今回からの内容は,記憶再生マップのような表現物は,その評価が非常に難しいので,その二次的著作物である箇条書きをテキストマイニングすることで記憶再生マップの評価とするというものです.(長文注意)
余談ですが,実践授業では単元の学習後に記憶再生マップを描かせると,確かに評価テストの成績は向上しますし,また観点では,どちらかと言えば「思考力,判断力,表現力等」の成績が上がります.このような傾向は,記憶再生マップを使い始めた当初からみられていました.
記憶再生マップは,学習により記憶した知識を手がかり再生により想起して,それらの関連性について自分なりの結論を出しつつ,概念化した関係のある事項をつなぎ合わせているイメージです.ですから,概念間の連携については自分自身で意味を形成していることになります.従って,事柄の因果関係については,一応児童自身が答えを出していることになりますから,評価テストのうち少なくとも「思考力,判断力,表現力等」に該当する問題の正答率は上がります.授業で協同作業を行い考え方を交流する経験を行った後に,記憶再生マップを描かせるとなおさらです.
今回,利用するデータは4年生理科のものです.R4年2月~3月にかけて武雄市の小学校で実施した4年生理科の最後の単元である「すがたを変える水」の箇条書きのテキストデータです.これは,単元の授業が終わった直後に,「学習して分かったことを書きましょう.」という課題を与えて箇条書きさせたものです.これを箇条書き(a)とします.これに対して,その後の授業時間を利用して記憶再生マップを描かせ,さらに1週間など時間を空けてから,記憶再生マップを見ながら分かったことを書いたものを箇条書き(b)とします.
まず,箇条書き(a)をKH Coderで処理してみたいと思います.その際,児童が手書きした箇条書きは,テキストファイルにしなければなりません.児童の手書き文章には誤字脱字がたくさんありますので,全て正しい文字に打ち換えなければなりません.また,おかしな文章表現も「てにをは」程度は,推測して正しくする必要があります.さらには,ひらがな表記も漢字にしておくとよいでしょう.このようにすることでKH Coderの処理がスムーズになります.
学級を有機体と捉え児童ひとり一人の書いた箇条書きを全て集約して,一つのファイルとすると学級全体としての傾向が読み取れることになります.
実際に,下の箇条書きをコピーし,メモ帳に貼り付けて使ってみてください.貼り付けたら,適当な名前で保存してください.
なお,行を空けているのは児童を区別するためですのでKH Coderの処理には関係ありません.地方の小学校に通う実際の4年生が,どの程度の表現をするかが分かります.この学校の学力は,地方の学校としてはやや低いかもしれません.
なおKH Coderは,立命館大学の樋口耕一先生が作成されたテキストマイニング用のソフトウェアです.
KH Coder: 計量テキスト分析・テキストマイニングのためのフリーソフトウェア
箇条書き(a)・・・・・記憶再生マップを描く前に行うまとめ活動で作成.(28名)
ここでは,このテキストファイル名を「箇条書きa_sample」とします.
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・水に色を変える絵具を入れて,沸騰したら赤色になった.
・水が姿を変えたら,3つの姿ができる.水蒸気(気体),水(液体),氷(固体).
・水を試験管の中に入れて冷やしたら,水の体積が大きくなり試験管が破裂する.
・水蒸気は見えない.
・水を温めたら90℃までいくけど,100℃以上の温度は上がらない.
・水を冷やしたら0.5℃ぐらいになる.
・水蒸気が見えなくなること.
・ビニール袋に水滴が付くこと.
・温かい水からは,湯気がでること.
・冷たい水からは,湯気が出ない.
・鉄の丸みたいなやつでビーカーの上にのせて水が付くか試した.
・水を凍らせたりして水の様子が変わったりした.
・氷(固体)
・水(液体)
・水蒸気(気体)
・水を凍らせると体積が大きくなる.
・水を温めると,100℃までしか上がらない.
・水を冷やし続けて,水全部が凍るまでは,温度が変わらない.
・雪は,小さな埃でできている.
・雲の正体は水.
・体積が大きくなると,割れたり破裂したりする.
・固体は氷,液体は水,気体は水蒸気.
・水を温めると,1分で10℃位上がる.
・水を温めると水の体積が大きくなってお湯になる.
・101℃以上はならない.
・スーパー氷水で温度を計ると-0℃以下にはならない.
・固体(氷),液体(水),気体(水蒸気)の3つがある.
・水蒸気は,水からできている.
・水を0℃まで冷やすと凍る.
・水は,100℃までしか上がらない.
・水を冷やすと,コップに水滴が付く.
・水は温めると100℃になる.
・100℃以上にはならない.
・沸騰したら水蒸気がどんどん出てくる.
・水は冷やすと,0℃以下になり,体積は増える.
・氷(固体),水(液体),水蒸気(気体)
・氷(固体)
・水(液体)
・水蒸気(気体)
・水を凍らせると体積が増える.
・水は,0℃で凍る.
・水は,100℃以上に温度は上がらない.
・湯気は水.
・沸騰している水の中から出ている水蒸気.
・水は,熱し続けると温度が上がり,100℃位になると沸騰する.
・沸騰している間は水の温度は変わらない.
・液体,固体,水蒸気3つがあると知りませんでした.
・この3つは大きく3つは,分かるように分かりました.
・姿を変える水は,0℃になると,水の体積が大きくなり,試験管が割れた.
・姿を変える水では,0℃になると水が凍り始めます.
・試験管を冷やし続けると,ひびが出で割れます.
・100℃になると沸騰し始めます.
・100℃からはあまり上がりません.
・100℃になると湯気が出始めます.
・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体.
・氷は集まる,水は触ると動く,水蒸気は自由に動く.
