記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)

「生成AIは,児童の学習を評価できるか」ということで,ChatGPT , Bing , Bardの3つについて同様の課題を与えてみました.これらの箇条書きは,小学4年生が理科の最終単元「すがたを変える水」の学習直後に本当に書いたものの半分です.

半分にした理由は,ChatCPTとBingの入力容量に限度があったためです.Bardには,全員分の箇条書きが入力できましたが,比較するためにBardにも半分の量の箇条書きを入力しました.

【課題】

「次の箇条書きは,小学4年生が理科の「すがたを変える水」という単元で学習したことを,箇条書きにまとめたものです.これらの小学生は,学習の内容をどの程度理解していると考えますか.

・水に色を変える絵具を入れて,沸騰したら赤色になった. ・水が姿を変えたら,3つの姿ができる.水蒸気(気体),水(液体),氷(固体). ・水を試験管の中に入れて冷やしたら,水の体積が大きくなり試験管が破裂する. ・水蒸気は見えない. ・水を温めたら90度までいくけど,100度以上の温度は上がらない. ・水を冷やしたら0.5度ぐらいになる. ・水蒸気が見えなくなること. ・ビニール袋に水滴が付くこと. ・温かい水からは,湯気がでること. ・冷たい水からは,湯気が出ない. ・鉄の丸みたいなやつでビーカーの上にのせて水が付くか試した. ・水を凍らせたりして水の様子が変わったりした. ・氷(個体) ・水(液体) ・水蒸気(気体) ・水を凍らせると体積が大きくなる. ・水を温めると,100℃までしか上がらない. ・水を冷やし続けて,水全部が凍るまでは,温度が変わらない. ・雪は,小さな埃でできている. ・雲の正体は水. ・体積が大きくなると,割れたり破裂したりする. ・固体は氷,液体は水,気体は水蒸気. ・水を温めると,1分で10℃位上がる. ・水を温めると水の体積が大きくなってお湯になる. ・101℃以上はならない. ・スーパー氷水で温度を計ると-0℃以下にはならない. ・固体(氷),液体(水),気体(水蒸気)の3つがある. ・水蒸気は,水からできている. ・水を0℃まで冷やすと凍る. ・水は,100℃までしか上がらない. ・水を冷やすと,コップに水滴が付く. ・水は温めると100℃になる. ・100℃以上にはならない. ・沸騰したら水蒸気がどんどん出てくる. ・水は冷やすと,0℃以下になり,体積は増える. ・氷(個体),水(液体),水蒸気(気体) ・氷(個体) ・水(液体) ・水蒸気(気体) ・水を凍らせると体積が増える. ・水は,0℃で凍る. ・水は,100℃以上に温度は上がらない. ・湯気は水. ・沸騰している水の中から出ている水蒸気. ・水は,熱し続けると温度が上がり,100℃位になると沸騰する. ・沸騰している間は水の温度は変わらない. ・液体,固体,水蒸気3つがあると知りませんでした. ・この3つは大きく3つは,分かるように分かりました. ・姿を変える水は,0℃になると,水の体積が大きくなり,試験管が割れた. ・姿を変える水では,0℃になると水が凍り始めます. ・試験管を冷やし続けると,ひびが出で割れます. ・100℃になると沸騰し始めます. ・100℃からはあまり上がりません. ・100℃になると湯気が出始めます. ・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体. ・氷は集まる,水は触ると動く,水蒸気は自由に動く. ・分かったこと,冷やし続けると割れる. ・体積が大きくなり,割れてしまう. ・100℃以上には,あまり上がらない. ・最初は割れると思っていなかった. ・湯気は水だと分かりました. ・水は,99℃までしか上がらない. ・紙は,水に入れて火に当てても燃えない. ・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.」

 

【結果】

1 . ChatGPT

「この箇条書きには、小学4年生が「すがたを変える水」という単元で学習した様々な内容が含まれています。しかし、全ての学生が同じ程度に理解しているとは限りません。学生がこの内容をどの程度理解しているかを正確に判断するためには、教師が彼らの知識や理解度を評価する必要があります。ただし、この箇条書きには、小学4年生が理解できるように簡潔にまとめられた内容が含まれているため、一般的には、学生たちは理解していると思われます。」

 

2 . Bing

「小学4年生が理科の「すがたを変える水」という単元で学習したことを箇条書きにまとめたものですね。この内容をどの程度理解しているかは、個人差があるため一概には言えませんが、学習した内容を箇条書きにまとめること自体は、学習内容を理解している証拠です。ただ、この箇条書きには、小学4年生が学習した内容以外のことも含まれているようです。もし、学習した内容以外のことについても理解している場合は、より理解度が高いと言えます。

参考文献 小4理科「すがたをかえる水」指導アイデア - みんなの教育技術](https://kyoiku.sho.jp/72998/)

参考文献 小4理科「水のすがたとゆくえ」指導アイデア - みんなの教育技術](https://kyoiku.sho.jp/116946/)

詳細情報:1. kyoiku.sho.jp2. kids.yahoo.co.jp3. kyoiku.sho.jp 」

 

3 . Bard①

「これらの小学生は、学習内容をある程度理解していると思います。彼らは、水が固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの状態に変化できることを理解しています。また、水の温度を上げると沸騰し、蒸気が出ることや、水を冷やすと凍り、体積が大きくなることも理解しています。これらの概念はすべて、日常生活の中で見ることができるので、小学生にとっては理解しやすいと思います。」

