今回も発話する上での留意点について紹介します.
その部分を論文から引用すると,「大半の児童の記憶痕跡にある指導内容に関連した心象を表す言語は,児童の誤概念を修正できることが明らかになった」ということです.
小学校の授業では,児童の持っている言語の概念は低学年になればなる程少ないので,発話するときには注意が必要です.これは,かなりの経験を積まないと発話の内容が伝わらないということです.このことが小学校での指導の難しさを表しています.指導内容は初歩的ですが,学習者が言語の概念を十分に持ち合わせていませんので,学習指導という視点で言えば指導が非常に困難であると言わざるを得ません.従って,教師の不注意な発話によっては,児童が誤概念を持つ可能性が高いと言えます.
発話する教師本人にこの事の自覚がないと,教師が発話する度に置いてけぼりをくらう児童が出現します.最近,授業に集中できない児童を多く見受けますが,教師の発言による誤概念が形成されたことによるものも少なくないと言えます.このようなことが,一般的に低学年の担任として経験豊富な教師が起用される理由のひとつです.
さて,低学年に限らずに,教師の発話によって児童が誤概念を形成したとき,教師は修正のための発話を行う必要があります.本来ならば予め授業を予測し,どのように授業を進めて,どのように発話するかを考えておくべきでしょう.
もし,誤概念が発生したら直後の発話で修正を行う必要があります.その時,論文では「富士山の形」と発話したように,誰もが同様のイメージを描くことのできる言語を発話する必要があります.日本に住んでいる人ならば,富士山の形は,幾度となく様々なメディアで見たことがあるはずです.つまり認知度の問題です.
例えば,教材に「オレンジ色」という言語が出てきたとしましょう.児童の中には,この言語によって色のイメージを想起できない児童がいると考えられます.すると「オレンジは食べたことありますか」と発話するよりも,「人参の色よ」と発話したほうがすんなり行くはずです.どう考えても,児童にとって「オレンジ」と「人参」では人参の方が認知度は高いと考えられるからです.
我々教師は,様々な言語を想起するとき,どのような指導の場面で利用しようかなどを常日頃から考えておく必要がありそうですね.
今回はここまでです.お読みいただきありがとうございました.