記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

スキーマとは②

 前回は,スキーマの概要とも言える話でした.私たちは,様々なスキーマを持ち生活していますが,これらは個々人で違います.しかし,学習で児童・生徒が獲得した知識が貯蔵されたスキーマは,同じクラスメートならば,ほぼ同じものであることが理想です.

 ですから,学習の終末に記憶再生マップを描くことによって,自身に足りなかった情報を補填したり,間違った情報は修正したりして,単元のめあてで示された正しい知識を,内なる納得を経て記憶しようとしているのです.このような記憶痕跡がその単元学習のスキーマとなり,必要に応じて記憶想起され利用することができるようになるのです.

 

 さて今回は,スキーマの特徴②です.今回もルメールハートとノーマン(Rumalhart and Norman,1983)の記述を引用します.

 

 スキーマの特徴②

幾つかのスキーマは,まとまって関連するシステムにリンクされます.

・全体的なスキーマは,サブスキーマの集合で構成される場合があります.

・ピクニックスキーマは,「食事」,「遠足」,「パーティ」を含む,より大きなスキーマのシステムの一部である可能性があります.

・1つのトピックに関する知識のパケットは,関連するトピックに関連する知識のパケットにリンクされています.

 

 これらは,スキーマのつながりに関する特徴とも言うべきものです.この特徴も書籍には図がありませんので,私が図にしました.

スキーマの特徴② (Picture drawn by the author)

 「幾つかのスキーマは,まとまって関連するシステムにリンクされますと,全体的なスキーマは,サブスキーマの集合で構成される場合がありますについては,意味ネットワークにおける上位概念と下位概念の関係と同じようなことを述べています.つまり,上の図で言えば,個々人が持っている「年中行事」という考え方に,お正月や大晦日,クリスマスなどの行事のスキーマが結びついているという意味です.つまり,「あなたにとって年中行事とは何ですか」と聞かれたときに答える,お正月やクリスマス,大晦日等の行事や,小学生を持つ親としては運動会や卒業式等スキーマが,年中行事のスキーマを構成しているという考えです.

 もっと具体的に説明しましょう.例えば,同様の考え方で,年中行事の下位概念としてのクリスマスのスキーマには,サンタのスキーマ,プレゼントのスキーマ,クリスマスツリーのスキーマ12月のカレンダー等々のサブスキーマが包含されています.人によっては,パーティのスキーマが含まれる場合もあります.もちろん,例えば,サンタのスキーマには,赤い服や白く大きな髭のスキーマ等々も含まれていると考えます.そして,これらはユニークであることは当然です.

 

 「ピクニックスキーマは,「食事」,「遠足」,「パーティ」を含む,より大きなスキーマのシステムの一部である可能性がありますとは,例えば大きなスキーマシステムとしてイベントスキーマがあったとして,「食事」(※この場合,会食的な意味?)や「遠足」,「パーティ」と同列で,「ピクニック」も含まれる可能性があるということを述べています.

(※スキーマ③では,ピクニックスキーマを取り上げて説明します.)

 

 「1つのトピックに関する知識のパケット(まとまり)は,それと関連するトピックに関連する知識のパケットにリンクされていますとは,例えば上の図で言えば,サンタ(=トピック)スキーマとリースやプレゼント(=トピック)スキーマがリンクしていることを言っています.サンタとリースやプレゼントは,共にクリスマスで見られるもので,それらは共に関連しているからです.

 

 このようにスキーマを考えてみると,記憶された知識は,それぞれの関係性によって,網の目のようにつながっているという事になります.

 

 このことからお分かり頂けると思いますが,このブログの重要なアイテムである記憶再生マップは,ある意味,授業によって獲得された知識のスキーマのリンク構造を児童・生徒自身が確認しながら表現していることと同じだと言えます