記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

児童によって変わる記憶再生マップ②

 ある単元の授業が終わり,児童に記憶再生マップを描かせるとき,必ずしも児童のモチベーションが高まっているとは限りません.次の記憶再生マップは,そのような児童が描いたものです.

f:id:jygnp274:20210214033758p:plain

児童が描いた記憶再生マップ3

 この児童は,普段は積極的に学習に取り組むのですが,このときはあまり学習をしたがらない様子でした.

 一見,あまり詳しく描かれていない記憶再生マップです.教師が提示した中心ノードと第1ノードを省けば,最初に描いたのは,「水∔薬=水溶液の重さ」というリンクと,「塩-50mL 20mL(それに不明2文字)」,「冷やす-(実験の絵)」の3つだけでした.「最初に」というのは,記憶想起のみでという意味で,赤ペンで描かれている部分は,教科書やノートを参照しながら追記した部分になります.

 記憶再生マップは,最初は記憶のみで描き続け,どうしても思い出せない状態になったら,教科書やノートを参照しながら描き続けるという決まり事があります.

 さて,この児童の記述を見ると「水∔薬=水溶液の重さ」の部分が気になります.それは正確ではない表現だからです.しかし,そのことはこの児童に対する指導の箇所を示してくれているのです.ですから,「水+薬の部分は,水の重さ+溶かしたものの重さということですか.」と問いかけを行うことで,概念の修正ができると考えられます.

 前々回に紹介した児童の記憶再生マップは,大変よくまとめられていましたが,「重さ」からのリンクは描けていませんでした.

f:id:jygnp274:20210124045507p:plain

児童が描いた記憶再生マップ

 この児童は,教科書を参照して描き足しているのが赤ペンの記述で分かります.「もののとけ方-重さ」という言語からの文脈が分からなかったということです.実は,この「重さ」を第1ノードのトピックにしたのは,文脈を読み取るのが難しいと考えたからで,ここを記述できる児童がどれくらいいるかを知りたかったからでした.結果は,ある程度の内容で記述できた児童が30名中8名でした.

 さて,初めの児童の記述にもどると「水∔薬=水溶液の重さ」となっており,教師が提示したノードのつながりから文脈を読み取っているのが分かります.正確な表現でないにしても,水の重さと溶かしたものの重さを足すと水溶液の重さになるという表現であることが推測されます.

 その他,「塩-50mL 20mL(それに不明2文字)」は,塩を水50mLに溶かす実験では,20gは溶けなかったということを表現しているようですが,確認したところgでなければならないのにmLと書いてしまったようです.

 この児童はその後の評価テストでは満点を取っています.もし,モチベーションが高い状態で記憶再生マップを描いたなら,もっと詳細なものが描けたと考えています.

 今回はここまでです.次回も,特徴的な表現を見ていきたいと思います.ここまでお読みいただきありがとうございました.

児童によって変わる記憶再生マップ

 今回は,色々な記憶再生マップを紹介します.

 これは,前回と同じ授業で別の児童が作成したものです.記憶再生マップには,正解がありません.それは,児童がその時点で持っている概念を児童や教師が確認するためだからです.

f:id:jygnp274:20210211111600p:plain

児童が描いた記憶再生マップ2

  この児童は,手がかり再生用に教師が提示した「とける」という第1ノードのトピックから,「とけない」という言語を第2ノードのトピックとして書いています.また,「重さ」という提示された第1ノードのトピックに対しては,「かるさ」という言語をつないでいます.さらに,「溶ける量」という手がかり再生用の言語からは,「少し」-「多く」という言語をつなぎました.

 一般的に手がかり再生は,手がかりとなる言語等に関連する事象等を想起することを目指しています.つまり,そこには,与えられた課題に対する文脈があることに気付く必要があります.残念ながら,この児童は教師が提示した中心ノードの単元名と4つの第1ノードのトピックのつながりから,文脈を読み取ることができていなかったということになります.また,赤色で追加した「透明」に関する記述も,「いろ」-「とうめい」-「(不明)」-「白色」と追記していますが,教師はこれを読んで意味を読み取ることができませんでした.ただ唯一,「粉」を訂正して「粒」-「水の中に広がっていく」というリンクだけは,この児童が溶解する食塩などの粒子に関して理解が進んでいることに気づきます.しかしながら,この児童の成績は思わしくありませんでした.

