記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その⑦

今回は,【授業の終末】について考えてみたいと思います. 前回お話した授業のストーリーですが,先生お一人お一人で異なる文脈であるはずです.めあては同じでも,展開は学級ごとに異なるのが普通ですからね. 授業の終末の脳内 学習が大詰めを迎えると,授…

授業における知識の形成過程 その⑥

今回は,学習の【活動後期】について児童・生徒の脳内で,どのようなことが行われているかについて考えてみたいと思います. まず,活動前期と後期では何が違うのでしょうか. 色々な教科の様々な単元で,先生方の計画もお一人お一人で異なり,児童・生徒の…

授業における知識の形成過程 その⑤

今回は,「一般的な授業における知識の形成過程」の話題に話を戻します. 授業における知識の形成過程についての話ですが,これまで次の3つを紹介していました.学校は,学習内容に直結した意味のあるエピソード記憶を形成させるところですから,教師の発話…

スキーマと学習の関係

これまで,ルメールハートとノーマンの解説をもとに,スキーマの説明を行ってきました.このことを踏まえて児童・生徒が持つスキーマと学習の関係をどのように捉えたらよいのでしょうか. これは一言でいえば,「スキーマは,学習の知識構造」ということにな…

スキーマとは⑤後編

これまでのスキーマの解説を時系列で配列し直しました 今回は,スキーマの特徴⑤後半です.ルメールハートとノーマンの解説の後半のセンテンスについて説明します. このブログをご覧の皆様は,どのように解釈なさいましたか. 「ボトムアップとトップダウン…

スキーマとは⑤前編

いつもお読みいただき,ありがとうございます. 今回は,スキーマの特徴⑤の前編です.大変に分かりにくい内容ですので,前編と後編に分けて説明します.この特徴⑤は,スキーマの働きに関するものです.脳に入力された情報に対して,スキーマがどのように解釈…

スキーマとは➃

最初にお断りです.前回の最後に,今回はスキーマの特徴④と⑤を合わせて紹介するとしておりましたが,特徴④の内容が,簡単に説明することができないと判断したため,特徴⑤は次回とします. 今回は,スキーマの特徴④を紹介します. スキーマの特徴④ 「スキーマ…

質問に答えます(2/4)

皆さん,こんにちは. 前回はスキーマがスロットを持っていることについて紹介しました.今回は,ある先生から次のような質問を受けましたので,その質問に答えたいと思います. 質問「スキーマについては,徐々に分かりつつあるのですが,これらをどのよう…

スキーマとは③

皆さん,こんにちは.今回もスキーマの特徴について紹介します. その前に,前回の復習ですが,まずは,スキーマはあらゆる種類の知識を表現しているという事と,それらが様々な関係性でリンクしているという事です. 今回も,ルメールハートとノーマンの解…

スキーマとは②

前回は,スキーマの概要とも言える話でした.私たちは,様々なスキーマを持ち生活していますが,これらは個々人で違います.しかし,学習で児童・生徒が獲得した知識が貯蔵されたスキーマは,同じクラスメートならば,ほぼ同じものであることが理想です. で…

スキーマとは ①

これまで4回,授業による知識の形成過程について書きましたが,そもそもスキーマとは何かという疑問を持たれている方もおられると思いますので,今回から数回は,スキーマについて説明します. なお,スキーマについては現在は,様々な分野で広く用いられて…

授業における知識の形成過程 その➃

2024年になり1週間が過ぎました.明けましておめでとうございます.いつもお読みいただきありがとうございます.年が明けて色々なことがあり,ショックも大きいのですが,今年も私にできることを頑張っていこうと思います. 今回は前回の続きとなります.学…

授業における知識の形成過程 その③

2023年もあと2日です.今年も多くの方にご覧いただき感謝申し上げます.現在,寸暇を惜しんで続きを書いておりますが,少々長くなっておりもう少し時間を頂きたいと思います.手前みそですが,たぶん教育学部では,あまり学ばないような話になると思います.…

授業における知識の形成過程 その②

前回の内容は,授業のはじまりにおける児童・生徒の脳内を探ってみました. さて,授業が始まると,ほどなくして指導される先生からの何らかの働きかけがあります. 様々な教科及び単元で,それらは工夫をされて提示されますので,ここではどのような教科に…

授業における知識の形成過程 その①

前回までは,学習において記憶想起することの大切さについて,私の実践を例に説明しました. 記憶再生マップは,そのような記憶想起の集大成として単元学習が終了した時点でエピソード記憶の想起を行い,それらのつながりを俯瞰し学習の意味づけを行い,表現…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その⑥