3. Bard②

「小学校4年生が理科の「すがたをかえる水」という単元で学習したことを箇条書きでまとめたものを読んで、その学習内容をどの程度理解しているかを判断するのは難しいです。なぜなら、学習内容の理解度には個人差があるからです。しかし、いくつかの傾向を挙げることはできます。

 まず、箇条書きの内容を見ると、水が三態(固体、液体、気体)に変化する様子についてよく理解しているようです。例えば、「水を凍らせたら体積が大きくなる」「水を温めると100℃までしか上がらない」「水を冷やすと0℃以下になり、体積は増える」など、水の状態変化に関する正確な知識を述べている箇条書きがいくつかあります。

 また、水の状態変化の実験にも関心を持っているようです。例えば、「水に色を変える絵具を入れて、沸騰したら赤色になった」「水を試験管の中に入れて冷やしたら、水の体積が大きくなり試験管が破裂する」など、水の状態変化を実際に観察・実験したことについて述べている箇条書きがいくつかあります。

 ただし、箇条書きの内容を見ると、水の状態変化に関する知識がまだ十分に理解できていない部分もあるようです。例えば、「水蒸気は見えない」「水を温めたら90度までいくけど、100度以上の温度は上がらない」「水を冷やしたら0.5度ぐらいになる」など、水の状態変化に関する誤った知識を述べている箇条書きがいくつかあります。

 全体的に見て、小学校4年生が理科の「すがたをかえる水」という単元で学習したことを箇条書きでまとめたものを見ると、水が三態(固体、液体、気体)に変化する様子についてよく理解しているようです。しかし、水の状態変化に関する知識がまだ十分に理解できていない部分もあるようです。」

3. Bard③

「これらの小学生は、水の状態変化について基本的な理解をしているように見えます。彼らは、水が固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの状態に変化できることを知っており、これらの状態をどのように相互に変換できるかを知っています。彼らはまた、水の沸騰点と凝固点を知っており、これらの温度と水の状態との関係を理解しています。

 ただし、いくつかの学生は、水の状態変化に関する知識をよりよく理解するために、より多くの練習や説明が必要かもしれません。たとえば、一部の学生は、水蒸気が水蒸気であってもまだ水であることを理解していないようです。一部の学生はまた、水の凝固点が0℃であることを理解していないようです。

 全体として、これらの小学生は、水の状態変化について基本的な理解をしているように見えます。ただし、いくつかの学生は、水の状態変化に関する知識をよりよく理解するために、より多くの練習や説明が必要かもしれません。」

 

 これらが結果です.私は,現在のバージョンでしたら,Bard②や③であれば利用したいと考えています.

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました.

児童が書いた文章をKH Coderに入力するときに注意すること

 いつもお読みいただきありがとうございます.

 前回までに,小学校の実際のデータをKH Coderに読み込ませ,共起ネットワークを作成しました.

 このとき使用したテキストデータは,4年生理科「すがたを変える水」での学習が終了した直後に書かせた箇条書き(a)と,その数日後に記憶再生マップを描かせ,さらにその数日後に記憶再生マップを参照しながら書かせた箇条書き(b)でした.

 今回は,KH Coderを利用するときに注意が必要なことを紹介します.

 KH Coderは,解析するテキストテータを細かく分解する「形態素解析」を行います.そのため,できるだけ正しい言語に分解してもらいたいので次のような注意が必要です.

1.児童が書いた文章をテキスト化する場合は,ひらがなはできるだけ漢字に変換してください.

 児童が手書きした文章には,誤字脱字を含めてそのままKHCoderに読み込ませることが不可能なものが多く見受けられます.特に多いのが,ひらがなのままの文章です.そのままKH Coderに読み込ませると,ひらがなで表現された文章を正しく分解できない場合があります.

 

2.句読点に注意してください.

 私は,論文を書くときに句点として「.」,読点として「,」を使うことが多いのですが,特に,読点として使う「,」(カンマ)が文中に入ると,それ以降の文章がKWICコンコーダンスで正しく認識されない現象を確認しています.

 @kazuo reveさんのページ「KH Coderでの抽出語リストの作成方法」にも,「:」,「.」,「※」,「+」,「,」などは空白に変換するなどの注意点が記されています.ですから前回と前々回に掲載したテキストデータ(箇条書き)でも,「、」や「。」に変換して使用する方がよさそうです.

 そこで,これまでに掲載した箇条書きをもとに作成した共起ネットワークの違いを見て下さい.

 ① 箇条書き(b)で,読点「,(カンマ)」と句点「.(ピリオド)」を使用した場合の共起ネットワーク

 (例)・水は液体で,粒が寄り添い合い,集まっていると分かりました.

    ・水蒸気は気体で,粒が規則正しく並んでいると分かりました.

    ・氷は固体で,粒と粒の間が広くなっていることが分かりました.

句読点に「,」や「.」を使った場合

 カンマとピリオドを句読点に用いた場合(どちらかと言えば,カンマが問題と思うのですが・・・),KH Coderに組み込まれた形態素解析を行うプログラム(茶筌というものです)は,本来ならば8か所で使用されている「粒」うち,3か所のみしか抽出できなかったので,共起ネットワークには「粒」に関する共起関係は現れませんでした.

