(黄色)スキーマ(白色)3つで,大きさや色を変えることで,何かを表現して頂ければと思います.気楽にやって下さい.

 

 

授業における知識の形成過程 その⑨

博士にまつわる話題

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記憶再生マップを使ってみませんか? - 記憶の再生について考えるブログ (kiokusaisei.com)

 

 いつもお読みいただきありがとうございます.

 ブログの冒頭に,「博士にまつわる話題」というリンクを張っておりますが,目を通して頂けましたでしょうか.現場の先生方が,もっと学位取得に興味を示されるといいなと思います.

 さて前回の最後に,今回は記憶再生マップを描く時の脳内についてと予告していましたが,現在行っている大学の講義がまだそこまで進んでいませんので,今回のテーマを変更させていただきたいと思います.申し訳ありません.

 今回は,学習の最後に感想を書かせる場合についてです.この感想は,児童・生徒自身が学習を振り返って「まとめる」という意味の感想での自由記述になります.従いまして,教師側からの指示は特にありません.また,この感想は前回も書きましたが「学習の初めに前時のまとめを行う場合」に利用します.

 例えば,児童の感想は次のようなものになっています.

感想A

感想B

 

 これらのデータは,私が2023年に実際に授業を行い児童に書いてもらったものです.この後,読み進められる場合は,次のリンクからこのデータ群についてご確認されることをお勧めします.対象は佐賀県の小学4年生です.

 

www.kiokusaisei.com

学習の最後に感想を書かせる場合の記憶等の仕組み

 学習内容を正しく記憶するためには,学習行動のエピソードを正確に記憶想起することが最も重要です.学習行動の正確な記憶想起によって,気づきが生まれます.感想Aは,その代表的な例で,4年生が自分の予想と違う結果に驚いています.つまり情意面で,とても良い体験をしたと考えられます.心が動く体験は,強い記憶となります.

 

 このような授業の終末の感想書きでは,教師はつい「分かったことを書きなさい」と指示したくなりますよね.しかし,分かっていない児童が相当数いることも事実で,児童・生徒の言う「分かったこと」が,必ずしも教師の考えている「分かってほしいこと」と同じではない場面を,これまでも経験されたのではないでしょうか.

 

 それよりも,まず,授業の学習行動のエピソードを,児童・生徒がじっくりと脳内で再生させる方がよいと思います.授業のエピソードを記憶想起できない児童・生徒よりも,できる児童・生徒の方が,授業の文脈と学習内容の解を得やすいと考えられます.例えば,授業の感想書きを習慣化させておけば,めあての解釈や学習行動への関わりに注意が向けられます.私は授業中に,「後で,感想が書けるようにしといてね」などと常に声掛けを行っていました.

 

 それと,これを読まれている先生の中には,感想を紙に書かせるのか,タブレットで書かせるのかを考えられている方もおられると思いますが,どちらでも構わないと思います.記憶想起をしているときは,タイムラグなしに児童・生徒がすぐに書けることがポイントでしょう.今回は,ここまでとします.丁寧にお読みいただきありがとうございました.

 また,右サイドメニューの《これまでの記事のまとめ》に,記事を時系列で並べ替えたリンクを作成しています.読みやすいと思いますので,ご活用ください.

 次回は,授業の進捗状況で考えます.

 

 

 

授業における知識の形成過程 その⑧

博士にまつわる話題

別版のサイトになります.

なぜ日本が「低学歴国」と言われているかが分かります.

博士は専門家ではない.なぜか・・・・.

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 いつもお読みいただきありがとうございます.

 今回は,授業の冒頭に前時の授業のまとめを行う場合のメリットについて紹介します.

 このブログを読んでこられた方は,授業の冒頭に前の授業のまとめを行う理由がお分かりになっていると思います.もし,まだその記事をお読みになっておられない方やもう一度確認したい方は,次のリンクを参照されてから,今回の記事を読んでいただくことをお勧めします.

www.kiokusaisei.com

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 この回で紹介するのは,前回の授業で敢えてまとめをしなかった場合です.また,時間内にまとめが行えなかった場合も含みます.

 かつて私が若い頃,ある指導主事が,「授業は45分で完結しなければなりません.」と言ったことを記憶しています.しかし生意気にも私は,建て前としてはそうだが,はたして本音は違うのではないかと思っていました.なぜなら,一人ひとり能力が違う児童・生徒たちが45分や50分で,指導する内容を完全に理解できるはずがないと思っていたからです.

 この話題に対する一般的な回答は,「指導内容に応じた授業の時数も決まっており,無理してでもその時間内にまとめを行う」ということであろうと思います.そうすると何人かの児童・生徒は,分からないままに授業が終了していたはずです.何とも申し訳ない話です.己が授業を消化しなければならないという事情で,何名かの児童・生徒には不十分な授業を強いていたのです.

