記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

実際のデータを使って,共起ネットワークを作成しましょう②

 いつもお読み頂きありがとうございます.

 今回は,R42月~3月にかけて武雄市の小学校で実施した4年生理科「すがたを変える水」の授業後に記憶想起のみで書かせた箇条書き(a)の数日後に記憶再生マップを描かせ,その約1週間後に,記憶再生マップを参照しながら書かせた箇条書き(b)KH Coderで処理してみます.

 箇条書き(b)・・・・・箇条書き(a)の数日後に描いた記憶再生マップを,その数日後に参照しながら作成.(28)

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 今回はPDFで提供させていただきます.前回,データが長すぎてご迷惑をおかけしました.コピーしてKH Coder用のテキストファイルにして下さい.

このテキストファイル名を「箇条書きb_sample」とします.

 それでは,KH Coderを起動し,このテキストファイルを読み込みましょう.

 起動したら「ツール」-「抽出語」-「抽出語リスト」を見てみましょう.

 これを見ると,最も多く使用された言語が「水」です.続いて「水蒸気」,「冷やす」など水の三態変化に関する言語が用いられています.記憶再生マップを描いた後の箇条書き(b)では,このことを書いた児童が多いことが分かります.

 ここで,29位の「粒」が気になりました.おそらくは,粒子性について記述した児童だと思います.そこでKWICコンコーダンスを見るために,「粒」の文字をクリックします.

 

 これを見ると「粒」という言語について一人の児童が,「氷は固体で,粒と粒の間が広くなっていることが分かりました.」という間違った概念を持っているのに対して,別の児童は「気体は粒と粒との間が広い.」という正しい概念を獲得したようです.

 もう少し出現頻度の少ないものをみると,次の様な抽出語が確認できました.

 

 

 これら「自由」と「集まる」も粒子性に関係のある言語の様です.これらのKWICコンコーダンスをみると,次のようになりました.

 これらを書いた児童は,4年生である程度の粒子性についての概念が身に付いたと考えられます.

 今回の分析では,学級全体を有機体と考え,学級としてどのような理解に至ったかを調査することが目的ですから,このような叙述が見られたという事は嬉しいことです.

 それでは,出現の頻度が3以上で共起ネットワークを作成してみましょう.

 

 まず,各ノード()の大きさが前回の共起ネットワークに比べて違うので,それを理解した上で見たいと思います.Frequencyの大きさに注目です.

 これを見ると,緑色のクラスターは,温度による変化についての記述があり,それがオレンジ色のクラスターとつながっています.これは,水の三態変化の記述ですが,さらに結露についてその現象を記述した黄色のクラスターとつながっています.さらに,液体という言語からピンク色のクラスターが共起しており,湯気や雲,霧とつながっていることが読み取れました.また「粒」は「集まる」という言語と共起していることも示されています.つまり,児童の獲得した概念としては,水の小さな粒は集まるという概念が形成されたことが分かります.

 授業の自己評価としてどうだったかは前回の共起ネットワークと,今回の共起ネットワークを比べればよいという事になります.今回のデータでは,学習が終了した数日後がより深い理解をしていることになります.

 

 ずいぶん長くなりましたので,今回はこれで終わりますが,次回は,KH Coderを利用するときに注意(バグかも?)することを紹介します.

 今回もお読みいただき感謝申し上げます.