記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

スキーマとは⑤後編

これまでのスキーマの解説を時系列で配列し直しました

 

 今回は,スキーマの特徴⑤後半です.ルメールハートとノーマンの解説の後半のセンテンスについて説明します.

 このブログをご覧の皆様は,どのように解釈なさいましたか.

 

ボトムアップトップダウンのプロセスは繰り返され,新しい入力の最終的な解釈は,どのスキーマが入力された情報に最も適合するかによって決まる

 

 これは,この後に述べられているピクニック・スキーマの例を読まれると,ご理解いただけるかと思います.このセンテンスで理解が難しいのが,「ボトムアップトップダウンのプロセスは繰り返され」というくだりで,ボトムアップのプロセスと,トップダウンのプロセスとは何かを理解することが肝要です.

 ボトムアップのプロセスとは,感覚器官からの情報の入力に相当します.例えば,目からの映像の入力であったり,耳からの音声の入力であったりします.この入力に対して,トップダウンのプロセスとは,ボトムアップされた情報を解釈し回答を提示することです.そのときに,どのスキーマが使われたのかが重要となり,物事の理解につながるのです.

 感覚器官からの情報は脳に伝えられますが,どの感覚器からの情報でも性質(電気的な信号)に変わりはありません.それでも脳は,どの感覚器からの情報かを正しく判断します.つまり音であったり,映像であったりしても情報の信号としての性質は同じなのです.しかし脳は,その情報が如何なる経路を経てやってきたかにより,どのような情報かを判断し,その情報に合った回答を提示するのです.これがトップダウンのプロセスという事になります.

 

 ルメールハートとノーマンの解説は,この後,ピクニック・スキーマの例になります.

 

 「例えば,芝生の上に座っている人たちを見たら,まずピクニック・スキーマを起動させるかもしれない.しかし,ボトムアップの情報によって食べ物の代わりに横断幕が見つかったら,ピクニックの代わりに「デモ」のスキーマに移行するかも知れない.この場合,デモ・スキーマが最適であることが判明し,優位で,最も活性化されたスキーマとなる.」

 このような映像の情報が脳に入力されたら,ボトムアップのプロセスでその情報が脳に伝わり,既に意味記憶として保管している「ピクニック・スキーマ」が覚醒します.すると,「何を食べているのだろう」や「どんな遊びをしているのだろうか」などの疑問が浮かび,さらに注視することになります.

 

 ところが,近づいてみると・・・・

 多くの人々が旗を掲げて,集会をしていることを覚知します.すると,ピクニックであるという判断が否定され,「デモ・スキーマ」が覚醒し,これはデモであったという結論を導き出すことになります.

 

 このようなトップダウンのプロセスは,学習でも頻繁に起こっており,情報の判断の本質はこのようなトップダウンのプロセスの繰り返しと,最終的なスキーマの覚醒です

 

 そうすると,ここまでのスキーマの理解で重要なことは,教師は学習において何をしなければならないかという事です

 

 このことについては,次回に説明します.

 今回は,これで終了します.

 毎回,丁寧にお読みいただき,ありがとうございます.

 

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