記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

ちょっとひと休み(実際の授業のデータです)

 前回,自由の中にこそ,本音ありというまとめを行いました.

 自由に書くことができるから,嬉しかったことを書いた子や分かったことを書いてみようと挑戦した子,一生懸命に頑張ったけど自分には難しかったと先生に伝えようとした子やどうしても書けなかった子など様々です.

 「学習で意識したことを書きましょう」や「身に付いた力を書きましょう」など,児童にとって難しくなければ,教師が知りたい内容に絞って書かせればいいし,それは授業者が判断すればよいことです.

 私は自由に書かせる中で,「この児童は授業を通して,○○が身に付いたようだ」などと判断したほうが自然だと思います.

 実際,児童の分かったを読み取ることは難しいことなのです.分かったと書いても,説明できなかったので分かっていなかったこともあります.「分かった」の捉え方が違うからです.つまり言語理解の問題でもあります.このことに関しては,私の博論を読んで頂くと丁寧に説明しております(^^;)

 感想を書かせることで,その子にとって授業がどうだったかが分かります.それで,全体としてどの程度理解したかを知る訳です.

 色々言っても実際はどうだとお考えになっていると思いましたので,つい最近行った実験の授業で児童が書いた「感想」の例を示します.

 4年「もののあたたまり方」の授業です.(R51月実施)

 実験の内容は,銅製の棒と板を使い,金属がどのように温まっていくかを調べるものです.一般的には蝋(ろう)を金属に塗り,実験用ガスコンロを用いて熱の伝わり方を調べる方法が行われます.しかし,実験用ガスコンロは火力を最小に調整しても,この実験で使うには火力が強すぎることと,蝋は火が付くと燃えるので危険です.そこで,熱源はアルコールランプを用い,蝋の代わりに市販の示温インク(サーモインクペースト)を使いました.同時にマッチやアルコールランプの使い方の指導を行いました.

こんな実験です

-----------------------------------------------------------------------------------

【実験の目的を意識した感想】※ひらがなを漢字に変換しています.

(1)熱の伝わり方をある程度書いている児童.(金属の温まり方について言及している児童で,実験の映像を記憶しています)

・③だけ私の予想が外れていました.私は,熱は低いところに伝わると思っていて,高いところには行かないと思っていました.そしたら,②と同じように左右に広がっていたのが驚きました.マッチの正しい使い方を知れてよかったです.(②は棒の中央を熱する実験で,③は棒を斜めにしてその中央を熱する実験です.)

ノート1

・金属の棒を熱すると,熱を当てたところから遠いところに順に熱が伝わることやマッチの使い方が分かってよかったです.

・金属の棒を斜めにしてすると,左右に色が変わっていることが分かってよかったです.

・金属の棒は,端っこから真ん中のところに行ったり,両方に行ったりしていて,金属の板は熱が広がっていっていたことが分かりました.

・真ん中から当てたら,左右に色が変わる.

・金属は熱を当てたら,その当てたところから熱が広がるんだなぁと思いました.

・板と棒の温まり方がほとんど同じで,板は日が昇るみたいだった.棒は,消しカスになるみたいだった.

・熱を当てたところから遠いところにくることを初めて知った.火をつけるのが怖かったけど楽しかったです.

・熱が伝わると,遠くのところに行くと知れてよかったです.

・温まったら広がることが分かりました.

・熱を金属のものを傾いておくと全部に広がる.

・熱が色々な動きをして楽しかった.

・広がり方が分かったから楽しかった.

・金属の温まり方が知れてよかったです.マッチも使えたので嬉しかったです.

(2)色の変化について書いている児童.(特に色の映像が記憶に残っている児童です)

・青いほうがピンクになった.

・色が変わって面白かったです.またやりたいです.

・ピンクが90℃以上になるという事が分かっていきました.嬉しかったです.

・40度以上になるとピンクになるという事が知れてよかった.

 

【マッチやアルコールランプの使用に関する感想】

(3)火を扱った実験について書いている児童

・火をつけるのは怖かったけど,火をつけて実験も楽しくできてよかったです.

・今日の実験は,マッチを使うけど,1回したから余裕でした.

・今日はアルコールランプを使って実験をしました.色々な事が知れてよかったです.

・アルコールランプは,ひもを調節すると,火が小さくなったりする.

・マッチを初めてつけた時,すごかったです.

・マッチを使えてよかったです.

・マッチが前まで怖かったけど,この授業のお陰で火のものが怖くなくなったのでよかったです.鉄の棒を当てて実験ができたのでよかったです.

ノート2

・初めてマッチとアルコールランプを使ってとてもすごかったです.金属の棒の温まり方が不思議だなぁと思いました.

・昔の人たちは,この金属棒にろうをぬって授業したことが分かった.

・今日は,学校で始めてのマッチだったけど,先生の言うことを聞けば,ちゃんとできると分かりました.

・注意して実験に取り組めました.

・初めてマッチを使ったのでよかったと思いますが,これから使うときも注意したいと思います.

・マッチをつけて,アルコールランプにつけれた.それで,マッチの怖さもちょっとなくなった.

・今日は火をつけることをしたんですが,今まで火が全然つかなかったけど,最後は一発で火が付いたので嬉しかった.

・火を付けるのが楽しかったです.

・マッチを使って楽しかった.

・火を付けるときに注意してきたのでよかったです.

・マッチ前回よりも使えるようになって嬉しかったです.

・袖に付かないように注意して,火を付けたりアルコールランプに付けたりして,とても楽しかったです.

----------------------------------------------------------------------------------

 実験では,全員がマッチを扱えるようになりましたし,アルコールランプの安全な使い方も実習できました.

 (1)(2)の感想から,児童の約半数が金属の温まり方について理解しつつあることが読み取れます.また,(3)のように半数がマッチを使った実験について書いていることから,今後の実験を行うための実験技能の習得が,ある程度はできたと考えられますので,次の授業の初めに記憶想起を行い,この学習のまとめをしたいと考えています.

 今回もお読みいただきありがとうございます.