記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その②

【前回の要約】

ガイドラインの4ページでは、有識者に対するヒアリングの過程が分かる。最初には生成AIの仕組みと情報活用能力の結び付けが議論され、これは過去のパソコン導入と類似。当時の流布した「何でもできる」という考え方とCAIの広まりが関連し、私も教材作成に携わっていた。

【今回】

このとき(平成初期)は,パソコンというものが非常に高価で学校にも一台あるかないかでした.当然ながら,ほとんどの教員は,パソコンを持っていませんでした.ですから,誰もパソコンの性能を確かめる術などなく,何でもできそうな機械という程度の理解しかなかったのです.おまけに,インターネット環境も無いか,あっても貧弱でホームページWeb検索などもできなかったので,ネットにつながずに単体で利用していた時代でした.それでも誰もが,パソコンが学習のどこに利用できるかを一生懸命考えて使おうとしていました.Windowsが登場したのは,これから少し後です.

昔のパソコンのイメージ

そして今,情報通信技術が進展し,生成AIが開発され学校に導入されようとしています.生成AIとは何かということから始まり,教育への利用はどうかという話題が,かつてのパソコンの登場と同じように起こっています.

今回の生成AIの登場が,かつてのパソコンの登場と違うところは,すでに情報通信機器が人々の生活に深く関わり,生成AIを利用している人も多いという事です.そして,学校教育で育成している「情報活用能力」に直結していることを誰もが認識しているという事でしょう.また,メディアにも取り上げられ,生成AIを利用するリスクについての情報を,誰もが知るところとなりました.また,人々が情報という事に対して賢くなったことで,生成AIを利用する負の部分を予見できるようになったと思います.ですから,有識者からの懸念事項が,この文書にいくつも書かれることになりました.例えば,「偽情報の拡散」,「個人情報の流出」,「著作権侵害」リスクなどです.このガイドラインには,この他に「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響等」という言語が書かれています.しかし,生成AIをすでに利用している人の中には,このような負のイメージに対して懐疑的な意見を持っ人も多いと思います.

なぜ,有識者からこのような懸念事項が出されたのかと言えば,生成AI独特の仕組みが関係しているからです.それは,機械学習という事です.機械学習とは,入力されたデータを取り込んでさらに学習し,新しく出力するデータに利用することです.生成AIは,機械学習を行いますから,入力された個人情報や偽情報などが再度出力される可能性を含みます.

しかしこの事と,批判的思考力や創造性,学習意欲への影響を有識者が議論した意味は異なります.

(つづく)