記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

もう一度,記憶を再生することについて考えてみよう.

多くの方にこのブログをお読みいただき感謝申し上げます.

成績が伸びないのなら指導の仕方を変更をするべきである,という佐賀新聞への投稿を紹介したところです.そこでこれからは,なぜ学際的な視点で授業を分析していかなければならないのかという話題と記憶想起がなぜ学習で重要であるかについて述べていきたいと思います.

まず,学際的とは,幾つかの学問分野にまたがっていることを指す言語ですが,課題を解決するために単独の学問だけでは解決できない場合があることを認識すべきということが出発点となります.

我々は教員ですので,どうしても教育学に頼って物事を考えてしまいがちです.(という私は,教育学部の出身ではありません.)

まず最初に,一般的な授業の型を提示し,それぞれの問題点について解説します.なお,一般の方がお読みになることを前提として,教員の方には当然と思われることについても,丁寧に説明していきたいと思います.よろしくお願いいたします.

 

小学校の45分授業は,大まかに分けると,導入段階,展開段階,終末段階で構成されます.これを見ますと,大まかな推測はできられると思いますが,導入段階は授業の初めの部分,展開段階は授業の核心部分,終末段階は授業のまとめの部分です,

それと時間の配分は,教科や学習の内容(単元と言います)で異なりますが,おおよそで言えば,導入段階は10分程度,展開段階は30分程度,終末段階は5分程度になります.

それでは,佐賀県の西部教育事務所が教員用に提示している授業の基本的な流れに沿って説明します.

 

導入段階は,1「つかむ」,2「見通す」の2段階の学習が行われます.

今回は,1「つかむ」についてです.教員用の説明は,次のように書かれています.

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1「つかむ」

(1)学習への意欲をもつ.

〇驚き,不思議さ,必要感,疑問や問題点等を感じ,意欲を以て学習に臨めるような課題を提示する.

(2)学習のめあてをつかむ

〇めあてを本時の目標に沿って焦点化する.

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一般の方には,分かりづらいと思いますが,1「つかむ」とは,児童がこれから勉強する授業のめあて(目的・目標)が分かるという意味です.いくつかの例を示したいと思います.

佐賀県教育センターには,先生方が授業を行うときに立てる計画書,つまり学習指導案というものの例が掲載されています.その中から,いくつかを選び説明したいと思います.

(授業のめあての例)

5年理科「乾電池の数(電流の大きさ)を変えると電磁石の強さはどう変わるだろうか?」

1年国語「しまうまの赤ちゃんの,立つ,あるく,はしるようすをくわしくしらべよう」

4年国語「(話題や自分の考えが分かる言葉を入れて,短い言葉で)見出しを付けよう.

3年算数「23×3の答えの求め方を考えよう」

 

これらは,授業の計画書には必ず記載されているものです.

児童は,これらが黒板に書かれたら,ノートなどに転記します.

それでは,5年理科の例で説明します.

 

授業が始まってしばらくすると先生が,「乾電池の数(電流の大きさ)を変えると電磁石の強さはどう変わるだろうか?」を黒板の左上に書かれます.

しかし,このことが授業の最初ではありません.唐突に疑問を突き付けても児童は何のことか分かりませんよね.

そこで,(1)学習への意欲を持つ.(学習することの意味を知る・感じる)〇驚き,不思議さ,必要感,疑問や問題点等を感じ,意欲を以て学習に臨めるような課題を提示する.という手続きが必ずあります.

実際の手続きは,以下のように計画されています.

このような計画ですが,問題点を指摘してください.

※すみませんが,現在入院中です.退院した後,続きを執筆します.

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その⑤ ~ 生成AIの正しい(?)使い方 ~

(New) 記憶の再生について考えるブログ-別版-

【前回】

 生成AIの教育利用は,利用規約の順守や個人情報保護への配慮など課題がある.また,機械学習機能のブロックにより,AIが進化しにくいという問題もある.文科省は,これらの課題を踏まえて,パイロット的取り組みを進めようとしている.

※前回の内容をBardを用いて,200字程度にまとめました.

【今回】前回書いたように生成AIに関しては,利用規約等の制限があるので,今すぐの問題ではありませんが,近い将来では必ず直面する問題ではあります.

 このことは,30年ほど前のコンピュータやネットワークの普及時と同様で,テクノロジーの進化の波が最も遅れて到達するのは教育分野であるという事です.平成初期にコンピュータが学校に導入された時も,様々な業種にはすでに導入されていました.今回の生成AIもすでに様々な分野で利用され,その効果が紹介されています.

 それでは,各学校では生成AIが利用できるようになるまで何をすべきでしょうか.

 昔は,ハードウェアの購入という財政的な高い壁があり,導入までの時間がかかるので市や町の教育委員会もあまり焦ったようには現場を指導しませんでした.一方,教育センターの研究員だった私が勤務を命じられた100校プロジェクト指定校(中学校)では,機器も導入されて研究発表会まで1年半しかなかったために,研究授業を行う各教科の先生方には,赴任当初から2つお願いをしました.1つは,パソコンとはどのような機械で,何ができるかを実際に触って理解することです.当時,スマホタブレットなどはありませんでしたし,パソコンを触ったことがない先生方もたくさんいらっしゃいました.ですから学校のパソコンをとにかく使ってもらいました.それと同時に私が,職員研修の時間にパソコンでできること(当時)を全て実際に実演し,理解してもらいました.次に,パソコンでできることを脳裏に浮かべながら,自分の教科の授業では,どのように利用できるかを考えてもらう職員研修を行いました.

100校プロジェクト(1994年7月17日 佐賀新聞)

 おそらく今回の生成AIの件も,このような事を行う必要があります.ですから,最初にAIとは何かや特に生成AIでできることは何かを理解すべきです.それが完了した時点で,生成AIが自身の授業でどのように利用できる可能性があるかを考える必要があります.

 そこで文科省ガイドラインですが,パイロット的な取組(一部の学校が対象)」に

①生成AI自体を学ぶ段階(生成AIの仕組み,利便性・リスク,留意点)

②使い方を学ぶ段階(より良い回答を引き出すためのAIとの対話スキル,ファクトチェックの方法 )

③各教科等の学びにおいて積極的に用いる段階(問題を発見し,課題を設定する場面,自分の考えを形成する場面,異なる考えを整理したり,比較したり,深めたりする場面などでの生成AIの活用 )

➃日常使いする段階(生成AI検索エンジンと同様に普段使いする)

4段階の大まかな活用ステージが書かれています.