・分かったこと,冷やし続けると割れる.
・体積が大きくなり,割れてしまう.
・100℃以上には,あまり上がらない.
・最初は割れると思っていなかった.
・湯気は水だと分かりました.
・水は,99℃までしか上がらない.
・紙は,水に入れて火に当てても燃えない.
・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.
・水は0℃になると凍り始める.
・温めると物の体積が大きくなる.
・冷やすと物の体積が小さくなる.
・水は凍ると体積が増える.
・水は液体,氷は固体,水蒸気は気体.
・水は100℃で沸騰し,0℃で凍る.
・水は100℃以上になると温度があまり上がらなくなる.
・気体を冷やすと液体になり,液体を冷やすと固体になる.
・固体を熱すると液体になり,液体を熱すると気体になる.
・たくさん冷やされた氷がガーゼに触れるとくっつく.
・水を20分間ずっと温めた.
・水をガスコンロで温めた.
・冷やし続けたら0℃になって,まだしてたら0℃以下になった.
・冷やし続けると水が氷になった.
・水を冷やしたら,体積が増えた.
・水は,0℃になると体積が増える.
・結露→白くなる→氷→体積が増える→割れる.
・温めるときは,100℃が限界.
・紙コップの中に水を入れると燃えない.
・天然水や水系の飲み物は,冷やすと破裂する.
・水を温めると100℃以上は上がらない.
・水を冷やすと0℃で氷になる.
・試験管に水を入れて,水と塩と氷を入れたところに試験管を入れて待つと,温度が下がっていく毎に,体積が大きくなり,15mLから2cmか3cm水が増えて氷になる.
・試験管の水が凍ると,体積が大きくなって割れる.
・水の正体は水蒸気.
・熱い水は,100℃以上にはならない.
・水の温度を上げると体積が大きくなり,温度が高くなる.
・温度を温めすぎても100℃以上には上がらない.
・水の温度を下げると体積が下がり,温度が低くなる.
・温度を下げすぎると,何℃ではなく,マイナス何℃になる.
・固体,気体,液体の3つの種類がある.
・氷が増えると体積が増える.
・気体,液体
・氷水を冷やすと熱くなって,温度マイナス1℃だった.
・水は,100℃より上の温度にはならない.
・水は0℃になって凍り終わるまで,温度が変わらない.
・水,湯気,霧,雲は仲間で液体.
・氷,雪は固体.
・水蒸気は気体.
・水は,たくさん姿を変える.
・水は,真逆な物にもなれる.
・水は,触れば火傷するくらい熱くなる.
・水は,凍るくらい冷たくなる.
・塩を使えば,もっと冷たくなる.
・水は,凍ると体積が大きくなる(ビーカーが割れるくらい).
・水は温めると,100℃までにしか上がらない.
・水は,温め続けると,水は無くなる.
・水は,温めると沸騰する.
・水を温めると蒸発して,水蒸気になる.
・水を温めると,湯気になる.
・水を温めるとだんだん温度が上がっていって100℃になると,100℃以上にならない.
・水を冷やすと,試験管が割れました.その理由は,水の体積が大きくなったから試験管が割れた.
・水蒸気の正体は,水.
・水は,温めると100℃から上へ行かない.
・水は,冷やすと0℃から水が凍り始める.
・水を冷やし続けると,0℃になる.
・氷は,冷やされると体積が大きくなる.
・水は,温めると湯気が出てくる.
・湯気は,温まった水蒸気.
・水を温めると,蒸発する.
・水を熱すると,温度は上がる.
・水は,温めると沸騰し,水蒸気が出るが,その水蒸気も,元は水であるということが分かった.
・水は,温め続けても,100℃以上にはならないということが分かった.
・水を冷やし続けたら,0℃以下になり,凍り始め,そこからまた冷やし続けると,体積が大きくなり,割れるということが分かった.
・水が凍ると,体積は増える.
・水が凍るのは0℃.
・氷は固体,水は液体,水蒸気は気体である.
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それでは,KH Coderを起動し,このテキストファイルを読み込みましょう.
読み込んだら,「前処理」をクリックし「前処理の実行」を行います.もし,テキストファイルに不備があればメッセージが出ます.次に,「ツール」-「抽出語」-「抽出語リスト」を見てみましょう.
次がその結果です.
これを見れば,28名の書いた箇条書きに現れた言語とその頻度が分かります.
ここで,考えなければならないのは,どの位の出現頻度までを取り扱うかということです.これをやらないと,たった1回しか出現しなかった言語まで処理することになるからです.
これを見ると,出現頻度が3回以上の言語を処理の対象とした方がいいみたいです.そこで次に,共起ネットワークを作成してみましょう.
共起ネットワークは,共起関係にある言語を調べるためには便利です.
共起ネットワークは,共起関係にある言語を調べるためには便利です.
矢印の箇所を確認してください.この設定で共起ネットワークを作成すると次のようになりました.
これを見ると,「水」を中心に紫色のノードでつながれた言語の関係が特徴的であることが分かります.これは,水を凍らせたときに,体積が大きくなることを記述した箇条書きが多く見受けられたことを表しています.その他,赤色のノードでつながれた言語群は水の三態変化を中心とした関係性を示しています.特に,固体・液体・気体関連のJaccard係数は,[固体]0.58[気体],[固体]0.63[液体],[液体]0.63[気体]となっていることから,固体,液体,気体の順に箇条書きに書かれている場合が多いことを示しています.0.58や0.63は相当強い共起関係となります.
次回は,記憶再生マップを描いた後に,それを見ながら書いた箇条書き(b)から共起ネットワークを作成してみましょう.なお,次回のブログ更新サイクルは,早くしたいと思いますのでよろしくお願いします.