記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

授業における知識の形成過程 その⑩

◎記憶再生マップを使ってみませんか? - 記憶の再生について考えるブログ

(校内研究や個人研究でのサポート,共同研究等,ご相談ください)

 5月も最終週になりました.いつも丁寧にお読みいただきありがとうございます.

 この「記憶の再生について考えるブログ」を書くにあたっての根拠となっている拙者の博論も,今週で6か月連続のアクセス数1位となりました.さらに,ダウンロード数も3位となり,順調に行けば1位になるかも知れません.

 記憶再生マップは,基本的には紙と鉛筆を使うので超アナログですが,それを描いた児童・生徒がどのように理解しているかが描いている途中でも確認でき,また,その様子が事細かにマッピングとなって表現されますので,指導の効果や学習者の理解の程度を直感的に把握でき便利です.

 一方で,全員が一斉に作業するので一人一人の記憶再生マップの確認が大変そうに見えますが(以前はそうでした),今はタブレットがありますので,児童・生徒が自身の記憶再生マップを撮影して教師に送信してくれれば,簡単に確認することも可能となります.

 また,ことさらにタブレットで描かせようとお考えになると,アプリやスタイラスペン等の問題も生じて面倒になる場合も考えられます.そのような時は,むしろ原点に戻り,紙と鉛筆を利用された方が,児童・生徒の表現力を余すことなく発揮できて絶対に分かりやすいと思います.情報通信社会だからと言って,無理してタブレットで不十分な表現をさせるよりも,紙に描かせる方が誰でも思う存分短時間で表現でき,また準備も不要ですから,働き方改革にも優しいのでないでしょうか.

 

 さて今回は,「単元学習の終了時に記憶再生マップを描く場合 例として小単元が3つ,最終小単元終了直後に描く場合」について考えてみましょう.

 ここに示した図は一つの考えですが,2時間連続の授業の前半に学習が終了し,後半に「記憶再生マップ」を描くという計画を意識して描きました.

記憶再生マップを描く場合の知識の形成過程(描く前の脳内の様子)

 前半の授業で,全ての児童・生徒が,小単元③の学習の意味記憶を形成したとは考えにくいですね.つまり,まだモヤモヤしている人もいるのではないでしょうか.その場合は,図の「小単元③の意味記憶」は無い訳です.

 一方で,学習してから数日が経過しているので睡眠を経験しています.ですから,概念の形成が行われたことは十分に考えられます.しかし,その概念が正しいかは児童・生徒自身も分かっていないのではないでしょうか.なぜなら,この瞬間に,その概念を客観的に見ることはできないからです.ですから,記憶再生マップで描く作業を通して可視化するのです.そうすることにより,内なる納得が得られれば,自身としては正しいと認識できますし,他の概念との関係性を確認することによって,間違いにも気づくことができます.

 そしてエピソード記憶ですが,数日前の記憶ですので,情意面での経験が重要です.モチベーションを以て活動できた記憶は保持されていますが,そうでない記憶は消失しています.これらは,記憶再生マップを描くときに,手がかり再生によってより詳しく想起すれば,意味記憶エビデンスになりうると考えられます.

 このように,単元のまとめを行う場合は,児童・生徒の脳内にどのような記憶が残っているかは,指導者としてある程度は把握しておくべきと言えます.

 

 今回は,ここまでとします.次回は,記憶再生マップの初期提示後の話をします.