 確かにこの通りなのですが,各学校にあっては,この手続き通り研修を行っても上手くいかない可能性も考えられます.そこのところを今回は説明します.

 これから先は,私の個人的な考えが色濃く出ますので,ご自身の考えと照らし合わせて読んで下さい.

 まず①ですが,職員研修では座学が中心となると思います.現在,学校教育への導入が話題になっている生成AIは,テキストを作成するAIですからテキスト生成AIです.生成AIに対して人間がどのようなことをすると,テキストが生成されるのか,その仕組みを学びます.利便性やリスク,留意点はグループでディスカッションしてもよいでしょう.それらの結果を,ファシリテーター役の先生がまとめれば終わりです.できれば,実際に生成AIの利用もグループで行うと,あまり得意でない先生も安心されると思います.

 このようにして,活用ステージの①が完了したとして,先生方には「生成AIとは何か」ということがどのように伝わったかです.

 まず生成AIは,非常に上手く文章を作り出すという事です.言うならば,優れた作文能力の持ち主とでも言ってよいと思います.そのことを,活用ステージ①で実感することが大切です.そのことを実感するためには,入力した内容と生成された文章を突き合わせることが重要となります.つまり,生成された文章が,あたかも人間が作ったような文章になっているかを確認することです.これは体験されるとお分かりになりますが,ほぼ完璧な日本語を作成します.ですから何回かやり取りをしていると,タブレットPCの中に賢い人間がいるように感じてしまいます.

 さて,本当の問題はここからです.それは,「生成AIの利用」と「Webブラウザによる検索」の違いを整理することが重要です.これは,多くの人が勘違いをしているところだと思いますが,生成AIを利用することは,ブラウザによる検索とは根本的に違うという事です.にもかかわらず,文科省ガイドラインにも検索に利用する例が多く載せられています.もちろん情報検索で利用してもよいと思いますが,それなら今までの通りに,ブラウザで検索すれば知りたい情報は得られます.ただ,生成AIで検索すれば,しっかりした文章で返してくれますので,探す手間が省けるのも事実です.

 実際にやってみましょう.

 (例)薔薇の種類にフラゴナールというものがありますが,その育て方を調べてみます.最初にWebブラウザで調べます.検索窓に「薔薇 フラゴナール 育て方」と記述してみました.

「薔薇 フラゴナール 育て方」の検索結果①

「薔薇 フラゴナール 育て方」の検索結果②

 次に,Bardで検索してみます.「薔薇のフラゴナールの育て方を教えよ」とプロンプト窓に記入しました.

薔薇のフラゴナールの育て方に対するBardの回答

 この例では,Web検索ではWebページのタイトルが示されますが,中身はさらにクリックしてみないと分かりませんし,手間がかかります.しかし,写真や絵図を参照することで,理解できる場合もあります.

 一方,生成AIは,フラゴナールの育て方を分かり易い文章で示してくれました.つまり生成AIの出力は,一見すると人間の入力する内容に対する完璧な回答のようにみえます.ですから,Web検索のような利用法を想定して,話が進んでいると考えられます.

 ガイドラインp10の活用ステージ②「使い方を学ぶ段階(より良い回答を引き出すためのAIとの対話スキル,ファクトチェックの方法 )」では,「より良い回答」という言語が目を引きます.ここからも,調べ学習などで行う検索としての利用を想定していることが推測されます.

 ところがテキスト生成AIは,文章を上手に作成することに特化していますから,検索に利用するのは,あまり本来の使い方ではないようです.調べ学習なら,これまで通りにブラウザで行えばいいのです.それと生成AIは,平気で嘘を並べますから,文科省もファクトチェックを行うようにと述べています.

 では,生成AIをどのように使えばよいかと言えば,生成AI利用者の助言者や相談相手としての利用です.下の写真は,そんな将来の授業のイメージで,児童とのコミュニケーションをとる生成AIが搭載されたロボットです.このロボットは,人間の子供と同じで平気で嘘もつくロボットです.現在は,タブレットの中に生成AIロボットが存在しているという想定で考えるようにします.ですから,児童が自由に友達に尋ねるように生成AIに語りかける場面を想定してやればいい訳です.

 

 この考え方は,ヴィゴツキーが述べた発達の最近接領域の考え方を,タブレット内で児童が操作する生成AIを友達に見立てて実現するものです.生成AIは児童にとって仮想的な友達です.小学生の友達だから(そういう想定で利用する),間違ったことを表示しても構いません.それよりも丁寧に一人一人の児童の相談相手として,児童が入力したプロンプトに対して返答してくれればよいのです.

 また,操作する児童は,プロンプトエンジニアリングについて学び,生成AIが示した情報に対して,「それは本当か」という目で物事を見る訓練を行うことで,ネット上の情報に対する姿勢,クリティカルシンキングを身に付けることができるのです.また,ファクトチェックについての適切な入力を行うことができるようになれば,生成AIの回答の真偽を自身が判断できるようになる訓練にもなります.

 このようなことから,教育で利用するのだから,生成AIが正しい回答を出さなければならないという見方を捨てるのもありだと考えます.児童のよき相談相手としての生成AIの方が使い勝手があると考えます.

 それと,そのような助言者や相談相手としての生成AIですから,いろんな教科の授業のどの場面で利用できるかは,考えれば沢山ありそうです.是非とも,利用が解禁されたときにすぐにでも活用できるように,今からその場面を探しておくのもよい準備かと思います.

 

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その④

【前回】

 生成AIの批判的思考力や創造性、学習意欲への影響に関する懸念は、AIに対する過大評価によるものである。生成AIは将棋などでは人間を上回る成績を出すが、他の面では人間を完全に代替することはできない。生成AIを神の声のように思い込むと、批判的思考力や創造性は育たない。また、生成AIを十分に理解して尋ねることで学習意欲は向上するが、尋ね方を間違えると学習意欲が減退する。

※この要約は,Bardによるものです.

【今回】

 このガイドラインは,有識者会議で議論された内容を基に,一旦,粗方の方針を文章化しています.それが,p4の中程に書かれている内容です.その最初に示されているのが「利用規約」になります.当然ながら,ChatGPT(OpenAI),Bing(Microsoft),Bard(Google),それぞれに利用規約があります.p15には,利用する際のチェックリスト,p16には概要とともに利用規約が明示されていますのでご確認ください.