 

② 箇条書き(b)で,読点「、(てん)」と句点「。(まる)」を使用した場合の共起ネットワーク

 (例)・水は液体で、粒が寄り添い合い,集まっていると分かりました。

   ・水蒸気は気体で、粒が規則正しく並んでいると分かりました。

   ・氷は固体で、粒と粒の間が広くなっていることが分かりました。

句読点に「、」や「。」を使った場合

 句読点を「、(てん)」や「。(まる)」にしたら,「粒」と「集まる」の共起関係が表示されるようになりました.それに,「上」と「温まる」の共起関係もその左に表示されるようになりました.これは,「水は,上から温まる.」という文章があり,「,」を「、」に変えたことによりKH Coderが解析できるようになったからだと考えます.

 この学級を有機体として捉え,記憶再生マップを描いた後に,再び記憶再生マップを参照しながら書いた結果,幾つかの特徴的な共起関係が確認されました.赤線で囲った水の三態変化に関連した概念.青線で囲った湯気と雲や霧との関係を示した概念.特に,雲と霧はJaccard係数が0.64と非常に強い共起関係であることから,児童が雲と霧の本質を理解したものと考えてよいと言えます.さらに,オレンジ色の線で囲った部分は,水が凍ったら体積が増加することを理解した部分と言えます.このように,句読点を「、と。」で統一した方が正しい描画につながります.

 

3.描画する共起関係(edge)の選択に注意してください.

 KH Coderの初期設定の「描画する共起関係(edge)の選択」を変更することで,知りたい共起関係が見えてくることがあります.

抽出語・共起ネットワーク:オプションの画面

 最小出現数を3にした場合でも,描画する共起関係(edge)の選択を60以上にすることで,見えてなかった関係を確認することができます.

 2.の②で示した共起関係は,上位60でした.これを上位120にすると次のようになります.

描画する共起関係(edge)の選択が上位120のときの共起ネットワーク

 上位60では,「粒」と「集まる」の共起関係が確認され,水や氷,水蒸気などを「粒」と捉えて,それらが集まるということを理解したものと考えられます.上位120にすると,「集まる」と「冷たい」の共起関係が確認できました.そこで,「集まる」のKWICコンコーダンスを見ると,「水蒸気は,冷たいところに行って,どんどんそこに集まると,水滴になります.」という箇条書きを書いた児童がいたことに気づきます.そのため,この共起ネットワークでは,青線で囲ったように「冷たい」と「集まる」が共起していたのです.

 

 人間が脳で考えたり経験したことは認知できませんが,このような共起ネットワークの姿から,このクラスを有機体と考え,その概念が,どのようなつながりを持っているかを知ることができました.つまり,このクラスは,「すがたを変える水」をこの共起ネットワークのつながりのように捉えていると結論付けても,差し支えないと言えます.

 この例で言えば,最もはっきりと理解したところは,水の三態変化の部分であり,それに付随して雲や霧,湯気の関係についても考えがまとまっているように見えます.その他,水を冷却した場合の体積の増加などについても理解が進んでいるようです.

 PDCAサイクルの実践により何らかの結果をエビデンスとして,自分の授業に対して評価する必要があります.自分が計画して行った授業は,児童の理解につながったのでしょうか.

 皆さんはどのようになさっていますか.私は以前,評価テストの点数だけで判断していました.しかし,そのような評価では不十分であることに気づき,このような手法でチェックしています.今回の授業は,これを見ると概ね予定通り行えたと判断しています.皆さんも,実践してみてはいかがでしょうか.

 さて,次回は,記憶再生マップの分析は,それを参照しながら書いた箇条書き等の二次的著作物であることには違いないのですが,今回のような言語の共起関係を調べるのではなく,意味を持つ言語のイメージが脳内でどのように配置されているかを考えてみたいと思います.

 今回もお読みいただきありがとうございました.

 

実際のデータを使って,共起ネットワークを作成しましょう②

 いつもお読み頂きありがとうございます.

 今回は,R42月~3月にかけて武雄市の小学校で実施した4年生理科「すがたを変える水」の授業後に記憶想起のみで書かせた箇条書き(a)の数日後に記憶再生マップを描かせ,その約1週間後に,記憶再生マップを参照しながら書かせた箇条書き(b)KH Coderで処理してみます.

 箇条書き(b)・・・・・箇条書き(a)の数日後に描いた記憶再生マップを,その数日後に参照しながら作成.(28)

drive.google.com

 今回はPDFで提供させていただきます.前回,データが長すぎてご迷惑をおかけしました.コピーしてKH Coder用のテキストファイルにして下さい.

このテキストファイル名を「箇条書きb_sample」とします.

 それでは,KH Coderを起動し,このテキストファイルを読み込みましょう.

 起動したら「ツール」-「抽出語」-「抽出語リスト」を見てみましょう.

 これを見ると,最も多く使用された言語が「水」です.続いて「水蒸気」,「冷やす」など水の三態変化に関する言語が用いられています.記憶再生マップを描いた後の箇条書き(b)では,このことを書いた児童が多いことが分かります.

 ここで,29位の「粒」が気になりました.おそらくは,粒子性について記述した児童だと思います.そこでKWICコンコーダンスを見るために,「粒」の文字をクリックします.

 

 これを見ると「粒」という言語について一人の児童が,「氷は固体で,粒と粒の間が広くなっていることが分かりました.」という間違った概念を持っているのに対して,別の児童は「気体は粒と粒との間が広い.」という正しい概念を獲得したようです.

 もう少し出現頻度の少ないものをみると,次の様な抽出語が確認できました.