 次回も,同様に児童の記述を見ていきたいと思います.ここまでご覧頂きありがとうございました.

児童は自分の誤概念を修正できるか.

 今回のテーマは,誤概念です.

 教育現場では,児童・生徒や教師もけっこう気になる内容ですね.児童・生徒にしてみれば,見えない(見てない),聞こえない(聞いていない),考えられない(考えていない)などの条件によっては,誤概念が形成されます.きちんと授業を受けていても形成される場合があります.

 しかし一旦,誤概念が形成されても児童・生徒はそれが誤概念と思っていません.一方,教員は,児童・生徒に誤概念が形成されても分からないので授業を進め,児童・生徒の誤概念を最後まで修正せずに終わります.これは,お互いにとって最悪のシナリオです.そして児童・生徒はテストが返却されたとき「なぜ間違ったのか」と考えるのです.間違ったところを,教師がつけた「✔」によって再度考え直して誤概念を修正する児童は多く見受けられます.しかし,それでも消極的な誤概念の修正です.極端な言い方をすれば,「〇」をもう一方の回答欄に付ければ修正終了となります.つまり,内なる納得がない誤概念の修正です.

 理想的なのは児童・生徒自らが,誤概念に気づき自己修正すれば手っ取り早いのです.自らが気づくとは,内なる納得をして修正を行うということです.

 前回見て頂いた記憶再生マップをもう一度よく見てみましょう.

f:id:jygnp274:20210124045507p:plain

児童が描いた記憶再生マップ

 このなかで,赤字で描いてある部分があります.これが,児童が自身の概念を修正した箇所です.まずは,次の絵をご覧ください.

f:id:jygnp274:20210129000146j:plain

修正箇所1

 「とける」をようかい(溶解)とゆうかい(融解)に分けて最初に書いた概念に×を付けています.そして,目に見えるか見えないかという,自身がこれから適用しようとする考え方で訂正しています.この場合,×を付けた最初の記述は,例として挙げても十分だと思われます.この児童は,ある程度の粒子概念を身に付けているものと思われます.このような曖昧さが残る記述を見ると,定義の言葉でなければならないと思う人は,小学生の概念形成には時間がかかることを知らない人でしょう.

 また,「とける」に直接赤ペンで付け加えているノードは,ある溶質が溶解してできた水溶液の性質を表しているものと考えられます.透き通っているものを「とける」と言うと書いていますので,要指導箇所と言えますので,この児童に対しては,評価テスト前に指導を行いました.

 一方,次の修正箇所では,ろ過についてのエピソード記憶を絵で表現していましたが,その事を「ろ液」と表現していたところを「ろ過」に修正しています.そのままでは,評価テストで間違うところでした. 

f:id:jygnp274:20210129135348p:plain

修正箇所2

 これらの児童自身が考える誤概念の修正は,内なる納得を経て行われています.他にも例を挙げるときりがない位に,児童自身による誤概念の修正例はあります.そして何よりもいいのは,教師がこの記憶再生マップを見ることができるということです.

 今回はここまで.お読み頂きありがとうございました.次回は,児童によって変わる記憶再生マップの話です.

児童の書いた内容から,記憶の種類を探る②

 今回は.児童が授業で行うマッピングを紹介しながら,児童が記憶している知識を見ていきたいと思います.まず,このマッピングですが,様々な教科等で行われているマッピングとは異なります. 

f:id:jygnp274:20210121153627p:plain

記憶再生マップ

 このマッピングは,学習した結果として記憶にある事柄を書き出すためのものです.中心ノードにはたいてい単元名が書かれています.その周りの第1ノードには,記憶想起を容易にする言葉が書かれています.

 実際に児童が描いたマップを見てみましょう.

f:id:jygnp274:20210124045507p:plain

児童が描いた記憶再生マップ

 このマップは,5年生が理科の「もののとけ方」という学習が終了した直後に描いたものです.この中で,エピソード記憶意味記憶を探してみましょう.

