記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その⑭

 7月に入り10日が過ぎました.梅雨も終盤になりつつあります.大雨にならないように願っています.

 さて今回は,記憶再生マップで児童がふりこの説明を描いた部分について,どのようにしてこの部分が描かれたかを考えてみましょう.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(記憶再生マップを描く場合)

 まず,教師が提示した記憶再生マップの初期提示ですが,「ふりこの動き」という単元名のノードに「部分の名前」という第1ノードの言語がリンクしています.通常ならば「ふりことは」などの言語が書かれることが多いと思われますが,敢えてふりこのそれぞれの部分等につけられた名前とふりこの図を記述させたいという意図が読み取れる初期提示となっています.

 記憶再生マップのような学習をまとめるツールでは,何を描かせるかが問われます.今回のふりこの学習では,ふりこの正しい概念形成が重要で,例えば「ふりこの長さ」とは,どこからどこまでなのかや,振れ幅や1往復の定義は実際に学習者が図に表して説明することが重要と考えます.一部の理科学習ノートなどに描かれているような,図の空欄にそれぞれの部分の名前を記入するという発想では,ふりこ全体としての正しい概念形成ができません.今回のように,指導者が実際に児童が描いた図を評価できるようにしなければ,最終的な概念形成が完成しないと考えます.

 そういう意味では,この児童は,ふりこの長さは支点からおもりの中心まで示しているので正しい概念を形成したと評価しました.また,その他の概念も正しく記憶されているようですし,「おもり」というノードにリンクした「鉄,プラスチック」というノードは,実験で使用したおもりの材質を正しく記述していますので,非常に正確に学習内容を記憶しているということになり,正しい理解ができたと結論付けられます.つまり,記憶再生マップは,指導者が意図的に学習者のまとめを設計し,非常に正確に学習者の評価を行うことができるツールであるということも言えます

 また,この児童のように,記憶再生マップの初期提示の意図を読み取る能力は,どのように作られるかということについて少し述べたいと思います.まず,中心ノードの「ふりこの動き」は,当然ながら単元名であるという決まり事を定着させておくということです.その上で,第1ノードの言語と中心ノードの言語との関連性で,学習中に仕掛けをしておかなければ上手くいきません.今回の場合は,「名前」という言葉でした.この「名前」は,授業中も頻繁に教師の発話によって,児童が聞いた言語でした.例えば単元の導入時に,上の板書の図を描いて,「ここの名前(と言いながら,図に線を引く),支点からおもりの中心までの長さをふりこの長さと言います」と発話していたのです.他の部分についても,「ここの名前」と発話しながら振れ幅にあたる部分を指を何度も往復させて,その角度に注目させていました.

 このような学習の仕掛けは,一種のライミング効果と考えても差し支えないと考えます.ですから,この場合は「名前」という言語の発話を,授業の中でどのようなイントネーションで情意面に訴えるように教師が発声するかは,教師の技量によるところが大きいと言えます.

 このことから,この児童が記憶再生マップの初期提示を見た時に,どのような思考をしたかを考えてみると,次のようなことが分かってきます.

 この児童の心の声『部分の名前か・・・・,名前?,ああ・・・,ふりこ関係の名前ね・・・・,えーっと,長さとふれはばと1往復とおもりか・・・・・分かったわ・・・』と言うような,つぶやき(自己中心的言語)が聞こえそうです.

 次回は,残りの初期提示について考えてみたいと思います.

 今回も丁寧にお読み頂きありがとうございました.