 これを読めば,ChatGPTは13歳以上,Bingは成年,Bardは18歳以上でないと利用できないと書かれています.ですからこのままであれば,13歳以上の中学生・高校生が保護者の許可を得たうえでChatGPTを使うことができます.Bingは,保護者の同意があれば,小・中・高校生が利用できます.しかし,Bardは,保護者同意の記載がないので,小・中・高校生は利用できません.ですから,小学校でどうしても学習に利用したいというのであれば,ChatGPTBingを保護者の同意を取って利用するということになりそうです.ちなみにBingは,OpenAIとの提携により,GPT-4を利用しています.

 

ChatGPT(OpenAI)

13歳以上で18歳未満は,保護者の許可が必要.

Bing   (Microsoft)

成年,未成年は,保護者の許可が必要.

Bard   (Google)

18歳以上(保護者の同意等の文面はなし)

 

 ところが,最近,株式会社イー・ラーニング研究所が,生成AIに関しての調査を行った結果,子どものいる親世代の60%が,生成AIを教育現場で活用することに賛成していますが,残りの4%は反対,36%は分からないというように回答しました.このことを見ると,生成AIを学校で使おうとしても,保護者全員の許可は取りにくいと考えられます.許可が取れた児童は使えて,取れない児童は使えないというのはどうでしょうか.あまりお勧めできません.まだまだ,生成AIの認知度が向上しないと,児童全員が学習に生成AIを利用できないようです.

 このことに対して文科省は,「開発企業への働きかけ」として,我が国の教育利用の観点からの製品開発を要請しているようです.具体的には,フィルタリング機能の強化,個人情報保護機能の実装,教育用生成AIの開発,利用規約に関する考え方の整理等が挙げられています.(p17)

 このような状況ですから厳密にいえば,現段階で学校で生成AIを授業に利用することはできません.

 それと,さらに幾つかの問題があります.それは,機械学習です.生成AIの生成AIたる所以は,機械学習によってAIが進化する,つまり人間的にいえば賢くなるという事です.ガイドラインでは,機械学習をしない,させないように設定することが前提で,主に個人情報の漏洩を防ぐことが目的です.ですが,これではAI自体は,何も変わりません.本来ならば,人間の入力する内容,所謂プロンプトの内容を学習して,出力する内容が改善されます.具体的にいえば,小学生が小学生なりの表現でプロンプトを入力すると,その拙い表現を生成AIが学ぶことも考えられますし,小学生なりの思考ロジックも学習し,それに従って回答を生成したり,別の小学生のプロンプトの解析に生かせることにもなり,益々使いやすいシステムに変化していくことも期待できるわけです.ですから必ずしも,機械学習をブロックすることは上手な使い方とは言えず,生成AIを使っている意味があまり見いだせなくなることも考えられるのです.

 さらに,これまでは児童が生成AIを利用するときに,自身の名前等の秘匿情報を入力することに対する懸念を考えていました.しかし,NHK5月に作成した番組『生成AI 注意すべきは~「生成AI」のリスクや注意点最低限これだけは気を付けて』で述べられていますが,個人情報を扱う職種の中に教育者が挙がっていることに注意すべきです.つまり,この番組では,教育者が児童・生徒の個人情報を生成AIに入力することに関する注意喚起を行っているのであって,児童・生徒が自らの,若しくは友達の個人情報を入力することには言及していません.

 

 これは現場の教師であれば容易に想像できるのですが,普通に指導を受けた児童・生徒ならば,生成AIを授業でどのように使うかを考えれば,個人情報をプロンプトに含めるような使い方はあまり考えられません.(だからと言って,絶対にないとは言えませんが…)

www3.nhk.or.jp

 このようなことで文科省は,近い将来に向けて,生成AI等の教育利用について,パイロット的取り組みを進めようとしています.これは,インターネットの黎明期(平成初期)に,100校プロジェクト等のパイロット的事業(当時は通産省と文部省による)に似ていますが,それに比べると今回はネットワーク機器等の環境を設置する必要もなく,事業の規模は小さいのではないでしょうか.

 ちなみに私は,当時,100校プロジェクト指定校に勤務しており,その担当として,日本で初めてのテレビ会議による授業を行いました.このときは地元の佐賀大学との共同研究という形でした.そして,それぞれの地区での研究が東京の全国規模の会議で紹介されたことを思い出しましたが,全国的にそれらの知見が広がるのに10年程度は要したと記憶しています.

 さて,今回はここまでですが,そうするとプロジェクト校以外の学校は,どのように準備する必要があるのでしょうか.次回は,そのことについて紹介したいと思います.今回もお読みいただきありがとうございました.

 

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その③

【前回の要約】

 生成AIの登場は,情報通信機器の普及と学校教育の結びつきに対して,リスクが指摘されています.偽情報や個人情報流出などの懸念が,AIの機械学習に起因しています.ただし一部利用者は,このような報道に対して懐疑的な意見を持ち,AIについての議論が広がっています.

※この要約は,ChatGPTが作成した要約を筆者が適宜修正しています.

【今回】

 前回の最後に,「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響を有識者が議論した意味は異なります.」と書きました.何と異なるかと言えば,AIの機械学習による情報漏洩に関する懸念とは,別の理由があるということで,異なると書いたものです.

 今回出されたガイドラインのp4には,「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響」という文言が書かれています.つまり,生成AIに頼ると,このような影響が考えられるという事を言っています.生成AIに頼ると,本当に批判的思考力が低下するのでしょうか.また,創造性が育成されずに,学習意欲が減退するのでしょうか.

 実は,有識者がこのような懸念を話題にしたのは,WBC勝戦の前に大谷選手が,対戦するアメリカの選手たちを引き合いに出して,仲間に「憧れるのはやめましょう」と言ったことと似ています.つまり,生成AIに対する過大な評価が,生成AIが出した回答に対しても過大なる評価をしてしまうことに対する警告なのです.もっと言えば,AIは将棋等の世界では人間と同等かそれ以上の成績を出していますが,今後,他の面,例えば皆さんが日々指導されている授業においては人間以上のモノになり得るでしょうか.

