前回の書き込みを多くの方に読んでいただき感謝しております.
今回は,記憶再生マップの効果③です.
今回から読み始めた方に,簡単に記憶再生マップの紹介をします.記憶再生マップとは,自身の記憶にある内容を描いて表現するものです.その際,教師から提示されるのは,このような形のマップです.中心ノードには,単元名が書かれています.また,第1ノードには,小単元名や授業の様子を連想させ中心ノードの単元名と関連付ければ,授業の様子を想起させられる言葉を書きます.
過去の授業の例で言えば,中心ノードが「もののとけ方」のときに,第1ノードの1つを「取り出し方」とした時があります.授業をされたことのある先生方でしたら,この関連付けにはお気づきだと思います.この場合の「取り出し方」とは,水に溶けた食塩やミョウバンなどをどのようにした取り出すかということです.ですから,このノードからは,水溶液の水を蒸発させて取り出す方法や,水溶液を冷やして溶けきれなくなった食塩などを取り出す方法を記述します.
さて,今回紹介する記憶再生マップの効果ですが,箇条書きの数です.
まず,学習後すぐに28名の児童が書いた箇条書き(a)の総数は124文でした.一人当たりの平均で言えば,4.4文程度の文章を書いたことになります.学習直後なのに少ない印象です.もっと書けるかと思いましたが,どうも学習した知識を整理できていない感じです.まあ,納得していない自分自身に落とし込んでいない知識については,書けないということでしょう.普通の授業は,ここでおしまいになり,テスト(業者が作成)を行って全ての学習が終了します.
ところが,ここで紹介する授業はここで終わりではなく,この後に記憶再生マップを描き,その後にテストとなりました.
児童には,これで学習が終了したと思わせて,次の単元の授業に入りました.しかし教師としては,学習した内容をずっと記憶していてもらいたいのです.そこで,約1か月後の理科の授業で,私が預かっていた記憶再生マップを配付しました.児童は1か月ぶりに,自分が描いた記憶再生マップと再会したことになります.次に,「自分の記憶再生マップを見ながら,分かったことを書いてください」と言ったところ,児童は困惑することもなく一気に箇条書き(b)を書いたという感じです.
その結果ですが,1か月後に記憶再生マップを参照しながら書いた箇条書き(b)の数は240文でした.一人当たり,平均で8.6文程度の文章を書けるようになったということです.
初めは,記憶再生マップを描いてから1か月も経っているので「分かるかな」と思っていましたが,児童の書いた箇条書きを調べると,驚くことに記憶再生マップには記述していないが学習に関係する内容までも,箇条書きとして記述した児童もいました.ということは,絶対に記憶再生マップを描かせた方がよいことになります.
ここらあたりの事は,記憶の事と関係してきますので,次のページを参照して頂くとよく分かります.
今回は,授業のまとめとしては,じっくりと記憶再生マップを参照させながら分かったことを書かせた方がいいということを書きました.ついでですが,箇条書き(a)と(b)の品詞数(名詞,動詞,副詞,形容詞)は,(b)が(a)の約1.5倍多いという結果でしたが,それぞれの比率は(a)も(b)も変わりありませんでした.
今回の内容は,
古川 美樹 (FURUKAWA YOSHIKI) - 意味ネットワーク・モデルとしての記憶の再生マップで想起した箇条書き文章の自己組織化マップによる分析 - 論文 - researchmap
を見て頂くと詳しく分かります.
次回は,一人の児童の箇条書きに焦点を合わせて,SOM(自己組織化マップ)で処理した結果について見ていきたいと思います.
ここまでお読み頂き,ありがとうございました.