記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その➃

 2024年になり1週間が過ぎました.明けましておめでとうございます.いつもお読みいただきありがとうございます.年が明けて色々なことがあり,ショックも大きいのですが,今年も私にできることを頑張っていこうと思います.

 今回は前回の続きとなります.学習の初期に先生によって提示されためあてについて,児童・生徒がその意味記憶を形成した直後の脳内で,何が起こっているかについて探ってみたいと思います.

めあて提示直後の脳内の様子

 今回の内容は,授業で児童を観察していると,全ての児童たちが行っている訳ではないのですが,確かにすぐに反応する児童もいるのです.その点をご理解いただきお読み下さい.

 小学校の先生方は,様々な教科を指導されますので,幾つかの教科について説明させて頂きます.今回は,国語科でよく用いられる次のような学習のめあてについて考えてみたいと思います.

 めあて「〇〇する〇の気持ちを読み取ろう」

 これは,物語文などで,登場人物が,あることをするときの心情を探るときなどに用いられるめあての例です.

 例えば,「ごんぎつね」において,「月夜の晩に,兵十の影ぼうしをふみふみついていくごんの気持ちを読み取ろう」などをめあてとする場合があります.

 それでは,児童・生徒が学習のめあての意味に納得すると,脳内では学習が始まるまでに何が起こるのでしょうか.

 この時間は,極めて短時間で,しかも先生の発話を聞きながらという状況が多いと思います.先生がめあての提示後,次の段階に学習を展開するために発話するまでは,ほんの僅かな時間です.この間に,自己のスキーマを検索する児童・生徒がいますスキーマは,以前の説明では心象や概念と書きましたが,もっと詳しく言えば,手続き的記憶と宣言的記憶を包括したあらゆる知識を表象したものと考えられています.つまり知識の集合体という捉え方でよいと思います.また,スキーマを検索するとは,何かの答えを導くために意識的に記憶想起を行うことを意味します.その対象がスキーマです.

 スキーマの概念については,連載を中断して,次回に詳しく絵図を用いて説明します.それまでは,Web等で他の方が書かれた内容等を読まれておいて下さい.

 児童・生徒は,めあての意味に納得した瞬間から,自身のスキーマを検索し,記憶想起した結果の中で適切と考えたエピソードや知識などを,これからの学習行動に利用しようと考えるのです.

 スキーマにある概念化された知識(性質的には意味記憶)は,意識することなしに記憶想起され,すぐにでも学習の見通しを得ることができます.ところが,めあての意味と関連したエピソードは,意図的に記憶想起をしないと表象されません

 今回の例では,ある児童が「登場人物の気持ちを読み取る」というめあてに納得し,「赤ペンや青ペンを使いワークシートに線を引き,その色をもとに(=根拠として)気持ちを読み取ろう」などとすぐに学習行動の糸口を考えるのは,スキーマを検索することによって,同様の方法で過去に学習が上手くいったという成功体験のエピソードを記憶想起した結果であると考えられます.

 この場合,過去にペンを使って登場人物の心情を読み取ったエピソードがそのまま記憶想起されるのではなく登場人物の気持ちを探るためには,赤ペン,青ペンを使う』という意味記憶無意図的に想起されます.従ってこのような児童は,赤ペンや青ペンを使って調べるという学習行動の見通しを,自然と想起することができるのです.

 このような記憶想起は,手がかり再生とも考えられ,このことから言えるのは,当然ながら学習では成功体験が重要であるということです.成功体験を積むことで,その行為の価値がスキーマの中に概念化され,必要なときに記憶想起されるようになるのです.

 これは,よく先生方が言われる「学び方を身に付ける」ということと同じです.ですから教師は,指導の過程において,または評価の段階で称賛の言葉を投げかけたり,表現物に花丸などを付けて返却することが重要であることがお分かりいただけると思います.

 まとめると,学習では,色々なことをできるだけ経験させることが重要であるという事です.そうすることにより,あることをするにはどうすればよいかという事に関しての解を,スキーマの内容として意味記憶の形で保管することができるからです.

 

言語の説明

めあて:授業で児童・生徒が為すべき内容を,児童・生徒を主体として分かり易く提示したもの.児童・生徒の立場になって書かれることが多い.

スキーマ:心象や概念を包括する心的な枠組みのこと.知識の集合体.

手続き的記憶:どのようにするのかに関する知識の記憶.例えば,パソコンの起動の仕方に関する知識の記憶.

意味記憶:一般的な知識として形成される記憶,例えば,地球は丸いという知識の記憶.

学び方:授業の中で,学習のめあてを達成するために,児童・生徒が行う学習行動のこと.

赤ペン・青ペン:嬉しい,楽しいなどの登場人物の心情と赤色を結び付け,逆に悲しい,寂しいなどの心情は青色と結び付けることによって物語文を読み解く手法の一つ.児童は,本文を読みながら,直観的に赤や青のサイドラインを引き,その色を引いた根拠となる叙述について自分の考えをノート等に書き込んだり,その内容を発表するなどして学習を進めていく.

 

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