 先日,大学の物理学科の級友と議論した時,彼は「AIが教師に取って代わるようになる」と持論を力説しました.このような考えを持っていると,たとえ生成AIが出した回答ですら,神の声のように感じてしまい,物事を批判的に見る力は育たないと考えられます.現段階のAIは,人間の教師のような指導はできないことは明らかです.つまり,批判的思考力も想像性も,生成AIに対する過大評価によっては育たないということを言っているのです.

 さらに,有識者「学習意欲へも影響がある」とも述べています.これはいったいどのようなことでしょうか.そのまま鵜呑みにすると,生成AIを使うと児童・生徒の学習意欲が低下するような印象を受けますが,そうではありません.これは,プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)に関係する内容です.野村総合研究所のサイトでは,「AI(人工知能)から望ましい出力を得るために、指示や命令を設計、最適化するスキル」という分かり易い定義があります.つまり,尋ね方次第では,生成AIの回答はどうにでもなるという事です.相手(生成AI)を十分理解して尋ねると,満足いく回答が得られるという事になり,学習意欲が増します.逆に,尋ね方を間違うと,見当違いの回答に学習意欲が減退することも考えられます.

 簡単な実験をお見せします.

 先程,大谷翔平選手の話を出しましたので写真も載せたいところですが,著作権の関係でできません.そこで,画像生成AIを使ってロッカールームの様子を再現させてみたいと思います.このときに大切なことは,どのようなシチュエーションの絵を描かせるかを,適切なプロンプトで指示することです.使用するアプリは,Adobe Expressです.

 プロンプトを入力する箇所に,

アメリカ大リーガーの日本人選手である大谷翔平選手が,アメリカとの国際試合の最終戦の前に,ロッカールームで「憧れるのはやめましょう」と日本代表のチームメイトに言っているところ.大谷選手のユニホームの背中には,「OHTANI」と言う文字が,赤色で書かれている.』

と記入しました.そのプロンプトによって作成されたイメージが,次の4枚です.

※何枚も作成しますが,この程度です.

画像生成AIで作成したイメージ

 いかがでしょうか.こんなものです.というか生成AIとしては,十分に機能してくれていると思いますが,大谷選手の写真入りの結果を期待された方にとっては,意欲が減退されたかも知れません.

 つまり,生成AIに関しては,プロンプトエンジニアリングに関する指導が重要であるという事です.これらは,コミュニケーションの力にもずいぶん関係する内容ですね.さて,このガイドラインのp4に関しては,教員としてさらにお知らせする内容がありますので,次回もお楽しみに.今回は,ここまでです.お読みいただきありがとうございました.

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その②

【前回の要約】

ガイドラインの4ページでは、有識者に対するヒアリングの過程が分かる。最初には生成AIの仕組みと情報活用能力の結び付けが議論され、これは過去のパソコン導入と類似。当時の流布した「何でもできる」という考え方とCAIの広まりが関連し、私も教材作成に携わっていた。

【今回】

このとき(平成初期)は,パソコンというものが非常に高価で学校にも一台あるかないかでした.当然ながら,ほとんどの教員は,パソコンを持っていませんでした.ですから,誰もパソコンの性能を確かめる術などなく,何でもできそうな機械という程度の理解しかなかったのです.おまけに,インターネット環境も無いか,あっても貧弱でホームページWeb検索などもできなかったので,ネットにつながずに単体で利用していた時代でした.それでも誰もが,パソコンが学習のどこに利用できるかを一生懸命考えて使おうとしていました.Windowsが登場したのは,これから少し後です.

昔のパソコンのイメージ

そして今,情報通信技術が進展し,生成AIが開発され学校に導入されようとしています.生成AIとは何かということから始まり,教育への利用はどうかという話題が,かつてのパソコンの登場と同じように起こっています.

今回の生成AIの登場が,かつてのパソコンの登場と違うところは,すでに情報通信機器が人々の生活に深く関わり,生成AIを利用している人も多いという事です.そして,学校教育で育成している「情報活用能力」に直結していることを誰もが認識しているという事でしょう.また,メディアにも取り上げられ,生成AIを利用するリスクについての情報を,誰もが知るところとなりました.また,人々が情報という事に対して賢くなったことで,生成AIを利用する負の部分を予見できるようになったと思います.ですから,有識者からの懸念事項が,この文書にいくつも書かれることになりました.例えば,「偽情報の拡散」,「個人情報の流出」,「著作権侵害」リスクなどです.このガイドラインには,この他に「批判的思考力や創造性,学習意欲への影響等」という言語が書かれています.しかし,生成AIをすでに利用している人の中には,このような負のイメージに対して懐疑的な意見を持っ人も多いと思います.

なぜ,有識者からこのような懸念事項が出されたのかと言えば,生成AI独特の仕組みが関係しているからです.それは,機械学習という事です.機械学習とは,入力されたデータを取り込んでさらに学習し,新しく出力するデータに利用することです.生成AIは,機械学習を行いますから,入力された個人情報や偽情報などが再度出力される可能性を含みます.

しかしこの事と,批判的思考力や創造性,学習意欲への影響を有識者が議論した意味は異なります.

(つづく)

生成AIの教育利用に関する暫定的なガイドラインについて その①

718日に文部科学省から,「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が出されました.

生成AIについては,特に今年度になって認知度が高くなり,教育への利用が議論されています.本ガイドラインは,ネット社会での利用拡大の波が,教育の現場への一方的な波及に危機感を持った文科省が,早急にその利用について指針を示す必要に迫られたからであると思います.

今回から数回は,この暫定的なガイドラインを読んで考えたことについて,現場の教師目線で書きたいと思います.

このガイドラインでは「生成AIの教育利用の方向性」として,三項目にまとめて提示しています.ただ,資料を除けば17ページもあり,現場の先生方が手っ取り早く理解するためには,まずは4ページに目を通すとよいでしょう.そこにも,議論の跡が垣間見えますが,最終的に次の3つの項目に留意してほしいと述べています.

① 現時点では活⽤が有効な場⾯を検証しつつ、限定的な利⽤から始めることが適切である。⽣成AIを取り巻く懸念やリスクに⼗分な対策を講じることができる⼀部の学校において、個⼈情報保護やセキュリティ、著作権等に⼗分に留意しつつ、パイロット的な取組を進め、成果・課題を⼗分に検証し、今後の更なる議論に資することが必要である。

② その⼀⽅、学校外で使われる可能性を踏まえ、全ての学校で、情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め、情報活⽤能⼒を育む教育活動を⼀層充実させ、AI時代に必要な資質・能⼒の向上を図る必要がある。

③ 教員研修や校務での適切な活⽤に向けた取組を推進し、教師のAIリテラシー向上や働き⽅改⾰に繋げる必要がある。

ガイドラインの4ページでは,有識者に対するヒアリングの過程が分かるように書かれています.この中で最初に議論されてのは,生成AIの仕組みであり,つまり「生成AIとは何ぞや」という事と,「情報活用能力」の学習を結び付けようとしています.