 例えば,「もののとけ方」-「とける」以降に書かれている「ようかい(溶解)」,「ゆうかい(融解)」からの派生は,それぞれについて説明していますので意味記憶と考えられます.また,「もののとけ方」-「とける量」以降に書かれている「ホウ酸」,「食塩」からの派生は,自分が授業で見たこと等を描いているのでエピソード記憶と考えられます.

 このように,記憶再生マップでは,学習者の保持する記憶の内容とその種類を知ることができます.これまでの学校教育では,このようなマッピングは行われていなかったために,学習者がその時々でどのような記憶を保持しているかなど分かりませんでした.

 記憶再生マップは短時間で,どの児童・生徒がどのような理解をしているか判断できるので,指導者自身の指導に対するフィードバックになります.

 ちなみに,この程度のマッピングは,児童が記憶想起に慣れれば,15分程度で完成するようになります.

 次回は,別の効果についてです.ここまでお読みいただきありがとうございました.

児童の書いた内容から,記憶の種類を探る①

 前回から1か月以上過ぎてしまいました.(^^;)

 さて今回は,「児童の書いた内容から,記憶の種類を探る」というテーマでお話ししたいと思います.まずは,記憶の種類です.

f:id:jygnp274:20210115044423p:plain

  多くの論文等に引用されているのがこちらの図です.もちろん,これは原図のデザインを守りながら日本語用に言語を書き換えたものです.

 手続き的記憶とは,自転車の乗り方や店での買い物の仕方などのように,言語による思考を介さずに,対象の動作が再現される記憶を指します.自転車に乗るとき,「ハンドルを持って,次にサドルに腰かけて・・・」などと考えないし,「お店に入ったら買い物かごを手に取り,商品を入れ,レジ前に並び・・・」などを考えていたら買い物はできませんよね.それぞれの動作を繰り返し,自然と行うようになったとき,その手続きの記憶が意識せずに自然と使われているのです.

 しかし,この場合の手続き的記憶ですが,初めは宣言的記憶だったことに気づきませんか.小さい頃,親から「ハンドルを持って,サドルに乗って,片方の足はペダルにかけて・・・・」と教えられませんでしたか?

 宣言的記憶とは,言語によって記述できる,事実についての記憶を指します.別名,陳述記憶ともいいます.鉄棒の逆上がりやボールの正しい蹴り方を教えてもらうときなど,教えてもらった宣言的記憶を何度も思い出して,できるようになった人も多いと思います.

 手続き的記憶が,全て宣言的記憶を介して形成されるかと言えばそうではなく,上手くいった経験のイメージから形成される場合もあります.

 宣言的記憶は,エピソード記憶意味記憶に分けられます.エピソード記憶とは,個人的経験に基づく記憶であり,時間的・空間的文脈の中に位置づけられる記憶です.これは.個人的な関わりのなかで形成されます.これに対して,意味記憶とは,一般的な知識として形成される記憶のことです.そうすると先程の「ハンドルを持って・・」は意味記憶と解釈できます.教える人が,自転車の乗り方を誰かに指南するときに使っていた概念化した知識です.

 このようなことから,学習の結果としての児童の表現物から分かるものはエピソード記憶意味記憶です.

 次回は,児童の実際の表現物を見ていきたいと思います.今回もお読みいただきありがとうございました.

 

 

「お寺の」という言語のすごさ

 再び言語の話.

 成層火山のイメージは「富士山の形」という言葉で全員が正しい絵を描くことができました.やはり日本人の誰もが,富士山の形についての概念は持っているようです.でも,児童一人一人がどこでそれを獲得したかは不明です.少なくとも,小学校の教科指導の中で富士山の形を指導したことはありません.たぶん家庭,それもテレビの映像で獲得した可能性があります.

f:id:jygnp274:20201203070229p:plain

児童が描いた富士山の絵

 次に鐘状火山のイメージを描かせる番です.しかし,「しょうじょうかざん」と発話しても児童は,意味が分かりません.また,仮に漢字で板書したとしても,「鐘」の字は中学校で習う漢字なので意味を推測することはできません.そこで鐘状火山の形を「つりがねの形」と発話してみました.

f:id:jygnp274:20201203012612p:plain

釣鐘

 これで完璧のはずでした.しかし,児童たちは釣鐘の形を描くことができませんでした.つまり,児童たちは「釣鐘」という言語の概念を持っていなかったのです.今の時代,児童が「釣鐘」という言語を獲得する場面は,ほとんどありません.もしあるとしたら,学校教育の指導内容に盛り込まれているか,家庭生活で親から教えてもらう位しかありません.

