これから5枚の記憶再生マップを見てもらいます.全てこれまで提示したマップと同じ授業時間に書かれたものです.この後,市販の評価テストを行いましたが,それぞれのマップを書いた後の児童の成績が気になります.点数は公表しませんが傾向だけ紹介します.
なお,テストは表側が100点満点(主に覚えていることや経験したことを問う問題),裏側が50点満点(主に考えて答えを出す問題)で作られています.
Aのマップ
一見するとノードが少なく,うまく描けていないような記憶再生マップですが,テストの表側は満点こそ取れなかったのですが8割から9割程度の成績で裏は満点でした.つまり成績は良いということになります.では,なぜでしょうか.
それは,中心ノードと第1ノードの言語から文脈を読み取り,適切な言語を第2ノードに書いていることから,よく理解ができていることが分かります.もっと詳細に描くこともできると考えます.このような児童は,結論に至る過程を丁寧に描かせることで,もっと学力が上がると考えられます.
Bのマップ
この記憶再生マップは,Aのマップよりもノードが増えて,よくまとめられているように見えます.しかし,第2ノードをよく見てください.「とける」に対して「とけない」,「重さ」に対して「かるさ」,「溶ける量」に対しては「少し」と綴り,第3ノードは「多く」と書きました.一見,よく描かれているようですが,記憶を再生していないようです.実際,表側は半分程度の得点で,裏側は1問しか正解できなかったのです.
Cのマップ
この児童は,ほぼ学習内容を概念化できていると言えます.例えば,「とける量」に続けて書いたノードのトピックが「決まっている」ー「かぎりがある」と結論づけ,続けて「塩20gとけない」ー「ホウ酸5gとけない」という実験結果で締めくくっています.テストの成績は,裏側は満点で,Aの児童よりも上でした.
Dのマップ
この児童は,ノードのトピックを絵で表現するのが得意のようです.また,赤ペンで知識を追加しようとしています.一見するとよく描けているようですが,「とける」と「重さ」という第1ノードの文脈を読み取れていません.テストの成績は,表側はCの児童よりもよくてほぼ満点なのですが,裏側は満点は取れませんでした.
最後にEのマップです.
この児童の成績はよくありません.表側は半分程度ですが,裏側は点数が取れませんでした.教師がこの児童の記憶を読み取ろうとしても読み取れませんでした.つまり,この児童の記憶はほとんど概念化してないということです.
このように記憶再生マップを見ていくと,今回のような市販の評価テストでも,ある程度は評価できると言えますが,脳の中で概念として保持する記憶のつながりの詳細は記憶再生マップに比べたら分かりません.今回は,記憶再生マップとテストの成績というタイトルで,事例紹介をしました.今回は,ここまでです.お読みいただきありがとうございました.