このことは,平成の初期にパソコンが学校にも導入されようとしたときと同じロジックです.当時は,「パソコンは何でもできる」という考え方が流布し,現場に期待感がありました.時を同じくして,CAI(Computer assisted Instruction)の考え方が広まり,当時30代前半で佐賀県教育センターの情報システム係で研究員を務めていた私も,CAIの講座を行っていました.1時間の授業をパソコンで行うことを想定して,教材を作っていました.(つづく)

 

授業のことをもっと思い出そう.(理解と脳の関係)

 今回は,意味を持つ言語のイメージが脳内でどのように配置されているかを考えてみたいと思います.これは5月4日の記事で予告した内容です.まず話の前提として,この話のルーツは,2018年6月に公開された自分の博士論文「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-」にあります.ちなみに,放送大学リポジトリに限れば,この論文のダウンロード数は,6月末で国内外から2152回に達しています.博士論文なんて普通読まないと思うけど・・・・.

 このブログを初めてお読みになる方は,5月4日の記事を読んでもらえば,つながりやすいと思います.しかし,それでも時間がない方の為に,簡単に整理します.

 児童らは,授業で分かったこと,理解したことを言語で表すことができます.教師は,その文章の内容を読んで評価します.普通ならここで終わりです.もし,児童が書いた文章の内容が学級全員分であって,学級全体としてどのように理解したかを知りたい時には,全て読み終わる頃には,多くの記述を忘れていることが考えられ正確には評価できません.ですから,KH Coderなどのテキストマイニングができるソフトウェアに処理を頼むわけです.共起ネットワークと呼ばれる,単語の関係性を可視化するツールです.(下図)

 この図で,言語が集まったり,または線でつながったりしている言語などがあります.そのような言語どうしは,同じ文章で使われている言語と考えられ,読めば意味を理解することができます.このようにして,全体としてどのような意味が,もともとの文章に書かれていたかを推測することができて,学級全体として児童らがどのように学習を理解したかを読み取ることが可能になります.これが共起ネットワークの話でした.

 そこで,この共起ネットワークですが,学級全員の書いた文章を解析しましたので,学級を有機体と考えてみると(実際は無いのですが),その脳は,このような概念の配置になっていると結論付けてもよいと考えています.例えば,この集団で最も議論が活性化すると思われるのは,水の三態変化(水色のノードの集合体)であると言えます.

 そこで,実際の脳ではどうだろうかという話題が今回のテーマですが,宇宙のことと同じで,まだよく分からない部分があります.しかし教育は,まさに日々脳に対して働きかけている訳で,少しは教員自身も理解していないと上手く指導できません.従って,我々教員としては,児童・生徒の学習を,脳の機能や仕組みを頭の片隅において,どのように捉えれば日々の授業が分かりやすくなるかということで,お話をさせて頂きたいと思います.

 ちなみに初歩的な問題ですが,脳内に言語が配置されていないことはお分かりいただけるでしょう.しかし先生方の中には,児童に暗記などをさせると,言語が脳にそのまま記録されると思っている人もいました.ご存知のように,脳には神経細胞(ニューロン:下図)があり,記憶はこれらに符合化されて記録されます.

 少し詳しく言えば,これら神経細胞(ニューロン)は神経細胞集団(セルアセンブリ)を形成して,ある記憶を蓄えています.学習して体験した記憶は,幾つかの神経細胞集団に符合化されて保持されます.ただし,神経細胞の棲み分けが完全になされている訳ではなく,幾つかの神経細胞は別の記憶が保持されている神経細胞と共用である場合があります.符号化された記憶は,保持されていますが,細胞内部の電位が上がり,ある値(閾値)を超えると,別の神経細胞に信号を出してアクティブな状態になります,これを神経細胞の発火と呼びます.

 この図は,神経細胞うしのつなぎ目(シナプス)を〇で表したものです.仮にこの5つのシナプスのつながりで形成された神経細胞集団が,児童が実験をしたときにアクティブになったとしたら,この神経細胞集団に実験時の記憶が符号化されて記憶されています.児童が実験のことをいつまでも記憶するためには,これら5つの神経細胞集団が,いつでもアクティブな状態になれることが大切ですが,4つや3つしかその状態になれなかったら,実験のいくらかの内容(情景)は忘れ去られたという事になります.我々が昔のことを忘れるのは,そのような状態という事です.

 今,小学4年生が実験をして「水は0℃で凍り始めた」ということに気づいたとしましょう.気づかないときは,教師や友達が気づかせてあげればいいですね.そして,『へぇ,水って0℃で凍り始めるんだ』という情動的なつぶやきがあったならば,それを言語にすればいいわけです.だから,以前も書きましたが,自由に気づきを書かせるという事です.それば,その児童の視点ですから,その方がより強く感じることができるのです.他の人がつぶやいた違う気づきは,その後の議論の中で,その児童が判断すればいいと思いますし,どうすれば他人の気づきで感動するかは先生方の授業の工夫点となります.

 このような情動を伴った学習が,神経細胞を発火させ,言わば神経細胞集団としてアクティブな経験をし,その記憶が深く刻まれるというわけです.ですから大切なことは,感動させたり,疑問に思わせたりなど,心を動かす授業がどの教科でも必要になってきます.

 従って,例えばタブレットに映った動画だけを見て学ぶというのは,よっぽどその児童が興味があれば少しは神経細胞の発火につながるでしょうが,そうでない場合は,タブレットを見たという経験しか記憶に残らないと考えられます.理解させるための授業で大切なことは,授業の内容を,情動的な体験というレベルまで引き上げることでしょう.以前お話しした,「授業は演劇である」という理由はここにあります.

 上の図は,記憶想起を行っている様子を,今回の話をもとに作ってみました.

