記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

記憶再生マップの効果⑧

 今年の梅雨は,短いのかも知れません.毎日,暑い日が続いています.私が勤める小学校を含め武雄市の全部の小学校では,理科室,音楽室,図工室などの特別教室には,未だにエアコンが設置されていません.それなのに多目的室と呼ばれる教室には,エアコンが入っていたりします.全く不思議な設置基準です(^^;)

 今回は,前回同様に,単元の学習後に児童がまとめとして書いた箇条書き(a)と,その後記憶再生マップを描き,その1か月後にそれを参照しながら書いた箇条書き(b)をもとに,KH Coderでそれぞれ自己組織化マップを作成してみました.

 今回は,箇条書き(a)(b)でほぼ同じ表現と読み取れる部分に,マーカーで色を付けました.さらに,記憶再生マップもご覧頂きます.

 最初は,児童Aの箇条書き(a)(b)をご覧ください.この児童は,真面目に学習を行いますが,学習活動自体は積極的な方ではないのですが,成績は悪くないといった程度でした.

児童Aの箇条書き(a)と(b)

 この児童も,記憶再生マップを描いた1か月後の箇条書き(b)の方が,多く記述しています.記憶再生マップは,鉛筆の部分が記憶想起による記述で,赤ペンの部分は教科書や調べ学習で使ったノートを参照した記述になります.

児童Aの記憶再生マップ

 この児童の箇条書き(b)は,記憶再生マップを主に中心ノード側から読み,そのまま記述していることが多いように思います.この中で絵で描かれているのが,住所の西側に台風が来た絵と台風の左回りの絵,それに×印が付けてある絵ですが,これは何を意味するか分かりません.いずれにしても,記憶再生マップを描くことによって,箇条書き(a)を記述した時よりも多くの概念を獲得したように感じます.それにしても,記憶再生マップによる手がかり再生は,箇条書き(a)では書けなかった多くの隠れた知識などを表出させることに改めて驚くばかりです.

 さて,このような児童Aの箇条書きをもとに,KH Coderによって自己組織化マップを作成しました.

箇条書き(a)の自己組織化マップ【左】と箇条書き(b)の自己組織化マップ【右】

 左が箇条書き(a)の自己組織化マップです.クラスター④には言語が配置されていません.その他のクラスターには,意味が読み取れる言語が配置されました.例えば,①は台風の被害,②は台風が来た場合の影響,③は目に関することなどが書かれています.このようにクラスター毎に意味を与えることをコーディングと呼びます.この児童の箇条書き(a)の自己組織化マップは,比較的容易にコーディングを行うことができます.つまり,学習直後でもある程度は,知識を整理できていたというです.

 右は箇条書き(b)の自己組織化マップです.①は台風のでき方,②は台風の移動,③は台風の危険度,④は「飛ぶ」が基本形で配置されていますが,児童Aは未然形で書きました.また,「晴れ」は台風の目に関して記述したのですが,自己組織化マップでは,台風が近づくと飛行機が飛ばないという児童の表現を受けて,晴れたら飛ぶのように言語を配置しています.このことについては,もう少し調べる必要がありそうです.⑤~⑦は台風の特徴,⑧は台風の被害に関する内容が書かれています.

 このように見ると,児童Aは,記憶再生マップを描いたことで,1か月後でも,その内容を整理できていることが分かります.

 今回は,ここまでです.現在,学会の年会向けにプロシーディングをまとめています.終わりましたら,児童Bについて書きます.

 今回もお読みいただき,ありがとうございました.