記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.その➃

 前回は,授業の初めに以前の授業の内容を記憶想起させると,児童はReady状態になるということを書きました.これは,強制的に記憶想起させていることになりますが,児童の記憶はあまり消失していないので無理なくできますし,何よりも学術的知見に基づいた学習行動となっています.

(学術的根拠は,この論文です.Nader, K., Schafe, G.E., & Le Doux, J.E. (2000).
Fear memories require protein synthesis in the amygdala for reconsolidation after retrieval. Nature, 406(6797), 722-6.)

 例えば,「〇班の結果は,〇gだったよね」や「〇さんが,〇と発言したのを覚えていますか」など具体的に示してあげると,「ああ,そうだったね」や「〇さんの意見で盛り上がったね」など,授業で行ったことを懐かしく話す児童が続出することもあります.

 もうそれだけで,ほぼ全ての児童のモチベーションが上がり,学習で経験しなければならなかった内容に関するスキーマをある程度は揃えられるわけです.スキーマは,長期記憶に保管されている知識の集合体の意味です.

 教師は,児童に記憶想起をさせているときには,できるだけ発言を控えて,多くの児童に自由に表出させることに専念することが肝要です.多くの児童が一斉に発言する場合もありますので,それらの発言で明らかに間違いの発言についてのみ,「〇については,それでよかったかな」などの助言をすると児童自らが修正する場合も見られます.

 次は4年生「ものの温度と体積」の例です.前回の授業が導入で,空気を閉じ込めたペットボトルをお湯や氷水に浸けた時の印象を記憶想起させました.そこから,空気の体積が,空気の温度変化でどのようになるかをしっかりと調べようという意識を持たせ,めあてを決定させています.板書をよく見ると,結果の後は児童ひとり一人の感想書きで終わっています.つまり,まとめは保留状態です.なぜかお分かりになりますか.

4年 ものの温度と体積 板書例

 ※穴埋め式のノートを利用されていることが多いようですが,書けなかったら書く訓練をする必要があります.私は,全て書かせています.つまり,鉛筆をより多く動かすように指導しています.