 平常時は,学習したことも内容も頭にありません.つまり,神経細胞集団はアクティブではない状態です.ところが,何か児童にとってそれらの神経細胞集団をアクティブにさせる仕掛けがあれば,次の図で示したようにぼんやりとした映像が記憶想起がされました.そして,さらに意図的に記憶想起をすれば,その映像(その時の友達の発言や先生の話された内容等々)はもっとはっきりとしたものになってきます.しかし,一般的には体験した時のように,神経細胞を全てアクティブな状態にすることは難しいと考えます.ですから,概念化が必要になります.なぜなら,授業の体験のようなエピソード記憶は,意図的にしか記憶想起できませんが,授業の内容を自分なりに記号化して概念にすると,例えば関連性のあるキーワードを聞いただけの手がかり再生によって無意図的に記憶想起できるようになります.これが意味記憶です.

 その仕掛けの一つが,記憶再生マップを使って児童らが行っている記憶想起です.つまり,記憶再生マップを描くということは,意図的に目的の神経細胞をアクティブな状態にすることなのです.そのアクティブさの度合いで,よく想起されたり,あまり想起されなかったりします.記憶再生マップで,中心ノードの周りに第1ノードを配置し,手掛かり再生を行う理由がここにあります.

 手がかり再生をすることは,与えられた言語の意味を頼りに意図的に想起しようとします.意味を頼りにという事は,概念が分かっていることになりますから,想起することによってイメージが浮かぶわけです.このことを繰り返すと,実験した時にアクティブになった神経細胞集団が再びアクティブになり記憶の貯えが強固になります.つまり,よく理解し,記憶が定着するという事につながる訳です.

 これまでの話を簡単にまとめます.

 何かを学ぶときに大切なことは,友達や先生と会話したり,一人で熟考したりして心や手足を動かしながら経験することです.

 とりあえず何かを学習したら,学習した時と同じような姿で神経細胞集団がアクティブになるように,記憶想起をするということにです.(これまでの学校教育では,記憶想起する学習の過程はほとんどありませんでした.)

 そして,どのようなことを仕組めばよいかは,先生方に自由度がありますが,お勧めは「記憶再生マップによる学習のまとめを描かせる」という事です.一度描いておくと,いつでも取り出して使える便利さがあります.

 

 参考資料:別冊日経サイエンス最新科学が解き明かす 脳と心」,日経サイエンス社,2017

               Newton別冊「脳のしくみ 脳研究の最前線とアルツハイマー病」,ニュートンプレス,2018 

 

 今回はこれで終わりです.3600文字超えのブログで,お疲れさまでした.お読みいただきありがとうございました.学校関係の方で,この話で分かりにくい場合は,オンライン等でも追加の説明は可能ですので,ご連絡下さい.researchmapで古川美樹(Furukawa Yoshiki)を検索いただくと分かります.

 

生成AI利用に関する文科省指針案に思う

 梅雨ですが,私が住む地域では降水量がいつもより少ないようです.こんな時は,これまで梅雨の末期に大雨になることも多かったので不安になりますね.

 これまで,2回にわたって生成AIについて書きました.

 ちょうど今朝(6/23)の新聞に,「文科省から生成AIを学習で利用するときの指針案が7月に発表される」という記事が掲載されていました.

 記事の内容としては,原案では,生成AIを使いこなす力を意識的に育てる姿勢が重要であることが強調されていることと,批判的思考力や創造性への影響といった懸念に言及して,限定的な利用から始めることが適切だと指摘しているという事です.

 このことを考えると,文科省は生成AIという技術は教育に利用できると考えているらしく,「使いこなす」の表現からも分かるように学習の道具としての利用に目を向けているようです.また,「意識的に育てる姿勢が重要」とまで言っていることから,授業の指導計画の中に位置づけなさいと言っていることになると思います.また,現場に新たな課題がやって来ました.

 文科省は,成績の評価では使わないように言っています.このブログでも,児童が書いた児童の箇条書きを評価させました.この場合はどうでしょうか.文科省は,生成AIの出力するデータが正確ではないことに加えて,責任の所在について危惧しているようです.現在,私の研究グループでは,生成AIが児童が書いたまとめの文章などを評価した場合の正確さについて検証しています.正確でないならば,使う必要などありません.しかし,児童が書いた著作物を,教師が評価することも難しいものです.文章が沢山あればなおさらです.この話題は,7月に指針が出された後にまた考えてみたいと思います.大事なことは,指導するのは我々現場の教師であるという事です.そして,こまごましたことは,我々の方がよく理解している分野の話ですね.現場の先生方,頑張っていきましょう(^^;)/

 

 それと,今日のもう一つの面白そうな話題です.文科省はデジタル空間上に,脳を再現し脳の病気の克服を目指すらしいのです.

 

 このパンフレットのように,MRI(fMRI)のデータや猿の脳を使った実験データから,関係性を見出してデータベース化するとのこと.それによって病気の原因等を解明するという事らしいです.確かにデジタル空間に,ニューラルネットワークが表示されると議論がより進みそうです.これってたぶんこんな感じでしょうか.

 こうなれば話ができそうですね.おそらく3Dでしょうから,回転させながら議論できそうです.

 医学は,神経細胞の中に異常個所があれば,それを対象として議論します.脳の病気であれば,非常に狭い領域が重要である場合があると思います.

 そして,健康ならこのネットワークに正常な信号が流れるのでしょうね.

 たぶん,こんな感じですか.

 しかし,実際に神経細胞は発光しないと言われていますので,このイラストは正しくはありません.

 しかしながら,電気信号が流れることをイメージするには良いイラストですし,議論するときには役に立ちそうです.

 そして,デジタル空間に再現された神経回路を学者たちが議論するイメージは,たぶんこんな感じです.

 

 または,こんな感じでしょうか.

 ところで,これら4枚のイラストですが,私が全てAIに描かせたものです.

 文部科学省提供のイメージ図を補完するイメージをAIが作りました.このようなことは,授業でも可能になる話です.つまり,児童・生徒が思考しにくい場面では,生成AIにイメージを出してもらったら,議論が進みますね.何も正確なイメージでなくても構わない場面は,たくさんあります.そして,この話は,記憶再生マップの話とつながります.このことについては,また機会を作って紹介したいと思います.それでは,生成AIの話は,文科省の指針案が出されてからまた考えていきたいと思います.

 今回はここまでです.丁寧にお読みいただきありがとうございました.

 

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)②

今回も生成AIの続きで,国語の授業を想定してみました.

超有名な教材です.4年「ごんぎつね」の授業中を想定してみましょう.