 しかし,ここで考え方を変えて,まとめを次回にずらすと,そのような児童・生徒も,もっとゆっくりと考えたり,もっと丁寧に先生や友達から支援を受けたりすることができます.このような時は,授業の終了直前に学習の感想を自由記述で書かせておくと,理解した児童・生徒とそうでない児童・生徒は,ほとんどはっきりと区別できます.中には,4年生で学習のまとめの推測まで記述する児童も数名いました.

 そうすると,次回の授業の冒頭に前時の授業のまとめを行う場合,理解している児童・生徒と理解していない児童・生徒は,はっきりと分かっていますから,焦ってまとめをするよりもはるかに効率よく短時間で,丁寧に発話したり板書したりすることができます.

学習の初めに前の授業のまとめを行うときの記憶等の仕組み

 【授業の初め】前の授業のエピソードは,記憶として保持されています.特に,学習行動が楽しかった,嬉しかった,不思議だった,分かったなどの情意面で評価される場合は,特別に記憶が消失する理由がない限りは残っています.ただし,その記憶は潜在化していますので,児童・生徒の意識には上っていません.

 

 【教師の発話直後】前の授業について記憶想起させることが目的であり,短時間で済ませたいので,教師の発話内容が重要です.「前の授業では何をしましたか」だけでは,漠然とした発話ですからあまり記憶想起になりません.手がかり再生を起こすためには,発話する言語を選ぶことが重要です.例えば,「〇〇さんの発表で盛り上がったね」「どんな発表だったかな」,「〇班の発表で,分かったことがあったね」「それは何だったかな」,黒板のある場所を指して「この辺りに何か描いたよね」「誰の発表から話が盛り上がったの」など,具体的なエピソードに関する発話なら児童・生徒は容易に記憶想起することができます.また,前の時間の最後に感想等を書かせておいた場合は,誰が良く理解しているかなどの情報を既に教師が持っていますから,「〇〇さん,あなたの感想を読んでみて下さい」とお願いすることができます.

 このような発話によるやり取りを経て,児童・生徒の脳でスキーマとして潜在化していた記憶が呼び起されますが,自分にとって最も情意面で影響を受けたエピソードが真っ先に顕在化してきます.

 

 【教師のさらなる発話後】児童・生徒のエピソード記憶の想起が促進したら,前時の授業のめあてを再提示したり,問いかけたりすることにより複数の児童・生徒らの発言とともに,消失していた前時のめあてが再び意味記憶として形成され,頭の中で何度も繰り返されます(リハーサルと言います).同時に,前時のエピソードを記憶想起しながら,その文脈,つまり何を求めるための授業であったかを探ることができる児童・生徒も出現します.それら児童・生徒の発言を上手く利用して,どのようなまとめにするかを問いかけると,例えば,まとめの文をどのようにすればよいかを発言する児童・生徒が出現します.

 

 このように,授業の冒頭に行うまとめの時間は,全員が同じスタートラインに立って始めることができます.必要なことは,前時の記憶想起をすることだけです.なお,ここに記している内容は,既に何度も実践を行った結果をもとに記しています.

 

 学習の初めに前時のまとめを行うメリットは,なぜ本時の学習をしなければならないかという前時と本時の学習のつながりが,文脈として児童・生徒に理解されるところだと考えています.以下の板書は,「もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その⑥ 2023.11.30」のブログで用いたものです.

 これを見ると前時のめあては,児童が記憶想起をしているので記述していません.(時間短縮)

 何をしたのか,結果はどうだったかだけを簡潔にまとめています.そこからの関連で(矢印),まとめの文章を考えさせています.(赤の四角)

 さらに,簡単な演習を行い,その結果を根拠として,本時のめあてを考えさせ授業に入っています.つまり,計算では50gの水に食塩を12g溶かすことができそうだけど,実際はどうかという文脈が生まれているのがお分かりいただけると思います.そのことが実感を伴うということになります.

 

 このように,授業の冒頭に前時の授業のまとめを行う場合,前時の授業のエピソードが保管されているスキーマを検索するという学習行動を利用しますので,そのような学び方の訓練になると考えます.

 授業が45分や50分で終了することが可能なら,それで良いと思いますが,文科省から授業時間を5分短縮する案なども報道されています.無理にその時間に詰め込んで終わるよりも,次回の冒頭にまとめを移動させて,じっくり活動させることも必要ではないでしょうか.

 今回は,ここまでにします.長い文章でしたが,お読みいただきありがとうございました.次回は,記憶再生マップを描く時の脳内についてです.

 

 

 

授業における知識の形成過程 その⑦

 今回は,【授業の終末】について考えてみたいと思います.

 前回お話した授業のストーリーですが,先生お一人お一人で異なる文脈であるはずです.めあては同じでも,展開は学級ごとに異なるのが普通ですからね.

 

 授業の終末の脳内

 学習が大詰めを迎えると,授業もそろそろ終わりになります.このような時に,児童・生徒の脳では,どのようなことが行われているのでしょうか.

 まず,ここに至るまでに児童・生徒が何度もめあての意味を思い返し(リハーサルと言います)いることが重要です.具体的には,尋ねたときに即答できることです.例えば,算数科では,答えを出すのか,解き方を導き出すのか,または,解き方を考案して答えも出すのかなどの微妙な違いも理解できているかどうかです.理科では,何を目的として実験や観察をしているのかを,正確に答えられるかどうかなどです.

