今回も生成AIの続きで,国語の授業を想定してみました.
超有名な教材です.4年「ごんぎつね」の授業中を想定してみましょう.
学習環境は,タブレットを児童が使うことを前提として考えます.
場面は,兵十のおっかあが死んで,その葬列が歩いてくる場面です.ごんは,六地蔵さんの陰に隠れて見ていました.人々が通ったところには,ひがん花がふみ折られていたという場面です.
よく授業では,児童が登場人物の心情を読み取ることが主要な学習行動として設定されることがあります.
最近では,単元当たりの授業時数の減少で,じっくりと心情を探る授業がなされないケースも目立ってきました.明らかに詰込みだと思わざるを得ませんが・・・・・.
今回の設定は,登場人物の心情を読み取ることがメインの学習行動です.
参考までに,タブレットなしの授業も考えます.
【想定授業開始】
① これまでの授業の一例
予め本文を印刷したプリント等の叙述の横に,赤や青などの色で線を引き,その色を引いた根拠等を児童が記述する.または,宿題等で事前に書き込んでおく.(心情色彩法などと呼ばれています.)
教師の指示に従い,物語を時系列で追いつつ,児童が自身の書き込みを発表し,教師が発表された内容によって話し合いを進めていく.※この進め方あたりが,指導能力に関係してきます.教育系の大学などの授業で,実際に訓練しておかれると現場は助かります(^^;)
(このような授業では,事前に教師が児童の書き込みを確認しておくとある程度はスムーズに授業が進行していく.)
② 生成AIを使った授業の一例
(児童の手元にはタブレットがありネットに接続しています.)
もし,生成AIが授業で使えたならば・・・・・.
今回は前回の児童の書いた内容の評価でいい感じだったBardを使用してみました.
タブレットを使っても「鉛筆で書く」ことは必要で,おそらく①と同じような授業の中の一人調べなどの個別学習で,生成AIが使われるのだろうと想像します.
ある児童が・・・・
『小学校国語の授業中です.4年生の「ごんぎつね」の授業で,「ひがん花がふみ折られていました.」という文章がありますが,ここには登場人物の心情が込められていますか.』と問いかけました.(※全体として,生成AIを授業で使うのでしたら,小学校学習用の生成AIなどのカテゴリーが必要になると思いますし,イントラネット内で動くAIが欲しい気がします.)
するとBardは・・・・(※現在のバージョンです)
【はい、登場人物の心情が込められています。「ごんぎつね」の主人公であるごんは、兵十という少年にいたずらをします。兵十の母親が亡くなったとき、ごんは兵十の母親の墓を訪れます。しかし、兵十の母親の墓の前に植えられていた彼岸花が踏み折られていました。この場面で、ごんは兵十の母親の死を悲しんでいる気持ちと、兵十にいたずらをしたことを後悔している気持ちが込められています。
ごんは、兵十の母親の墓を訪れて、兵十の母親に謝罪したいと思っています。しかし、ごんは兵十に謝罪する勇気がなく、彼岸花を踏み折ることで、自分の罪を償おうとしています。この場面は、ごんの複雑な心情がよく表れている場面です。ごんは、兵十にいたずらをしたことを後悔していますが、兵十に謝罪する勇気がありません。ごんは、彼岸花を踏み折ることで、自分の罪を償おうとしていますが、ごんの罪は彼岸花を踏み折るだけでは償えません。ごんは、兵十に謝罪することで、自分の罪を償う必要があります。】
という回答を児童に返してきました.
まぁ,叙述をもとに考えるとある程度めちゃくちゃですが生成AIも,ひがん花がふみ折られていたという叙述には,心情が込められていると返答してきました.
生成AIを利用しない場合と何が違うかと言えば,児童の思考を助けています.つまり,今までは何も発想できなかったところに,ひょっとして気持ちが込められているかもしれないという当てずっぽう的問いかけに,生成AIが「気持ちが込められている」と返答したのです.
しかし,よくよく生成AIの返答を読んでみると,兵十の母親が亡くなったときにごんが墓を訪れたという返答は,叙述と整合性が取れません.また,兵十にいたずらをしたことを後悔している気持ちが込められていますと言うのも早すぎるような気がします.
つまり,現在のバージョンの生成AIでは,この程度という事になり,批判的思考で自分の思考の糸口にする程度の使い方ができるという事になります.
世の中が,生成AIを万能の回答者のような歓迎ぶりでネットを賑わしています.しかし,ChatGPTは研究機関であるOpenAIの永遠なるプロトタイプであると,専門家である畠山大有氏(Microsoft Japan)は述べています.
従って今は,生成AIを授業にどのように利用できるかを議論するほうが先だと思います.
今回はここまでです.
丁寧にお読みいただきありがとうございました.