 あとはICTに頼り釣鐘の写真を提示するのみかと考えていましたが,もう一つ,佐伯胖先生の小人理論を実践してみる価値がありそうです.つまり,自身の小人をお寺に派遣してその小人に釣鐘を見てもらうのです.

 そこで「お寺の」という言語を追加し,「お寺の釣鐘を描きなさい.」と発話してみました.すると,ほとんどの児童がこのような絵を描くことができたのです.

f:id:jygnp274:20201204132653p:plain

児童が描いた釣鐘の絵

 「お寺の」という言語を聞いて自身の小人をお寺に派遣し,記憶の中の映像からお寺に関係するものを引き出し,「つりがね」の「つり(吊り)」と「かね(鐘)」に合致する映像を見て,それが釣鐘ではないかと考えたのです.ところが,別の小学校で同じような質問をしましたが,この学校の児童は同じ問題を解決できませんでした.

 それはなぜかと言えば,最初の小学校の近くにはお寺があり,児童は学校からスケッチをしに行ったり,夏はお寺の花火大会を楽しんだりしていたからです.ところが,別の学校の近くにはお寺はありませんでした.経験の差が出たのです.

 

このブログの元となる論文はこちらです. 

researchmap.jp

 

正しい概念を想起させる言葉

 「たてじょうかざん」という発話によって,児童は縦に長い火山を想起しました.実際は,何もイメージできなかった児童もいました.つまり「たて」の意味を解決できなかったのでしょう.しかし,これらの児童の困惑は理解できます.小学生を相手に授業をする場合は,このようなことが常に起こります.児童の言語概念は,中学生以上の生徒に比べてかなり貧弱であるために,指導は最も難しいのです.

 「たてじょうかざん」を「縦状火山」と解した児童たちは,この2つが紐づいた状態です.しかし,盾状火山は,盾を伏せた形で,裾野が広がったあまり高くない山です.さて,このような誤概念をどのように修正したらよいでしょうか.

  f:id:jygnp274:20201129074651p:plain

 方法はいくらかあるようです.最も早く解決させるには,電子黒板に盾状火山の写真を提示し,「これが盾状火山です.」と発話するのです.

f:id:jygnp274:20201130032817j:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AF%E7%8A%B6%E7%81%AB%E5%B1%B1

 しかし,これでは「たてじょうかざん」の意味の解決ができません.したがって,「たて」は「盾」であることを伝えるべきです.そのとき,児童の記憶に「盾」があるかどうかを探ってみることも必要でしょう.比喩は,記憶の想起に有効です.一種の手がかり再生です.実際の授業では,「たては,ギリシャの兵士が持っていた攻撃を防ぐものです.」などのように発話しました.同時に手で盾を持つ格好をして,児童の想起を助けました.すると,「あ~あ」「分かった!」などの声が聞かれ,児童は記憶にしまっておいた盾のイメージを呼び起こし,「たて」という言語と盾のイメージを結びつけることに成功したのでした.

 ジェスチャー理論によれば,ジェスチャーによる非言語と音声による言語は同じ神経システムに依存していることから,発話と同時のジェスチャーは効果的と言えます.

f:id:jygnp274:20201130154209p:plain

 

言葉によって異なる概念

 ずいぶん前の話ですが,ある小学校で理科の授業をしていた時のことです.指導内容から少し外れていたのですが,たてじょう火山,せいそう火山,しょうじょう火山の大まかな形を児童にイメージさせることが目的でした.

