記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

放送大学博士後期課程と学位取得17

 なんとまた一か月のブランク.

この間にしていたことは,国際会議(IIAI AAI 2020)が今年はオンラインで実施されることになり,発表時間20分の英語のビデオを作成していた.当然,共同研究者の大学教授の先生方が満足するビデオ内容である.このことについては,後で.

さて前回は,主研究指導の先生がおっしゃった10万字という文字数が博士論文の目標であるという事を話題にしていた.62000字までは,予備論文で執筆していたが残りの40000字をどうするかというところであった.まあ,原稿用紙100枚分と考えれば,書けない分量でもないと思う反面,実際書き出すと結構な量である.

博士論文なので,それまでに書いた予備論文からの発展が鍵となるのである.その時,主研究指導の先生との話し合いで,話題に挙がったのが,「箇条書き」で考えを書くことと,記憶の再生マップで考えを描くことの違いについてであった.小学校や中学校などの学習において,分かったことを児童・生徒が表現する手段としては,箇条書きが最も一般的であり,その他ポートフォリオなども挙げられる.児童・生徒が学習した事柄を箇条書きで十分に書けるなら,また,言葉で説明できるならそれで充分であろうが,現実はそうではない.書けないし話せないというのが,日本の一般的な小学校の児童像であろう.このような理由があり主研究指導の先生が,記憶の再生マップがどれだけの効果があるかを知りたかったのである.このことは,マップの分析をどうするかにもつながる話であり,残り40000字の内容としては十分であった.

そこで,丁度,授業が「台風と天気の変化」という単元にさしかかるのをよい機会と捉えて,箇条書きと記憶の再生マップという異質の学習作業の評価に取り組むことにした.

①授業終了→箇条書きによるまとめ(同日)

②記憶の再生マップ描き(2日後)・・・マップは回収後保管

③記憶の再生マップを参照しながらの箇条書き(約1か月後)・・・マップは最初に配布

 このような計画で,授業後に2種類の箇条書きと記憶の再生マップが残った.博士論文では,一つ一つの記憶の再生マップのノード数やノードつながりとその正しさを調査し,ノード数が多い児童は精緻な記述ができていることなどを追加して41000字を記述した.

全体で10万3000字となった博士論文であるが,ボリュームではないと思う反面,貧弱に思える文字数では見栄えがしないと思う自分もいる.今思えば,この文字数は特に多いわけではない.いずれにしても,12月4日までの締め切りに間に合うことになり,それは「台風と天気の変化」が,タイムリーに授業としてあったので救われたと今でも思っている.

実は,この時のデータは,今回の国際会議で採録された論文でもデータ処理して使用しているので,児童が書く(描く)様々な成果が,日々処理もされずに空しく忘れ去られていることの方が悲しいと思う.現場の教員は,研究者ではないがもったいない話である.

次回は,博士論文口頭試問について記憶を遡って述べたい.