学習環境は,タブレットを児童が使うことを前提として考えます.

場面は,兵十のおっかあが死んで,その葬列が歩いてくる場面です.ごんは,六地蔵さんの陰に隠れて見ていました.人々が通ったところには,ひがん花がふみ折られていたという場面です.

よく授業では,児童が登場人物の心情を読み取ることが主要な学習行動として設定されることがあります.

最近では,単元当たりの授業時数の減少で,じっくりと心情を探る授業がなされないケースも目立ってきました.明らかに詰込みだと思わざるを得ませんが・・・・・.

今回の設定は,登場人物の心情を読み取ることがメインの学習行動です.

参考までに,タブレットなしの授業も考えます.

 

【想定授業開始】

 ① これまでの授業の一例

 予め本文を印刷したプリント等の叙述の横に,赤や青などの色で線を引き,その色を引いた根拠等を児童が記述する.または,宿題等で事前に書き込んでおく.(心情色彩法などと呼ばれています.)

 教師の指示に従い,物語を時系列で追いつつ,児童が自身の書き込みを発表し,教師が発表された内容によって話し合いを進めていく.※この進め方あたりが,指導能力に関係してきます.教育系の大学などの授業で,実際に訓練しておかれると現場は助かります(^^;)

 (このような授業では,事前に教師が児童の書き込みを確認しておくとある程度はスムーズに授業が進行していく.)

 

 ② 生成AIを使った授業の一例

 (児童の手元にはタブレットがありネットに接続しています.)

もし,生成AIが授業で使えたならば・・・・・.

今回は前回の児童の書いた内容の評価でいい感じだったBardを使用してみました.

タブレットを使っても「鉛筆で書く」ことは必要で,おそらく①と同じような授業の中の一人調べなどの個別学習で,生成AIが使われるのだろうと想像します.

 

ある児童が・・・・

『小学校国語の授業中です.4年生の「ごんぎつね」の授業で,「ひがん花がふみ折られていました.」という文章がありますが,ここには登場人物の心情が込められていますか.』と問いかけました.(※全体として,生成AIを授業で使うのでしたら,小学校学習用の生成AIなどのカテゴリーが必要になると思いますし,イントラネット内で動くAIが欲しい気がします.)

するとBardは・・・・(※現在のバージョンです)

【はい、登場人物の心情が込められています。「ごんぎつね」の主人公であるごんは、兵十という少年にいたずらをします。兵十の母親が亡くなったとき、ごんは兵十の母親の墓を訪れます。しかし、兵十の母親の墓の前に植えられていた彼岸花が踏み折られていました。この場面で、ごんは兵十の母親の死を悲しんでいる気持ちと、兵十にいたずらをしたことを後悔している気持ちが込められています。

ごんは、兵十の母親の墓を訪れて、兵十の母親に謝罪したいと思っています。しかし、ごんは兵十に謝罪する勇気がなく、彼岸花を踏み折ることで、自分の罪を償おうとしています。この場面は、ごんの複雑な心情がよく表れている場面です。ごんは、兵十にいたずらをしたことを後悔していますが、兵十に謝罪する勇気がありません。ごんは、彼岸花を踏み折ることで、自分の罪を償おうとしていますが、ごんの罪は彼岸花を踏み折るだけでは償えません。ごんは、兵十に謝罪することで、自分の罪を償う必要があります。】

という回答を児童に返してきました.

まぁ,叙述をもとに考えるとある程度めちゃくちゃですが生成AIも,ひがん花がふみ折られていたという叙述には,心情が込められていると返答してきました.

生成AIを利用しない場合と何が違うかと言えば,児童の思考を助けています.つまり,今までは何も発想できなかったところに,ひょっとして気持ちが込められているかもしれないという当てずっぽう的問いかけに,生成AIが「気持ちが込められている」と返答したのです.

しかし,よくよく生成AIの返答を読んでみると,兵十の母親が亡くなったときにごんが墓を訪れたという返答は,叙述と整合性が取れません.また,兵十にいたずらをしたことを後悔している気持ちが込められていますと言うのも早すぎるような気がします.

つまり,現在のバージョンの生成AIでは,この程度という事になり,批判的思考で自分の思考の糸口にする程度の使い方ができるという事になります.

世の中が,生成AIを万能の回答者のような歓迎ぶりでネットを賑わしています.しかし,ChatGPTは研究機関であるOpenAIの永遠なるプロトタイプであると,専門家である畠山大有氏(Microsoft Japan)は述べています.

従って今は,生成AIを授業にどのように利用できるかを議論するほうが先だと思います.

今回はここまでです.

丁寧にお読みいただきありがとうございました.

 

ちょっとひと休み(生成AIは評価できるか)

「生成AIは,児童の学習を評価できるか」ということで,ChatGPT , Bing , Bardの3つについて同様の課題を与えてみました.これらの箇条書きは,小学4年生が理科の最終単元「すがたを変える水」の学習直後に本当に書いたものの半分です.

半分にした理由は,ChatCPTとBingの入力容量に限度があったためです.Bardには,全員分の箇条書きが入力できましたが,比較するためにBardにも半分の量の箇条書きを入力しました.

【課題】

「次の箇条書きは,小学4年生が理科の「すがたを変える水」という単元で学習したことを,箇条書きにまとめたものです.これらの小学生は,学習の内容をどの程度理解していると考えますか.