 そのような児童・生徒にするためには,めあての提示後から,事ある毎に「今日のめあては何だったかな」とか教師が自問自答するふりをしながら呟いたりするのも効果的です.また,ある児童・生徒を支援するふりをしながら,他の児童・生徒にも聞こえるように「〇〇さん,今日は・・・・が授業のポイントだったよね」などと発話して,めあての意味を常に意識させて学習行動を取らせるのもいいですね.

 

 そのようにして,学習のめあての意味を記憶として保持している児童・生徒は,その意味を手がかりとして,自身が記憶している学習行動のエピソードを想起し,何が学習の解であるかを考えることができる可能性があります.例えば「解き方を考える」であれば,記憶想起している学習行動のエピソードを,「どのようにすれば解けるか」という視点で見返すことができるようになります.

 ここはあくまでも可能性でありますが,実際は,このレベルにすら達しない児童・生徒もいることも事実です.ですから,少なくともめあての意味を学習の終末まで保持できるような指導や支援をしなければならないと考えます.その上で学習指導の工夫をして頂けたら,これまで以上に成果は期待できます.

 次に,図の説明をします.最初に「学習のまとめなどの終末の学習行動と,めあての意味が関連付けられ,児童・生徒が考える授業の意味に,内なる納得をした児童・生徒の脳には,めあて及び学習行動のエピソードとリンクした学習内容の解の意味記憶が形成される」について説明します.

 まず「終末の学習行動」とは,「学習によって分かってきたことを全員で共有する場面」または「多くの児童・生徒が,発話や発表などの表現活動を行い,今後,理解していきたい事柄などを明らかにする場面」などです.もちろん「児童・生徒自身も,めあてに対する回答を自分なりの表現方法で示す場面」でもあります.

 次の「めあての意味が関連付けられ」とは,この授業で最も大切なことは何であるかを,板書などで表された学習のまとめの中に見出すということです.

 その次の「児童・生徒が考える授業の意味に,内なる納得をする」とは,「この授業で最も大切なことはこれである」と自身が結論付けたことに納得するということです.納得とは,他者の言動を十分に理解することですが,内なる納得は,自身の結論に対して「それでよい」と思うことです.考え続けるためには,このことはとても重要になります.

 

 「めあて及び学習行動のエピソードとリンクした学習内容の解の意味記憶が形成される」の部分は,内なる納得をすることにより,学習のめあてと学習行動の時系列のエピソードをもとにした学習の文脈学習内容の解という3つの意味記憶がリンクされるということを表しています.

 次の「この意味記憶には,自身が言語で説明できるエピソード記憶にあるイメージや概念化したエピソードの因果関係等」とは,記憶再生マップを描いた児童が,練習することなしにすぐに言語を使って説明することができることと同様に,学習のめあてから始まり,何をどの様にしたら何が分かったか等の因果関係を含む学習行動の説明であることを表しています.すなわち授業の終末における児童の脳には,このような授業の説明ができる記憶のつながりが,形成されていなくてはならないということになります.それら3つの意味記憶は,授業について自由に書かせたときに,表現されなければなりません.

 例として,算数科の三角形の面積を求める公式があるかを調べる授業を考えてみましょう.児童のスキーマには,四角形の面積を求める公式は存在します.

 学習のめあてを「三角形の面積はどのようにして求められるか調べよう」とするのか,「三角形の面積を求める公式を導こう」とするかなどは,指導者の考えで異なります.

 学習行動としては,スキーマにある四角形の面積を求める公式を利用するのか,それとも別の活動を行うのかは学習者の考え方次第です.

 考え方の交流や説明活動など,様々な学習行動を経て,公式と考えられる計算方法が吟味され,三角形の公式が板書されて授業は終わりを迎えます.

 この段階で自由記述をさせると,「三角形の面積がどのようにして求められるか(学習のめあて)を,四角形の面積の公式を利用して調べました.2つの同じ三角形を使って四角形を作ることができたので,四角形の面積の公式を使い計算しました.でも,2つ分だったので最後は2で割ることになりました.言葉もたてや横は,高さや底辺に変えました.(学習の文脈)すると底辺×高さ÷2で全部の三角形の面積を求めることができることが分かりました.(学習内容の解)」などのような,解に至る学習の文脈を感じられる説明を記述する児童も出現するかも知れません.これらは,確かに学校教育の文脈です.

 一般的な授業の流れでの児童・生徒の脳内で行われていることについて書きましたが,これまではこのような議論すらなされていませんでした.児童・生徒の脳内でどのようなことが行われているかは分からなかったからです.これからは,学習者の脳内での情報の流れを意識して,指導されると指導が分かりやすくなるのではないでしょうか.

 次回は,授業の冒頭に前の授業のまとめを行う場合のメリットについて紹介します.今回も丁寧にお読みいただきありがとうございました.