 

 

 これら「自由」と「集まる」も粒子性に関係のある言語の様です.これらのKWICコンコーダンスをみると,次のようになりました.

 これらを書いた児童は,4年生である程度の粒子性についての概念が身に付いたと考えられます.

 今回の分析では,学級全体を有機体と考え,学級としてどのような理解に至ったかを調査することが目的ですから,このような叙述が見られたという事は嬉しいことです.

 それでは,出現の頻度が3以上で共起ネットワークを作成してみましょう.

 

 まず,各ノード()の大きさが前回の共起ネットワークに比べて違うので,それを理解した上で見たいと思います.Frequencyの大きさに注目です.

 これを見ると,緑色のクラスターは,温度による変化についての記述があり,それがオレンジ色のクラスターとつながっています.これは,水の三態変化の記述ですが,さらに結露についてその現象を記述した黄色のクラスターとつながっています.さらに,液体という言語からピンク色のクラスターが共起しており,湯気や雲,霧とつながっていることが読み取れました.また「粒」は「集まる」という言語と共起していることも示されています.つまり,児童の獲得した概念としては,水の小さな粒は集まるという概念が形成されたことが分かります.

 授業の自己評価としてどうだったかは前回の共起ネットワークと,今回の共起ネットワークを比べればよいという事になります.今回のデータでは,学習が終了した数日後がより深い理解をしていることになります.

 

 ずいぶん長くなりましたので,今回はこれで終わりますが,次回は,KH Coderを利用するときに注意(バグかも?)することを紹介します.

 今回もお読みいただき感謝申し上げます.

 

実際のデータを使って,共起ネットワークを作成しましょう.

 今回からの内容は,記憶再生マップのような表現物は,その評価が非常に難しいので,その二次的著作物である箇条書きをテキストマイニングすることで記憶再生マップの評価とするというものです.(長文注意)

 余談ですが,実践授業では単元の学習後に記憶再生マップを描かせると,確かに評価テストの成績は向上しますし,また観点では,どちらかと言えば「思考力,判断力,表現力等」の成績が上がります.このような傾向は,記憶再生マップを使い始めた当初からみられていました.

 記憶再生マップは,学習により記憶した知識を手がかり再生により想起して,それらの関連性について自分なりの結論を出しつつ,概念化した関係のある事項をつなぎ合わせているイメージです.ですから,概念間の連携については自分自身で意味を形成していることになります.従って,事柄の因果関係については,一応児童自身が答えを出していることになりますから,評価テストのうち少なくとも「思考力,判断力,表現力等」に該当する問題の正答率は上がります.授業で協同作業を行い考え方を交流する経験を行った後に,記憶再生マップを描かせるとなおさらです.

 今回,利用するデータは4年生理科のものです.R42月~3月にかけて武雄市の小学校で実施した4年生理科の最後の単元である「すがたを変える水」の箇条書きのテキストデータです.これは,単元の授業が終わった直後に,「学習して分かったことを書きましょう.」という課題を与えて箇条書きさせたものです.これを箇条書き(a)とします.これに対して,その後の授業時間を利用して記憶再生マップを描かせ,さらに1週間など時間を空けてから,記憶再生マップを見ながら分かったことを書いたものを箇条書き(b)とします.

 まず,箇条書き(a)KH Coderで処理してみたいと思います.その際,児童が手書きした箇条書きは,テキストファイルにしなければなりません.児童の手書き文章には誤字脱字がたくさんありますので,全て正しい文字に打ち換えなければなりません.また,おかしな文章表現も「てにをは」程度は,推測して正しくする必要があります.さらには,ひらがな表記も漢字にしておくとよいでしょう.このようにすることでKH Coderの処理がスムーズになります.

 学級を有機体と捉え児童ひとり一人の書いた箇条書きを全て集約して,一つのファイルとすると学級全体としての傾向が読み取れることになります.

 実際に,下の箇条書きをコピーし,メモ帳に貼り付けて使ってみてください.貼り付けたら,適当な名前で保存してください.

 なお,行を空けているのは児童を区別するためですのでKH Coderの処理には関係ありません.地方の小学校に通う実際の4年生が,どの程度の表現をするかが分かります.この学校の学力は,地方の学校としてはやや低いかもしれません.

 なおKH Coderは,立命館大学の樋口耕一先生が作成されたテキストマイニング用のソフトウェアです.

KH Coder: 計量テキスト分析・テキストマイニングのためのフリーソフトウェア

 箇条書き(a)・・・・・記憶再生マップを描く前に行うまとめ活動で作成.(28)

 ここでは,のテキストファイル名を「箇条書きa_sample」とします.

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・水に色を変える絵具を入れて,沸騰したら赤色になった.

・水が姿を変えたら,3つの姿ができる.水蒸気(気体),水(液体),氷(固体).

・水を試験管の中に入れて冷やしたら,水の体積が大きくなり試験管が破裂する.

・水蒸気は見えない.

・水を温めたら90℃までいくけど,100℃以上の温度は上がらない.

・水を冷やしたら0.5℃ぐらいになる.

 

・水蒸気が見えなくなること.

・ビニール袋に水滴が付くこと.

・温かい水からは,湯気がでること.

・冷たい水からは,湯気が出ない.

・鉄の丸みたいなやつでビーカーの上にのせて水が付くか試した.

 

・水を凍らせたりして水の様子が変わったりした.

・氷(固体)

・水(液体)

・水蒸気(気体)

 

・水を凍らせると体積が大きくなる.