f:id:jygnp274:20201127004659j:plain

「たてじょうかざん」と発話した場合,「かざん」は「火山」と認知します.それ程,火山という言語は児童にとってすぐに認知できる言語です.次に児童は,「たてじょう」という言語に注目します.ここで児童は,「じょう」については,「状」という漢字が想起され児童の表現で言えば「~みたいな」と意味を類推します.問題は「たて」です.みなさんは,どのような漢字をあてはめますか.このときの児童もきっと困惑したと思います.一番多かったのが「縦」です.つまり縦に高い山のイメージを描いたのでした.

f:id:jygnp274:20201127012929p:plain

 これは,そのときに1人の児童が描いた楯状火山の絵です.児童の思考に大人の常識は通用しません.この後,絵など描かずにどのようにして正しい概念に導いたのでしょうか.

 

 

伝わらない言葉 小学生の言語理解

 博士課程の話が完結して1か月以上が経ちました.この間,別にサボっていた訳ではなく,小学校の理科専科教員としての通常業務や大学の先生との共同研究,それに修士論文を書かれている先生の指導などがあってこのブログを書く時間がなかったのです.

 ところで,みなさんは,自分の話が相手に伝わらないという経験はありますか.当然ながら日本語を話せない外国の人に対してはそうですが,ずっと以前に,小学校で担任をしていた4年生の児童から,「先生の話す言葉が分からない」とダメ出しをもらいました.それは,「すなわち」という言葉です.

f:id:jygnp274:20201124110506j:plain

 小学校に正式採用される前に,高校で物理を教えていた癖が出たのです.この経験は結構引きずって,修士課程受験の原動力になりました.

 ある時,児童の言語理解が気になって,「とける」という言語についてどのように理解しているかを調査しました.その結果,5年生の約8割の児童が「とける」を「融解」として理解し,残り2割の児童は「溶解」として理解していました.授業では「溶解」を取り扱うので困ってしまった経験があります.

 このように小学校で授業をする場合,大きな壁は児童の言語理解能力の問題です.ですから,小学校の先生方は,自分が発話する言語に十分に気を付けながら授業を行っているのです.時々,大学の先生が講演活動の一環として模範授業をされる場合がありますが,先生の発する言語が伝わらず模範授業にならないことがあります.これも小学生の言語理解の実態を知らないことが原因です.

 

 

放送大学博士後期課程と学位取得20

2018年3月24日(土) 放送大学 学位記授与式

いよいよその日がやってきた.

2015年4月1日に博士後期課程に入学して3年で学位記授与式にたどり着いた.

思えば,管理職への道を嫌って2009年4月1日に修士課程に入学し,2年間で修士の学位を取得し,その後,放送大学博士課程が開設されるまで4年の間ひたすら待った甲斐があった.

f:id:jygnp274:20201002164634p:plain

放送大学 大学の窓より

総代(受領代表)

口頭試問で合格が決まった後に,主研究指導の先生から,「学位記授与式では,あなたが博士課程の総代なので,欠席しないように.」と言われていた.

すぐに思ったことは,NHKホールのステージに立てるということであった.たぶん,一生かけてもできなかったことが,向こうからやって来た感があった.

当日学位を受ける博士後期課程の学生は8名であったが,そのうち4名は一期生ストレート組で2017年9月に学位を取得していた.その人たちも含めて,今回の学位記授与式では,博士後期課程の8名と紹介された.だから僕を含めた4名は,一期生の半期遅れと二期生であった.二期生ストレート組は,僕ともう一人だったと思う.

f:id:jygnp274:20201002164744p:plain

放送大学 大学の窓より

 

NHKホールの壇上から見た風景は,今も鮮明に覚えている.学位記を頂いた後,振り返って満員の客席を見た.大学を卒業・修了される多くの方々の視線が客席全体から迫ってくる.放送大学にはこんなにも多くの方々が,学んでおられたのかと実感した.それも自分よりも年配の方々がとても多かったことに感動した.

放送大学を卒業・修了された全ての方々,おめでとうございます.そして,まだまだ学びましょう.

僕が,「放送大学博士後期課程と学位取得」を書き始めて20回目で一応の区切りである.これまでお読みいただいた方に感謝です.

次からは,いよいよ記憶再生の研究について,これまで学会等で発表した論文の中身について分かりやすく書いていこうと思います.