今回は.児童が授業で行うマッピングを紹介しながら,児童が記憶している知識を見ていきたいと思います.まず,このマッピングですが,様々な教科等で行われているマッピングとは異なります.
このマッピングは,学習した結果として記憶にある事柄を書き出すためのものです.中心ノードにはたいてい単元名が書かれています.その周りの第1ノードには,記憶想起を容易にする言葉が書かれています.
実際に児童が描いたマップを見てみましょう.
このマップは,5年生が理科の「もののとけ方」という学習が終了した直後に描いたものです.この中で,エピソード記憶と意味記憶を探してみましょう.
例えば,「もののとけ方」-「とける」以降に書かれている「ようかい(溶解)」,「ゆうかい(融解)」からの派生は,それぞれについて説明していますので意味記憶と考えられます.また,「もののとけ方」-「とける量」以降に書かれている「ホウ酸」,「食塩」からの派生は,自分が授業で見たこと等を描いているのでエピソード記憶と考えられます.
このように,記憶再生マップでは,学習者の保持する記憶の内容とその種類を知ることができます.これまでの学校教育では,このようなマッピングは行われていなかったために,学習者がその時々でどのような記憶を保持しているかなど分かりませんでした.
記憶再生マップは短時間で,どの児童・生徒がどのような理解をしているか判断できるので,指導者自身の指導に対するフィードバックになります.
ちなみに,この程度のマッピングは,児童が記憶想起に慣れれば,15分程度で完成するようになります.
次回は,別の効果についてです.ここまでお読みいただきありがとうございました.