・水を温めると,100℃までしか上がらない.

・水を冷やし続けて,水全部が凍るまでは,温度が変わらない.

・雪は,小さな埃でできている.

・雲の正体は水.

・体積が大きくなると,割れたり破裂したりする.

・固体は氷,液体は水,気体は水蒸気.

・水を温めると,1分で10℃位上がる.

 

・水を温めると水の体積が大きくなってお湯になる.

・101℃以上はならない.

・スーパー氷水で温度を計ると-0℃以下にはならない.

・固体(氷),液体(水),気体(水蒸気)の3つがある.

・水蒸気は,水からできている.

 

・水を0℃まで冷やすと凍る.

・水は,100℃までしか上がらない.

・水を冷やすと,コップに水滴が付く.

 

・水は温めると100℃になる.

・100℃以上にはならない.

・沸騰したら水蒸気がどんどん出てくる.

・水は冷やすと,0℃以下になり,体積は増える.

・氷(固体),水(液体),水蒸気(気体)

 

・氷(固体)

・水(液体)

・水蒸気(気体)

・水を凍らせると体積が増える.

・水は,0℃で凍る.

・水は,100℃以上に温度は上がらない.

・湯気は水.

 

・沸騰している水の中から出ている水蒸気.

・水は,熱し続けると温度が上がり,100℃位になると沸騰する.

・沸騰している間は水の温度は変わらない.

 

・液体,固体,水蒸気3つがあると知りませんでした.

・この3つは大きく3つは,分かるように分かりました.

・姿を変える水は,0℃になると,水の体積が大きくなり,試験管が割れた.

 

・姿を変える水では,0℃になると水が凍り始めます.

・試験管を冷やし続けると,ひびが出で割れます.

・100℃になると沸騰し始めます.

・100℃からはあまり上がりません.

・100℃になると湯気が出始めます.

・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体.

・氷は集まる,水は触ると動く,水蒸気は自由に動く.

・分かったこと,冷やし続けると割れる.

・体積が大きくなり,割れてしまう.

・100℃以上には,あまり上がらない.

・最初は割れると思っていなかった.

 

・湯気は水だと分かりました.

・水は,99℃までしか上がらない.

・紙は,水に入れて火に当てても燃えない.

・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.

 

・水は0℃になると凍り始める.

・温めると物の体積が大きくなる.

・冷やすと物の体積が小さくなる.

 

・水は凍ると体積が増える.

・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.

・水は100℃で沸騰し,0℃で凍る.

・水は100℃以上になると温度があまり上がらなくなる.

・気体を冷やすと液体になり,液体を冷やすと固体になる.

・固体を熱すると液体になり,液体を熱すると気体になる.

・たくさん冷やされた氷がガーゼに触れるとくっつく.

 

・水を20分間ずっと温めた.

・水をガスコンロで温めた.

 

・冷やし続けたら0℃になって,まだしてたら0℃以下になった.

・冷やし続けると水が氷になった.

・水を冷やしたら,体積が増えた.

 

・水は,0℃になると体積が増える.

・結露→白くなる→氷→体積が増える→割れる.

・温めるときは,100℃が限界.

・紙コップの中に水を入れると燃えない.

・天然水や水系の飲み物は,冷やすと破裂する.

 

・水を温めると100℃以上は上がらない.

・水を冷やすと0℃で氷になる.

・試験管に水を入れて,水と塩と氷を入れたところに試験管を入れて待つと,温度が下がっていく毎に,体積が大きくなり,15mLから2cmか3cm水が増えて氷になる.

・試験管の水が凍ると,体積が大きくなって割れる.

 

・水の正体は水蒸気.

・熱い水は,100℃以上にはならない.

 

・水の温度を上げると体積が大きくなり,温度が高くなる.

・温度を温めすぎても100℃以上には上がらない.

・水の温度を下げると体積が下がり,温度が低くなる.

・温度を下げすぎると,何℃ではなく,マイナス何℃になる.

・固体,気体,液体の3つの種類がある.

 

・氷が増えると体積が増える.

・気体,液体

・氷水を冷やすと熱くなって,温度マイナス1℃だった.

 

・水は,100℃より上の温度にはならない.

・水は0℃になって凍り終わるまで,温度が変わらない.

・水,湯気,霧,雲は仲間で液体.

・氷,雪は固体.

・水蒸気は気体.

 

・水は,たくさん姿を変える.

・水は,真逆な物にもなれる.

・水は,触れば火傷するくらい熱くなる.

・水は,凍るくらい冷たくなる.

・塩を使えば,もっと冷たくなる.

・水は,凍ると体積が大きくなる(ビーカーが割れるくらい).

・水は温めると,100℃までにしか上がらない.

・水は,温め続けると,水は無くなる.

・水は,温めると沸騰する.

・水を温めると蒸発して,水蒸気になる.

・水を温めると,湯気になる.

 

・水を温めるとだんだん温度が上がっていって100℃になると,100℃以上にならない.

・水を冷やすと,試験管が割れました.その理由は,水の体積が大きくなったから試験管が割れた.

・水蒸気の正体は,水.

 

・水は,温めると100℃から上へ行かない.

・水は,冷やすと0℃から水が凍り始める.

・水を冷やし続けると,0℃になる.

・氷は,冷やされると体積が大きくなる.

・水は,温めると湯気が出てくる.

・湯気は,温まった水蒸気.

 

・水を温めると,蒸発する.

・水を熱すると,温度は上がる.

