教育現場では,児童・生徒や教師もけっこう気になる内容ですね.児童・生徒にしてみれば,見えない(見てない),聞こえない(聞いていない),考えられない(考えていない)などの条件によっては,誤概念が形成されます.きちんと授業を受けていても形成される場合があります.
しかし一旦,誤概念が形成されても児童・生徒はそれが誤概念と思っていません.一方,教員は,児童・生徒に誤概念が形成されても分からないので授業を進め,児童・生徒の誤概念を最後まで修正せずに終わります.これは,お互いにとって最悪のシナリオです.そして児童・生徒はテストが返却されたとき「なぜ間違ったのか」と考えるのです.間違ったところを,教師がつけた「✔」によって再度考え直して誤概念を修正する児童は多く見受けられます.しかし,それでも消極的な誤概念の修正です.極端な言い方をすれば,「〇」をもう一方の回答欄に付ければ修正終了となります.つまり,内なる納得がない誤概念の修正です.
理想的なのは児童・生徒自らが,誤概念に気づき自己修正すれば手っ取り早いのです.自らが気づくとは,内なる納得をして修正を行うということです.
前回見て頂いた記憶再生マップをもう一度よく見てみましょう.
このなかで,赤字で描いてある部分があります.これが,児童が自身の概念を修正した箇所です.まずは,次の絵をご覧ください.
「とける」をようかい(溶解)とゆうかい(融解)に分けて最初に書いた概念に×を付けています.そして,目に見えるか見えないかという,自身がこれから適用しようとする考え方で訂正しています.この場合,×を付けた最初の記述は,例として挙げても十分だと思われます.この児童は,ある程度の粒子概念を身に付けているものと思われます.このような曖昧さが残る記述を見ると,定義の言葉でなければならないと思う人は,小学生の概念形成には時間がかかることを知らない人でしょう.
また,「とける」に直接赤ペンで付け加えているノードは,ある溶質が溶解してできた水溶液の性質を表しているものと考えられます.透き通っているものを「とける」と言うと書いていますので,要指導箇所と言えますので,この児童に対しては,評価テスト前に指導を行いました.
一方,次の修正箇所では,ろ過についてのエピソード記憶を絵で表現していましたが,その事を「ろ液」と表現していたところを「ろ過」に修正しています.そのままでは,評価テストで間違うところでした.
これらの児童自身が考える誤概念の修正は,内なる納得を経て行われています.他にも例を挙げるときりがない位に,児童自身による誤概念の修正例はあります.そして何よりもいいのは,教師がこの記憶再生マップを見ることができるということです.