・水に色を変える絵具を入れて,沸騰したら赤色になった. ・水が姿を変えたら,3つの姿ができる.水蒸気(気体),水(液体),氷(固体). ・水を試験管の中に入れて冷やしたら,水の体積が大きくなり試験管が破裂する. ・水蒸気は見えない. ・水を温めたら90度までいくけど,100度以上の温度は上がらない. ・水を冷やしたら0.5度ぐらいになる. ・水蒸気が見えなくなること. ・ビニール袋に水滴が付くこと. ・温かい水からは,湯気がでること. ・冷たい水からは,湯気が出ない. ・鉄の丸みたいなやつでビーカーの上にのせて水が付くか試した. ・水を凍らせたりして水の様子が変わったりした. ・氷(個体) ・水(液体) ・水蒸気(気体) ・水を凍らせると体積が大きくなる. ・水を温めると,100℃までしか上がらない. ・水を冷やし続けて,水全部が凍るまでは,温度が変わらない. ・雪は,小さな埃でできている. ・雲の正体は水. ・体積が大きくなると,割れたり破裂したりする. ・固体は氷,液体は水,気体は水蒸気. ・水を温めると,1分で10℃位上がる. ・水を温めると水の体積が大きくなってお湯になる. ・101℃以上はならない. ・スーパー氷水で温度を計ると-0℃以下にはならない. ・固体(氷),液体(水),気体(水蒸気)の3つがある. ・水蒸気は,水からできている. ・水を0℃まで冷やすと凍る. ・水は,100℃までしか上がらない. ・水を冷やすと,コップに水滴が付く. ・水は温めると100℃になる. ・100℃以上にはならない. ・沸騰したら水蒸気がどんどん出てくる. ・水は冷やすと,0℃以下になり,体積は増える. ・氷(個体),水(液体),水蒸気(気体) ・氷(個体) ・水(液体) ・水蒸気(気体) ・水を凍らせると体積が増える. ・水は,0℃で凍る. ・水は,100℃以上に温度は上がらない. ・湯気は水. ・沸騰している水の中から出ている水蒸気. ・水は,熱し続けると温度が上がり,100℃位になると沸騰する. ・沸騰している間は水の温度は変わらない. ・液体,固体,水蒸気3つがあると知りませんでした. ・この3つは大きく3つは,分かるように分かりました. ・姿を変える水は,0℃になると,水の体積が大きくなり,試験管が割れた. ・姿を変える水では,0℃になると水が凍り始めます. ・試験管を冷やし続けると,ひびが出で割れます. ・100℃になると沸騰し始めます. ・100℃からはあまり上がりません. ・100℃になると湯気が出始めます. ・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体. ・氷は集まる,水は触ると動く,水蒸気は自由に動く. ・分かったこと,冷やし続けると割れる. ・体積が大きくなり,割れてしまう. ・100℃以上には,あまり上がらない. ・最初は割れると思っていなかった. ・湯気は水だと分かりました. ・水は,99℃までしか上がらない. ・紙は,水に入れて火に当てても燃えない. ・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.」

 

【結果】

1 . ChatGPT

「この箇条書きには、小学4年生が「すがたを変える水」という単元で学習した様々な内容が含まれています。しかし、全ての学生が同じ程度に理解しているとは限りません。学生がこの内容をどの程度理解しているかを正確に判断するためには、教師が彼らの知識や理解度を評価する必要があります。ただし、この箇条書きには、小学4年生が理解できるように簡潔にまとめられた内容が含まれているため、一般的には、学生たちは理解していると思われます。」

 

2 . Bing

「小学4年生が理科の「すがたを変える水」という単元で学習したことを箇条書きにまとめたものですね。この内容をどの程度理解しているかは、個人差があるため一概には言えませんが、学習した内容を箇条書きにまとめること自体は、学習内容を理解している証拠です。ただ、この箇条書きには、小学4年生が学習した内容以外のことも含まれているようです。もし、学習した内容以外のことについても理解している場合は、より理解度が高いと言えます。

参考文献 小4理科「すがたをかえる水」指導アイデア - みんなの教育技術](https://kyoiku.sho.jp/72998/)

参考文献 小4理科「水のすがたとゆくえ」指導アイデア - みんなの教育技術](https://kyoiku.sho.jp/116946/)

詳細情報:1. kyoiku.sho.jp2. kids.yahoo.co.jp3. kyoiku.sho.jp 」

 

3 . Bard①

「これらの小学生は、学習内容をある程度理解していると思います。彼らは、水が固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの状態に変化できることを理解しています。また、水の温度を上げると沸騰し、蒸気が出ることや、水を冷やすと凍り、体積が大きくなることも理解しています。これらの概念はすべて、日常生活の中で見ることができるので、小学生にとっては理解しやすいと思います。」

3. Bard②

「小学校4年生が理科の「すがたをかえる水」という単元で学習したことを箇条書きでまとめたものを読んで、その学習内容をどの程度理解しているかを判断するのは難しいです。なぜなら、学習内容の理解度には個人差があるからです。しかし、いくつかの傾向を挙げることはできます。

 まず、箇条書きの内容を見ると、水が三態(固体、液体、気体)に変化する様子についてよく理解しているようです。例えば、「水を凍らせたら体積が大きくなる」「水を温めると100℃までしか上がらない」「水を冷やすと0℃以下になり、体積は増える」など、水の状態変化に関する正確な知識を述べている箇条書きがいくつかあります。

 また、水の状態変化の実験にも関心を持っているようです。例えば、「水に色を変える絵具を入れて、沸騰したら赤色になった」「水を試験管の中に入れて冷やしたら、水の体積が大きくなり試験管が破裂する」など、水の状態変化を実際に観察・実験したことについて述べている箇条書きがいくつかあります。

 ただし、箇条書きの内容を見ると、水の状態変化に関する知識がまだ十分に理解できていない部分もあるようです。例えば、「水蒸気は見えない」「水を温めたら90度までいくけど、100度以上の温度は上がらない」「水を冷やしたら0.5度ぐらいになる」など、水の状態変化に関する誤った知識を述べている箇条書きがいくつかあります。

 全体的に見て、小学校4年生が理科の「すがたをかえる水」という単元で学習したことを箇条書きでまとめたものを見ると、水が三態(固体、液体、気体)に変化する様子についてよく理解しているようです。しかし、水の状態変化に関する知識がまだ十分に理解できていない部分もあるようです。」

3. Bard③

「これらの小学生は、水の状態変化について基本的な理解をしているように見えます。彼らは、水が固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの状態に変化できることを知っており、これらの状態をどのように相互に変換できるかを知っています。彼らはまた、水の沸騰点と凝固点を知っており、これらの温度と水の状態との関係を理解しています。

 ただし、いくつかの学生は、水の状態変化に関する知識をよりよく理解するために、より多くの練習や説明が必要かもしれません。たとえば、一部の学生は、水蒸気が水蒸気であってもまだ水であることを理解していないようです。一部の学生はまた、水の凝固点が0℃であることを理解していないようです。

 全体として、これらの小学生は、水の状態変化について基本的な理解をしているように見えます。ただし、いくつかの学生は、水の状態変化に関する知識をよりよく理解するために、より多くの練習や説明が必要かもしれません。」

 

 これらが結果です.私は,現在のバージョンでしたら,Bard②や③であれば利用したいと考えています.

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました.