記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

児童の書いた内容から,記憶の種類を探る①

 前回から1か月以上過ぎてしまいました.(^^;)

 さて今回は,「児童の書いた内容から,記憶の種類を探る」というテーマでお話ししたいと思います.まずは,記憶の種類です.

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  多くの論文等に引用されているのがこちらの図です.もちろん,これは原図のデザインを守りながら日本語用に言語を書き換えたものです.

 手続き的記憶とは,自転車の乗り方や店での買い物の仕方などのように,言語による思考を介さずに,対象の動作が再現される記憶を指します.自転車に乗るとき,「ハンドルを持って,次にサドルに腰かけて・・・」などと考えないし,「お店に入ったら買い物かごを手に取り,商品を入れ,レジ前に並び・・・」などを考えていたら買い物はできませんよね.それぞれの動作を繰り返し,自然と行うようになったとき,その手続きの記憶が意識せずに自然と使われているのです.

 しかし,この場合の手続き的記憶ですが,初めは宣言的記憶だったことに気づきませんか.小さい頃,親から「ハンドルを持って,サドルに乗って,片方の足はペダルにかけて・・・・」と教えられませんでしたか?

 宣言的記憶とは,言語によって記述できる,事実についての記憶を指します.別名,陳述記憶ともいいます.鉄棒の逆上がりやボールの正しい蹴り方を教えてもらうときなど,教えてもらった宣言的記憶を何度も思い出して,できるようになった人も多いと思います.

 手続き的記憶が,全て宣言的記憶を介して形成されるかと言えばそうではなく,上手くいった経験のイメージから形成される場合もあります.

 宣言的記憶は,エピソード記憶意味記憶に分けられます.エピソード記憶とは,個人的経験に基づく記憶であり,時間的・空間的文脈の中に位置づけられる記憶です.これは.個人的な関わりのなかで形成されます.これに対して,意味記憶とは,一般的な知識として形成される記憶のことです.そうすると先程の「ハンドルを持って・・」は意味記憶と解釈できます.教える人が,自転車の乗り方を誰かに指南するときに使っていた概念化した知識です.

 このようなことから,学習の結果としての児童の表現物から分かるものはエピソード記憶意味記憶です.

 次回は,児童の実際の表現物を見ていきたいと思います.今回もお読みいただきありがとうございました.