 

・水は,温めると沸騰し,水蒸気が出るが,その水蒸気も,元は水であるということが分かった.

・水は,温め続けても,100℃以上にはならないということが分かった.

・水を冷やし続けたら,0℃以下になり,凍り始め,そこからまた冷やし続けると,体積が大きくなり,割れるということが分かった.

 

・水が凍ると,体積は増える.

・水が凍るのは0℃.

・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体である.

 

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 それでは,KH Coderを起動し,このテキストファイルを読み込みましょう.

 読み込んだら,「前処理」をクリックし「前処理の実行」を行います.もし,テキストファイルに不備があればメッセージが出ます.次に,「ツール」-「抽出語」-「抽出語リスト」を見てみましょう.

 次がその結果です.

 

 これを見れば,28名の書いた箇条書きに現れた言語とその頻度が分かります.

 ここで,考えなければならないのは,どの位の出現頻度までを取り扱うかということです.これをやらないと,たった1回しか出現しなかった言語まで処理することになるからです.

 これを見ると,出現頻度が3回以上の言語を処理の対象とした方がいいみたいです.そこで次に,共起ネットワークを作成してみましょう.

 共起ネットワークは,共起関係にある言語を調べるためには便利です.

 共起ネットワークは,共起関係にある言語を調べるためには便利です.

 矢印の箇所を確認してください.この設定で共起ネットワークを作成すると次のようになりました.

 これを見ると,「水」を中心に紫色のノードでつながれた言語の関係が特徴的であることが分かります.これは,水を凍らせたときに,体積が大きくなることを記述した箇条書きが多く見受けられたことを表しています.その他,赤色のノードでつながれた言語群は水の三態変化を中心とした関係性を示しています.特に,固体・液体・気体関連のJaccard係数は,[固体]0.58[気体][固体]0.63[液体][液体]0.63[気体]となっていることから,固体,液体,気体の順に箇条書きに書かれている場合が多いことを示しています.0.580.63は相当強い共起関係となります.

 次回は,記憶再生マップを描いた後に,それを見ながら書いた箇条書き(b)から共起ネットワークを作成してみましょう.なお,次回のブログ更新サイクルは,早くしたいと思いますのでよろしくお願いします.

 

記憶再生マップをどう料理するか

 いつもお読みいただきありがとうございます.

 このブログは,記憶再生マップを描かせることの効果を,20218月に以前在籍していた学会の年会で発表した内容をもとに説明するために書いています.

 この数回は,児童の概念形成には時間が必要であることや情動面での刺激が記憶にはよい効果を与えること,授業内容はストーリーを成していること,さらに,誰でも書ける感想からその児童の理解の程度が推測できることなどを書かせていただきました.いずれも本校での実践ですので,一般的な地方の学校でも実践可能です.

 記憶再生マップは,その児童・生徒がそれを描いた時点でどのような構成概念を持っているかの凡そを表したユニークな表現物ですから,その読み取りには時間がかかります.

 今回は記憶再生マップの実際をご覧いただきたいと思います.

 この記憶再生マップは,つい最近,5年理科「ふりこの動き」で児童が実際に描いた記憶再生マップです.

児童が描いたふりこの動きの記憶再生マップ

drive.google.com

 この記憶再生マップを見ると,緻密に記憶が概念化されている児童と,そうでない児童が同じクラスにいることが分かります.このクラスの成績は,記憶再生マップを描いてから1週間後に行った評価テストでも,テスト業者が設定している期待値よりも高い点数を出しています.

 ただ,記憶再生マップの効果をこのテストで検証することは不可能です.なぜなら多くの児童が,記憶再生マップを描くことで,獲得した知識を評価テストよりも詳細に構造化しているからです.

 なお,これらの児童の成績ですが,2,4,5,9番目の記憶再生マップを描いた児童は100点でした.また,よく描いているようにみえても間違っている児童の到達度は,70-79点の得点でしたが,この児童が最も低い点数でした.さらに欠席等で記憶再生マップの記述の経験をしていない児童は,60-69点の範囲でした.

 記憶再生マップの本当の意味を言語化するのは,作成した本人しかできません.そのようにして作成された文章が,その児童の構成概念を言い当てています.また児童らは,書いたそばから練習なしに記憶再生マップを声に出して,または呟いて読むことは,本校に限らず他の小学校の児童誰でもができます.このようなことは,指導する教員のみが知り得ることで,大学等の研究者の方々は実際に見ておられませんが,私自身が博士号を持つ小学校の教員ですので,研究者の目でいつも児童の発話を観察しています.しかも,専門的には認知科学を研究していますので,私が聞く児童の発言やつぶやき等々も,記憶再生マップの記述に照らし合わせながら,その児童の脳での思考過程を踏まえて判断しています.

 さて今回の話は,このように教育的な効果がある記憶再生マップの内容を,「できるだけ客観的に解析する方策」について明らかにするという筋書きのもと,児童の学習行動から得られる解析データは何であるかについて述べているところです.

 記憶再生マップのような表現物を,直接解析することはかなり難しいと言えますし,できたとしても相当な時間がかかります.従って学校現場で利用するとなれば,授業を行う先生方がもっと短時間で解析できるデータが必要になります.それが記憶再生マップを見て児童が書いた箇条書きということになります.間接的ではありますが,児童は記憶再生マップを描いた直後に,それを声に出して読むことができるので,児童が学習によって構成した概念と同じである考えられます.

