記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

言語の壁が阻む学び:概念形成における教師と児童のズレ

 9月になり,朝晩は少し涼しさを感じるようになりました.

 さて,今回からは,私の博論を紐解いていきながら,最終的には記憶の再生(想起)が学力向上に重要であることを示していきたいと思います

 ちなみに,博士論文では,その性格上,世界で誰も書いたことが無い唯一無二の内容を記述しています.つまり,これまで,誰も論文にしたことのない実践と言うことになります.

 

 回は,「学習者の概念形成における一般的な現行授業の問題点」についてです.

 前回紹介した佐賀新聞の記事によれば,佐賀県教育委員会は県学力向上対策検証・改善委員会で,小・中学校共に「考察して意見を説明する力に課題がある」と問題点を割り出しています.

 新聞記者が書いた内容によれば,この委員会で話し合われた改善策は,「授業以外の活動でも,児童・生徒が主体的に考えて取り組む必要性」を確認するということらしいです.話し合いの記録を読んでいないので何とも言えませんが,「授業によっては,育成できなかったので,他の場面でもやってみよう」ということでしょうか.しかし,先生方もお分かりのように,これは解決策ではありません

 

 少なくとも,「考察することができなかった」,「意見にまとめることができなかった」,「説明することができなかった」と3つの弱点が浮かび上がっている訳です.これらに対して,どのような改善策が考えられたのでしょうか.

 

 間の社会生活は,コミュニケーション,すなわち情報のやり取りで成り立っています.学校教育も例外ではありません.それならば,その視点で話し合いをすべきでした.

 私の博論では,学習者の概念形成における一般的な現行授業の問題点の第一歩として,「人間が持つ言葉の概念」の問題を取り上げています.(p14)

 

 題点(1) 教師の言語概念と児童・生徒の言語概念が違うと,コミュニケーションは成立しづらい.

 教師は,自身の言語概念を児童・生徒が獲得していると思って発話するが,児童・生徒がその言語概念を持っていない場合は,それ以降の授業による学習内容の概念形成を阻む要因となる.

 

 教師は,自分の話す言語を児童・生徒が理解すると考えて発話します.

 

 しかし,児童・生徒のスキーマは教師のそれと異なるために,場合によっては教師の発話内容が伝わらないことも考えられます.

 

 従って,教師は児童の表情や反応により発話内容を変えたり,ジェスチャーを用いたりしながらコミュニケーションを図る必要が生じます.

 

 の体験ですが理科の授業で,食塩や砂糖などを水に溶かす学習があります.

 

 私が「とける」という言語の意味を児童に尋ねた時,5年生の約8の児童が,「アイスクリームがとける」,「ろうそくがとける」,「チョコレートやチーズがとける」など融解(ゆうかい)のイメージで理解していたことがありました.

 

 

 しかし授業の内容は,食塩や砂糖などを水に溶かす実験を行う溶解(ようかい)であったために,言語と概念の整理を行ってから単元の内容に入った経験があります.

 後で聞いたのですが,児童たちの中には,食塩や砂糖などを水に溶かすという経験をしたことが無い子が,かなりいました.そういえば,家庭でジュースを飲む場合,昔は水にジュースの粉を溶かしていましたね.

 

 

回は,第2の問題点についてお話します.