8/28(土),29(日)に学会の年会が終了しました.
ブログの更新をサボって1か月半です.(こりゃいかんと思っています・・・・)
今回は,記憶再生マップのノード数と児童の概念化の度合いの相関について書きたいと思います.
これまでの記事で記憶再生マップについては,ずいぶん紹介してきたので,教育の現場でも利用しようと思っている人もいるのではないかと思います.
ところでこの記憶再生マップですが,児童が自身の記憶を想起して描いているので,授業の記憶がたくさんある児童は,たくさんの内容を描くことになります.
逆に,想起しても授業の記憶が浮かんでこない児童は,あまり描けないわけです.
このことに関する重要な提言としていくつか挙げることができます.
1つは,CraikとLockhart(1972)の処理水準理論です.これは,「痕跡持続性は,分析の深さの関数であり,深い水準の分析は,精緻で,持続性のある強い痕跡につながる」というようにまとめられます.簡単に言えば,長い時間,記憶(学習)したことを保持するためには,学習においては深く考えることが重要であり,経験や体験したことの想起を詳細に行うことが重要であるということでしょう.
また,HydeとJenkins(1973)は,「処理水準理論に従えば,長期記憶の確定で重要なのは,学習意図そのものではなく,処理活動の性質であると思われる」と述べています.このことは,学習にとって重要なことは,学習者が何をどのように思考しているかという学習の質であるということです.このことを受けてさらに,Eysenk(1984)は,「精緻化リハーサル,即ち刺激のより深い分析を含む処理が,長期記憶を改善することには,異論は少ない」と述べています.精緻化リハーサルとは,記憶想起のことで,事柄どうしの結びつきに納得するということです.別の言い方をすれば,新たに考えていることと以前に理解していることの関係性に気づくということです.そしてまさに,このことを行っているのが記憶再生マップです.
さて,記憶再生マップはノードリンク構造ですので,ノードの数は気になるところです.
次の4枚の記憶再生マップを見てください.ノード数に違いが見られます.
授業では,児童が記憶再生マップを描くことを通して,学習した内容どうしを結びつける作業を行います.教師は,その作業を注意深く観察し,適切な助言を行う必要があります.とは言うものの,1人で全員の書き込む内容をチェックすることは,大変難しい指導内容です.できたとしても,45分や50分で1回や2回程度になります.
そこで,指導の必要な児童に十分な時間をかけるために,パッと見て作業内容の正しさを判断するために,児童が作業によって描いたノードの数とそのノードの言語をつなぐことによって読める内容の正しさを調査しました.つまり,内容の正しさと誤りという2つの名義尺度とノード数の相関関係を調べたところ,相関比の値が十分に高く,ノード数の多い記憶再生マップを作成した児童程,正しい概念形成ができることが分かりました.このことは実際,授業をしててもなんとなく分かります(^^;)
つまり,先に示した記憶再生マップのうち,ノード数の多いマップを描いた児童の方が学習をよく理解していると考えられるので,実際の指導としては,ノード数を目視で確認して称賛の言葉かけを行ってもほぼ間違いではないということが言えます.そして残った時間を,ノード数の少ないマップを描いている児童に十分に与えることで授業を進行すればよいことになります.
実際,多くの実践を行いましたが,記憶再生マップを描かせている時間のほとんどは,3枚目と4枚目のようなマップを作成し,鉛筆が止まっている児童の指導を手厚くすることに費やしています.
今回はここまでです.お読みいただきありがとうございました.
次回は,誤概念の修正について少し詳しくお話をして,箇条書きのデータを用いたテキストマイニングの話へと進めていきたいと思います.
今回の学会で報告した内容は,日本教育情報学会年会論文集37のp92-95に掲載されていますので,併せてご覧いただければ幸いです.