記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

記憶再生マップの効果⑦

 5月に運動会を行う学校が増えてきました.本校も5/22()が運動会でした.このところ5月に行っても,夏休み明けに行うのと同じように暑い日が続き,5月開催の意義が薄れているようです.

 さて,今回も記憶再生マップの効果について紹介します.

 これは,「記憶再生マップを利用した箇条書きの変化と自己組織化マップによる判定法の開発」に記されている自己組織化マップについてです.

 自己組織化マップ(SOM)は,分かりやすく言えば,ある情報を与えた場合の人間の脳が情報を整理して保存する様子をモデル化したものと言われています.だから,それを見るとその人がある事柄に関する情報をどのようにまとめているかを,何となく知ることができます.

このことは,学校教育にとってはsensationalなことです.

 これまではテストを行い,その得点によってその人の理解の具合を推し測っていました.つまり,問題が解けるかどうかが問題なのです.小学校でも,その問題が解ければいいのですから,単元の学習が終了した直後にテストを行ったり,練習問題をした後に本番を行ったりしています.極めつけは,4月に行われる学習状況調査の前には,過去問を解かせて慣れさせた後に本番を行うなど様々です.このようなことで,日本の学力は維持されています.このやり方も一理あって,同類の問題に慣れることは,確かに学力のような気がします.

 今回の内容は,学習が終了した直後に児童が書いた箇条書きから作成した自己組織化マップと,その後に描いた記憶再生マップを参照して書いた箇条書きから作成した自己組織化マップを比較します.以前も同様の記事を書きましたが,今回は学習内容の理解が早い児童と色々なことに拘りがあるが丁寧に記憶再生マップを描く児童の記憶再生マップを見ていきます.つまり児童の特性によって,自己組織化マップは,どのように変わるかというテーマです.

最初は,色々なことに拘りがあるが丁寧に記憶再生マップを描く児童です.この児童が書いた箇条書きは,学習終了直後は,箇条書き(a)で示したように,4つの文のみでした.

色々なことに拘りのある児童が書いた箇条書き

 その内容も,学習直後にしては,自身が学習で気になったと考えられる内容のみです.最初に書いた文が,台風一過に関するもので,多くの学習内容を整理できていないことが分かります.一方,一か月後に記憶再生マップを見ながら書いたのが右側の箇条書き(b)です.明らかに表現の質が上がっていることが分かります.それと,左側にはなかった「台風の被害」に関する記述が増えています.

 この2つの箇条書きをKH Coderで処理し,自己組織化マップを作成しました.

色々なことに拘りのある児童の自己組織化マップ

 左が学習が終了した直後の情報の整理具合で,右が一か月後の情報の整理具合と考えられます.これを見ると,評価テストを受けるときは左のような状態ということになります.このことから考えられることは,児童の情報の整理具合は,記憶再生マップを描いたり見たりすると変化するということです.

 次に,学習内容の理解が早い児童ではどのようになるかを見ていきましょう.

この児童の箇条書きの変化です.

理解力のある児童が書いた箇条書き

 この箇条書きを読み比べても,その質の違いにあまり気づきません.つまり,この児童は,学習終了後でも多くの知識を保持していたことになります.

 これらから得られる自己組織化マップは,このようになります.

理解力のある児童の自己組織化マップ

 これを見ると,学習終了後でも学習によって得られた情報がきちんと整理されていることに気づきます.さらに,右側の一か月後に書いた箇条書き(b)による自己組織化マップは,新たな情報が整理されていることに気づきますが,整理具合はしっかりしたものです.つまり,理解力のあると捉えられる児童の脳は,このように情報を上手く整理していると言えます.だから,教師の質問にも的確に答えられるのです.

 なお,詳しい内容は,

researchmap.jp

をお読みください.

 今回は,これで終わります.ここまでお読みいただきありがとうございました.

 次回は,今回の流れで,様々な児童の自己組織化マップの変化を紹介したいと思います.