いつもお読みいただきありがとうございます.
このブログは,記憶再生マップを描かせることの効果を,2021年8月に以前在籍していた学会の年会で発表した内容をもとに説明するために書いています.
この数回は,児童の概念形成には時間が必要であることや情動面での刺激が記憶にはよい効果を与えること,授業内容はストーリーを成していること,さらに,誰でも書ける感想からその児童の理解の程度が推測できることなどを書かせていただきました.いずれも本校での実践ですので,一般的な地方の学校でも実践可能です.
記憶再生マップは,その児童・生徒がそれを描いた時点でどのような構成概念を持っているかの凡そを表したユニークな表現物ですから,その読み取りには時間がかかります.
今回は記憶再生マップの実際をご覧いただきたいと思います.
この記憶再生マップは,つい最近,5年理科「ふりこの動き」で児童が実際に描いた記憶再生マップです.
この記憶再生マップを見ると,緻密に記憶が概念化されている児童と,そうでない児童が同じクラスにいることが分かります.このクラスの成績は,記憶再生マップを描いてから1週間後に行った評価テストでも,テスト業者が設定している期待値よりも高い点数を出しています.
ただ,記憶再生マップの効果をこのテストで検証することは不可能です.なぜなら多くの児童が,記憶再生マップを描くことで,獲得した知識を評価テストよりも詳細に構造化しているからです.
なお,これらの児童の成績ですが,2,4,5,9番目の記憶再生マップを描いた児童は100点でした.また,よく描いているようにみえても間違っている児童の到達度は,70-79点の得点でしたが,この児童が最も低い点数でした.さらに欠席等で記憶再生マップの記述の経験をしていない児童は,60-69点の範囲でした.
記憶再生マップの本当の意味を言語化するのは,作成した本人しかできません.そのようにして作成された文章が,その児童の構成概念を言い当てています.また児童らは,書いたそばから練習なしに記憶再生マップを声に出して,または呟いて読むことは,本校に限らず他の小学校の児童誰でもができます.このようなことは,指導する教員のみが知り得ることで,大学等の研究者の方々は実際に見ておられませんが,私自身が博士号を持つ小学校の教員ですので,研究者の目でいつも児童の発話を観察しています.しかも,専門的には認知科学を研究していますので,私が聞く児童の発言やつぶやき等々も,記憶再生マップの記述に照らし合わせながら,その児童の脳での思考過程を踏まえて判断しています.
さて今回の話は,このように教育的な効果がある記憶再生マップの内容を,「できるだけ客観的に解析する方策」について明らかにするという筋書きのもと,児童の学習行動から得られる解析データは何であるかについて述べているところです.
記憶再生マップのような表現物を,直接解析することはかなり難しいと言えますし,できたとしても相当な時間がかかります.従って学校現場で利用するとなれば,授業を行う先生方がもっと短時間で解析できるデータが必要になります.それが記憶再生マップを見て児童が書いた箇条書きということになります.間接的ではありますが,児童は記憶再生マップを描いた直後に,それを声に出して読むことができるので,児童が学習によって構成した概念と同じである考えられます.
つまり,児童が描いた記憶再生マップの評価は,それを見て文字に起こした箇条書きで評価することにしました.これならば,テキストマイニングでより詳しく調べることができます.
次回からは,このような文字に起こした児童の表現物をKH Coderで解析する手順等について紹介します.
最後に・・・・・
今話題になっているChatGPTを使って,記憶再生マップの教育利用について聞いてみました.
Q. 記憶再生マップの教育利用について調べてください.
A. 記憶再生マップは、情報をビジュアル的な形で整理し、脳がより効果的に情報を処理することを支援するツールです。これは、教育分野で幅広く利用されています。
教育現場では、記憶再生マップを使って、学習内容を視覚的に整理し、情報の階層構造を理解することができます。また、複雑なトピックを理解する際に、脳の処理を助けるために記憶再生マップを使用することができます。
教師は、記憶再生マップを活用して、学生の理解度を評価し、教育の質を向上させることができます。学生は、自己学習やレポート作成などの活動で、記憶再生マップを使用して、学習内容を整理し、自己評価を行うことができます。
また、オンライン教育においては、記憶再生マップを用いた教材が提供されている場合もあります。これにより、学生は自宅で自己学習を行う際にも、より効果的な学習を行うことができます。
総じて、記憶再生マップは教育現場で幅広く利用され、学習内容の整理や理解度の評価などに役立つことが期待されます。