前回の内容を読んで,「なぜ1時間(45分)の終末に学習のまとめを用意していないのか」と疑問を持たれた方も相当数いらっしゃったと思います.しかし,45分で全員が理解すると考える方が奇妙な事のように思えてきます. 記憶の研究から言えば,記憶を確かなも…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その⑤

多くの方にご覧頂き感謝いたします.本ブログで発信している内容は,実際に私が行った授業をもとに構成しています.今回は前回の続きになります. なぜ,まとめを保留にするのかということですが,ちょうど1年前に次のような内容を投稿していました. www.k…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その➃

前回は,授業の初めに以前の授業の内容を記憶想起させると,児童はReady状態になるということを書きました.これは,強制的に記憶想起させていることになりますが,児童の記憶はあまり消失していないので無理なくできますし,何よりも学術的知見に基づいた学…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その③

やっと退院しました.10日間の入院でした.入院中の食事は,ほとんど全粥だったので若干のダイエットになりました.しかし,粥が嫌いになってしまいました. さて,ここでの問題は,直前の授業で何がなされたかをきちんと記憶想起させているかどうかです.な…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その②

記憶の再生について考えるブログ-別版-(10/23) 現在,入院中ですが経過も良く,もうじき退院できそうな状況です.私の病気は,胆嚢胆石症で,入院してすぐに胆嚢を摘出しました.現在は,Cチューブなるものがまだ刺さっていますので,造影剤検査の後に引き抜…

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.

多くの方にこのブログをお読みいただき感謝申し上げます. 成績が伸びないのなら指導の仕方を変更をするべきである,という佐賀新聞への投稿を紹介したところです.そこでこれからは,なぜ学際的な視点で授業を分析していかなければならないのかという話題と…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その⑤ ~ 生成AIの正しい(?)使い方 ~

(New) 記憶の再生について考えるブログ-別版- 【前回】 生成AIの教育利用は,利用規約の順守や個人情報保護への配慮など課題がある.また,機械学習機能のブロックにより,AIが進化しにくいという問題もある.文科省は,これらの課題を踏まえて,パイロット…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その④

【前回】 生成AIの批判的思考力や創造性、学習意欲への影響に関する懸念は、AIに対する過大評価によるものである。生成AIは将棋などでは人間を上回る成績を出すが、他の面では人間を完全に代替することはできない。生成AIを神の声のように思い込むと、批判的…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その③

【前回の要約】 生成AIの登場は,情報通信機器の普及と学校教育の結びつきに対して,リスクが指摘されています.偽情報や個人情報流出などの懸念が,AIの機械学習に起因しています.ただし一部利用者は,このような報道に対して懐疑的な意見を持ち,AIについ…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その②

【前回の要約】 ガイドラインの4ページでは、有識者に対するヒアリングの過程が分かる。最初には生成AIの仕組みと情報活用能力の結び付けが議論され、これは過去のパソコン導入と類似。当時の流布した「何でもできる」という考え方とCAIの広まりが関連し、私…

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その①

7月18日に文部科学省から,「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が出されました. 生成AIについては,特に今年度になって認知度が高くなり,教育への利用が議論されています.本ガイドラインは,ネット社会での利用拡大の…

授業のことをもっと思い出そう.(理解と脳の関係)

今回は,意味を持つ言語のイメージが脳内でどのように配置されているかを考えてみたいと思います.これは5月4日の記事で予告した内容です.まず話の前提として,この話のルーツは,2018年6月に公開された自分の博士論文「小学校理科教育における指導方略の研…

生成AI利用に関する文科省指針案に思う

梅雨ですが,私が住む地域では降水量がいつもより少ないようです.こんな時は,これまで梅雨の末期に大雨になることも多かったので不安になりますね. これまで,2回にわたって生成AIについて書きました. ちょうど今朝(6/23)の新聞に,「文科省から生成AI…

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)②

今回も生成AIの続きで,国語の授業を想定してみました. 超有名な教材です.4年「ごんぎつね」の授業中を想定してみましょう. 学習環境は,タブレットを児童が使うことを前提として考えます. 場面は,兵十のおっかあが死んで,その葬列が歩いてくる場面で…

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)

「生成AIは,児童の学習を評価できるか」ということで,ChatGPT , Bing , Bardの3つについて同様の課題を与えてみました.これらの箇条書きは,小学4年生が理科の最終単元「すがたを変える水」の学習直後に本当に書いたものの半分です. 半分にした理由は,…