 つまり,児童が描いた記憶再生マップの評価は,それを見て文字に起こした箇条書きで評価することにしました.これならば,テキストマイニングでより詳しく調べることができます.

 次回からは,このような文字に起こした児童の表現物をKH Coderで解析する手順等について紹介します.

最後に・・・・・ 

今話題になっているChatGPTを使って,記憶再生マップの教育利用について聞いてみました.

Q. 記憶再生マップの教育利用について調べてください.

A. 記憶再生マップは、情報をビジュアル的な形で整理し、脳がより効果的に情報を処理することを支援するツールです。これは、教育分野で幅広く利用されています。
教育現場では、記憶再生マップを使って、学習内容を視覚的に整理し、情報の階層構造を理解することができます。また、複雑なトピックを理解する際に、脳の処理を助けるために記憶再生マップを使用することができます。
教師は、記憶再生マップを活用して、学生の理解度を評価し、教育の質を向上させることができます。学生は、自己学習やレポート作成などの活動で、記憶再生マップを使用して、学習内容を整理し、自己評価を行うことができます。
また、オンライン教育においては、記憶再生マップを用いた教材が提供されている場合もあります。これにより、学生は自宅で自己学習を行う際にも、より効果的な学習を行うことができます。
総じて、記憶再生マップは教育現場で幅広く利用され、学習内容の整理や理解度の評価などに役立つことが期待されます。

 

ちょっとひと休み(実際の授業のデータです)

 前回,自由の中にこそ,本音ありというまとめを行いました.

 自由に書くことができるから,嬉しかったことを書いた子や分かったことを書いてみようと挑戦した子,一生懸命に頑張ったけど自分には難しかったと先生に伝えようとした子やどうしても書けなかった子など様々です.

 「学習で意識したことを書きましょう」や「身に付いた力を書きましょう」など,児童にとって難しくなければ,教師が知りたい内容に絞って書かせればいいし,それは授業者が判断すればよいことです.

 私は自由に書かせる中で,「この児童は授業を通して,○○が身に付いたようだ」などと判断したほうが自然だと思います.

 実際,児童の分かったを読み取ることは難しいことなのです.分かったと書いても,説明できなかったので分かっていなかったこともあります.「分かった」の捉え方が違うからです.つまり言語理解の問題でもあります.このことに関しては,私の博論を読んで頂くと丁寧に説明しております(^^;)

 感想を書かせることで,その子にとって授業がどうだったかが分かります.それで,全体としてどの程度理解したかを知る訳です.

 色々言っても実際はどうだとお考えになっていると思いましたので,つい最近行った実験の授業で児童が書いた「感想」の例を示します.

 4年「もののあたたまり方」の授業です.(R51月実施)

 実験の内容は,銅製の棒と板を使い,金属がどのように温まっていくかを調べるものです.一般的には蝋(ろう)を金属に塗り,実験用ガスコンロを用いて熱の伝わり方を調べる方法が行われます.しかし,実験用ガスコンロは火力を最小に調整しても,この実験で使うには火力が強すぎることと,蝋は火が付くと燃えるので危険です.そこで,熱源はアルコールランプを用い,蝋の代わりに市販の示温インク(サーモインクペースト)を使いました.同時にマッチやアルコールランプの使い方の指導を行いました.

こんな実験です

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【実験の目的を意識した感想】※ひらがなを漢字に変換しています.

(1)熱の伝わり方をある程度書いている児童.(金属の温まり方について言及している児童で,実験の映像を記憶しています)

・③だけ私の予想が外れていました.私は,熱は低いところに伝わると思っていて,高いところには行かないと思っていました.そしたら,②と同じように左右に広がっていたのが驚きました.マッチの正しい使い方を知れてよかったです.(②は棒の中央を熱する実験で,③は棒を斜めにしてその中央を熱する実験です.)

ノート1

・金属の棒を熱すると,熱を当てたところから遠いところに順に熱が伝わることやマッチの使い方が分かってよかったです.

・金属の棒を斜めにしてすると,左右に色が変わっていることが分かってよかったです.

・金属の棒は,端っこから真ん中のところに行ったり,両方に行ったりしていて,金属の板は熱が広がっていっていたことが分かりました.

・真ん中から当てたら,左右に色が変わる.

・金属は熱を当てたら,その当てたところから熱が広がるんだなぁと思いました.

・板と棒の温まり方がほとんど同じで,板は日が昇るみたいだった.棒は,消しカスになるみたいだった.

・熱を当てたところから遠いところにくることを初めて知った.火をつけるのが怖かったけど楽しかったです.

・熱が伝わると,遠くのところに行くと知れてよかったです.

・温まったら広がることが分かりました.

・熱を金属のものを傾いておくと全部に広がる.

・熱が色々な動きをして楽しかった.

・広がり方が分かったから楽しかった.

・金属の温まり方が知れてよかったです.マッチも使えたので嬉しかったです.

(2)色の変化について書いている児童.(特に色の映像が記憶に残っている児童です)

・青いほうがピンクになった.

・色が変わって面白かったです.またやりたいです.

・ピンクが90℃以上になるという事が分かっていきました.嬉しかったです.

・40度以上になるとピンクになるという事が知れてよかった.

 

【マッチやアルコールランプの使用に関する感想】

(3)火を扱った実験について書いている児童

・火をつけるのは怖かったけど,火をつけて実験も楽しくできてよかったです.

・今日の実験は,マッチを使うけど,1回したから余裕でした.

