記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その③

【前回の要約】

 生成AIの登場は,情報通信機器の普及と学校教育の結びつきに対して,リスクが指摘されています.偽情報や個人情報流出などの懸念が,AIの機械学習に起因しています.ただし一部利用者は,このような報道に対して懐疑的な意見を持ち,AIについての議論が広がっています.

※この要約は,ChatGPTが作成した要約を筆者が適宜修正しています.

【今回】

 前回の最後に,「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響を有識者が議論した意味は異なります.」と書きました.何と異なるかと言えば,AIの機械学習による情報漏洩に関する懸念とは,別の理由があるということで,異なると書いたものです.

 今回出されたガイドラインのp4には,「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響」という文言が書かれています.つまり,生成AIに頼ると,このような影響が考えられるという事を言っています.生成AIに頼ると,本当に批判的思考力が低下するのでしょうか.また,創造性が育成されずに,学習意欲が減退するのでしょうか.

 実は,有識者がこのような懸念を話題にしたのは,WBC勝戦の前に大谷選手が,対戦するアメリカの選手たちを引き合いに出して,仲間に「憧れるのはやめましょう」と言ったことと似ています.つまり,生成AIに対する過大な評価が,生成AIが出した回答に対しても過大なる評価をしてしまうことに対する警告なのです.もっと言えば,AIは将棋等の世界では人間と同等かそれ以上の成績を出していますが,今後,他の面,例えば皆さんが日々指導されている授業においては人間以上のモノになり得るでしょうか.

 先日,大学の物理学科の級友と議論した時,彼は「AIが教師に取って代わるようになる」と持論を力説しました.このような考えを持っていると,たとえ生成AIが出した回答ですら,神の声のように感じてしまい,物事を批判的に見る力は育たないと考えられます.現段階のAIは,人間の教師のような指導はできないことは明らかです.つまり,批判的思考力も想像性も,生成AIに対する過大評価によっては育たないということを言っているのです.

 さらに,有識者「学習意欲へも影響がある」とも述べています.これはいったいどのようなことでしょうか.そのまま鵜呑みにすると,生成AIを使うと児童・生徒の学習意欲が低下するような印象を受けますが,そうではありません.これは,プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)に関係する内容です.野村総合研究所のサイトでは,「AI(人工知能)から望ましい出力を得るために、指示や命令を設計、最適化するスキル」という分かり易い定義があります.つまり,尋ね方次第では,生成AIの回答はどうにでもなるという事です.相手(生成AI)を十分理解して尋ねると,満足いく回答が得られるという事になり,学習意欲が増します.逆に,尋ね方を間違うと,見当違いの回答に学習意欲が減退することも考えられます.

 簡単な実験をお見せします.

 先程,大谷翔平選手の話を出しましたので写真も載せたいところですが,著作権の関係でできません.そこで,画像生成AIを使ってロッカールームの様子を再現させてみたいと思います.このときに大切なことは,どのようなシチュエーションの絵を描かせるかを,適切なプロンプトで指示することです.使用するアプリは,Adobe Expressです.

 プロンプトを入力する箇所に,

アメリカ大リーガーの日本人選手である大谷翔平選手が,アメリカとの国際試合の最終戦の前に,ロッカールームで「憧れるのはやめましょう」と日本代表のチームメイトに言っているところ.大谷選手のユニホームの背中には,「OHTANI」と言う文字が,赤色で書かれている.』

と記入しました.そのプロンプトによって作成されたイメージが,次の4枚です.

※何枚も作成しますが,この程度です.

画像生成AIで作成したイメージ

 いかがでしょうか.こんなものです.というか生成AIとしては,十分に機能してくれていると思いますが,大谷選手の写真入りの結果を期待された方にとっては,意欲が減退されたかも知れません.

 つまり,生成AIに関しては,プロンプトエンジニアリングに関する指導が重要であるという事です.これらは,コミュニケーションの力にもずいぶん関係する内容ですね.さて,このガイドラインのp4に関しては,教員としてさらにお知らせする内容がありますので,次回もお楽しみに.今回は,ここまでです.お読みいただきありがとうございました.