・今日はアルコールランプを使って実験をしました.色々な事が知れてよかったです.

・アルコールランプは,ひもを調節すると,火が小さくなったりする.

・マッチを初めてつけた時,すごかったです.

・マッチを使えてよかったです.

・マッチが前まで怖かったけど,この授業のお陰で火のものが怖くなくなったのでよかったです.鉄の棒を当てて実験ができたのでよかったです.

ノート2

・初めてマッチとアルコールランプを使ってとてもすごかったです.金属の棒の温まり方が不思議だなぁと思いました.

・昔の人たちは,この金属棒にろうをぬって授業したことが分かった.

・今日は,学校で始めてのマッチだったけど,先生の言うことを聞けば,ちゃんとできると分かりました.

・注意して実験に取り組めました.

・初めてマッチを使ったのでよかったと思いますが,これから使うときも注意したいと思います.

・マッチをつけて,アルコールランプにつけれた.それで,マッチの怖さもちょっとなくなった.

・今日は火をつけることをしたんですが,今まで火が全然つかなかったけど,最後は一発で火が付いたので嬉しかった.

・火を付けるのが楽しかったです.

・マッチを使って楽しかった.

・火を付けるときに注意してきたのでよかったです.

・マッチ前回よりも使えるようになって嬉しかったです.

・袖に付かないように注意して,火を付けたりアルコールランプに付けたりして,とても楽しかったです.

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 実験では,全員がマッチを扱えるようになりましたし,アルコールランプの安全な使い方も実習できました.

 (1)(2)の感想から,児童の約半数が金属の温まり方について理解しつつあることが読み取れます.また,(3)のように半数がマッチを使った実験について書いていることから,今後の実験を行うための実験技能の習得が,ある程度はできたと考えられますので,次の授業の初めに記憶想起を行い,この学習のまとめをしたいと考えています.

 今回もお読みいただきありがとうございます.

 

児童の「分かった」をどうしたら分かるか

 前回は,「児童は,前回の演劇を今日理解し,これから始まる演劇の意味に気づく」と書きましたが,当然ながら単元の学習は,常に過去の学習を記憶想起しながら,新たな学習が始まるというシナリオで日々の授業が展開されます.

 授業の終盤には,1単位時間の顛末を言語でまとめることがあります.所謂,分かったことや結論ですが,この時点で全員が理解していればいい訳です.しかし,児童が学習内容を理解するタイミングは,これまでも述べたように個々人で異なります.理科の授業を例に言えば,実験がメインの授業なら,その結果は児童が「見たまま」ですので,「〇〇になった」などという言語の表現には多くの児童が納得します.しかし,その結果が得られた訳を説明することが全ての児童・生徒にできるかは別問題です.

 もし,そのことを要求するならば,実験結果に至る原因と結果の因果関係が重要となり,実験をするようになった原因(理由)も含めて,実験結果が得られるまでのストーリーを完全に自身の脳で再現しなければなりません.児童自身が,納得に至らなければ,言語でまとめた板書の内容も宙に浮くことになります.つまり,教師が授業内容をまとめたつもりでも,そのまとめの言語は,ある児童にとっては何の意味も持たない文字列でしかありません.

 児童・生徒の理解に至る時間が個々人で異なるのなら,無理して1単位時間にまとめまで行う必要はありませんし,その方が教師にとっても気が楽です.私が小中学校で指導した30年以上の経験を思い出しても,全員の児童・生徒が1単位時間の学習内容を全て理解したことなど皆無に近いと思います.つまり1単位時間の経過後に,全ての児童・生徒が同時に理解に至るというロジックは,決して正しいとは言えないと考えます.ただ,少人数授業などのように,その可能性を高める工夫はありますが,日本の規定された1学級の人数では,かなり難しいと考えます.1学級の人数を少なくすることが,学習内容を理解する児童・生徒の割合を高めることはあっても,全員を理解に至らしめる最適解にはなり得ないということです.

 では,1単位時間での終盤には,どのような学習行動を課せばよいのでしょうか.よくやられているのが「分かったこと」を書かせるという学習行動です.しかし,分かっていない児童にとっては書く材料が見つかりませんし,分かっていないのに分かったことは書けません.

 このようなときに,児童にとって最も負担の少ない課題は「感想」です.所謂,自由記述で「何でもよいので書いてみましょう」とするのです.自由記述ならば,分かった喜び,教師に対する説明,自分が見た現象面に対する驚きや感動,疑問など多種多様な書き込みが見られることになります.一見すると,様々に書かれている内容ですので,評価が大変に思えますが,学級集団の理解の程度を知る上では,貴重なデータです.

 実際に授業で,「感想を書きましょう」と言えば全員が書くことができています.学習があまり得意でない児童でも,驚いたことや嬉しかったことなど何か書きます.理解した児童は,論理的な文章を書くことができます.不思議だったことや疑問点を書く児童もいますし,「よく分からないけれども,たぶんこうだ」と推測めいたことを書く児童もいます.このような感想は児童の本音ですから,その時点での理解の程度が読み取れますし授業の反省もできます.

 鉛筆で自由に書く(描く)喜びを味わわせることで,今は分かっていない児童も,この後の記憶再生マップを自由に描くようになり,描いたときに事の次第に気づくようになってきます.

 分かる時までもう少しです. 今回のここまでの取りあえずのまとめは,

自由の中にこそ,本音あり

ということになります.

 今回はここまでです.お読みいただきありがとうございました.